「四月一日君が誘ってくれる時ってあたし、用事がある時多いよね」(ひまわり)

 うーん、ひまわりちゃん伏線が気になる。

 ひまわりちゃん伏線の謎で引っ張りながらも、本編は今までのXXXHOLiCの中でも一番深くて重い話だったと思います。
●蜘蛛の恨みの話

 この四月一日が右目を失う、今巻だけでは完結しないXXXHOLiC最長編のエピソードは、スゲー深い要素が絡まっててテーマを一言で言うのが難しいんですが、敢えて言ってみると、今までずっと描いてきた対価の思想に関して、「対価を定めるのは主観的な要素が強い」という部分を描いているんだと思います。

 絶対真理を司る裁判所みたいなのがあって、絶えず対価を客観的に調整して判定を下してくれて皆がそれに納得できるんだったら世の中は簡単なんだけど、ある価値or負荷に関してどの程度の対価を要求するかは、当事者の主観によって様々であると。だから、蜘蛛の巣を払うという負荷に対して、百目鬼ら人間の主観からは何気ないことでも、当事者である蜘蛛の主観からすると相手の片目を奪うほどに対価を要求する憎しみを燃やすに十分な出来事であったと。

 これが、その後の四月一日と百目鬼のすれ違いでも描かれていると思うんですよ。四月一日の主観では、対価は自分が引き受けるべきと自分の右目を差し出してしまうんですが、百目鬼の主観ではそんなことをされては迷惑で(というか侑子さん曰く傷ついて)……という感じで、どの程度の対価を自分に課すかに、人それぞれの主観で違いがあると。

●動く写真の話

 そこで一見関係ないこのエピソードが挿入されてるんじゃないかと。警察は事故だと言ったとか、ある程度客観的に下された対価にすがろうとこのネガティブ要員の女性はするんだけど、侑子さんに看過されたように自分の主観では怖くてたまらないと。そして挙げ句の果てには本当は知っている自分が犯した罪の重さに主観も押しつぶされて、「何でもしますから!」なんて感じで対価を無覚悟に設定してしまうという。それを願うゆえに失うモノの重さも受け止めず、本当の覚悟もなく、自分への誠意もない、ツバサの小狼くんを通して描いたポジティブな願いのシーンとは真逆の、ネガティブな願いのシーン。1巻にあった、

 「命を奪うなんて、そんなリスクの高いこと、しないわ。どんな理由があろうともヒトがヒトを殺せばその殺した分だけの重さを背負うことになる」(侑子)

 「重さ?」(四月一日)

 「そう重いわよ、潰れちゃうくらいね」(侑子)

 のやりとりをエピソードにして描いていました。

 自分の主観で勝手に設定していた対価よりも、ヒトの命を奪う対価は潰れちゃうくらいに重い。それなのに「何でもしますから!」なんて何の覚悟もなく言っちゃうと、こういう末路になるという。結構、連載中に読んだ時は怖さを感じたショートエピソードでした。

 「それを決めるのは、当事者(ホンニン)よ」(侑子)

 という侑子さんの台詞がホンニンがどう決めるか(本人の主観でどう決めるか)という意味で、蜘蛛がどう決めたか、四月一日がどう決めたか、百目鬼がどう決めたか、と、今巻のエピソードに繋がっていってるんだと思います。

●侑子さんのお店が必要ない百目鬼くん

 そして、動く写真の話のネガティブ要員の女性と対照的に、建設的に行動する、「願い」に関してのポジティブ要員として百目鬼くんが描かれます。

 「他人(ひと)に無理だと言われても、諦めないで自分で出来ることを模索する。だから、百目鬼君はうちの店に入る必要がないのよ」(侑子)

 侑子さんの口からこれだけ肯定されるキャラもめずらしいです。百目鬼、カッコいい!

●そしてひまわりちゃん伏線で引き

 ひまわりちゃんの本に意味深な反応を見せる侑子さんで引き。片目を失った四月一日のエピソードはひまわりちゃん伏線を絡めてまだ続くようです。ひまわりちゃんが何かしら不浄の属性なのは今までの伏線が示してると思うんですが、ストレートに不浄のあやかしってワケじゃなさそうなんですよね(ストレートにそうなら、四月一日に取り憑き、百目鬼が苦手なハズ)。謎です。謎の牽引力で引っ張られてます。早く続きが読みたい。

XXXHOLiC 7 (7)


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