またまた再読感想です。バレンタインゲームで走り回る祐巳と由乃に、ラストのびっくりチョコレートオチと、めちゃめちゃコメディな話という印象が残ってたんですが、再読してみると、これまた前巻「ロサ・カニーナ」と同じく主軸として祐巳−祥子さまの関係にまつわる話ががっつりと機微機微しながら描かれていたのに気づきます。
 とりあえず、祥子さまとすれ違いが生じてボロボロになる祐巳……なんてシーンがあったのに驚きました。素で忘れていました。コメディコメディじゃないじゃん。結構シリアスノリじゃん。

 で、祐巳がボロボロと言えば……というタイミングで救い主としてばっちり聖さまが降臨していたのが印象的でした。シリーズを通して一番印象的なのは、やっぱり「レイニーブルー」でボロボロになった祐巳の前に、「パラソルをさして」序盤で聖さまが現れるシーンでしょうが、その一番のシーンヨロシクに、前々から、祐巳がボロボロになる時には聖がひょろりと現れて少しだけ祐巳を立ち直らせていくというのがパターンとしてあるんですね。こういう人欲しいです。聖さま素敵過ぎ。かつて自分がボロボロになった時に先代白薔薇さまに救われた経験がある聖さまだからこそ、このポジションが温かいです。

 今巻での聖さまが祐巳の前に降臨した際の祥子さま評が面白いです。

 「自分の中の多くを語って、それを否定されるのが怖いタイプ。柏木のことだって、依然うやむやにしたままでしょ。あの子はね、自分がそうしていい場所をわきまえて威張っているの。この人の前だから自分を出しても大丈夫、って。結局、自分に自信がないんだね」(聖@祥子さまを評して)

 この辺りから、やっぱり未だ未成熟で、乗り越えるべき課題が残ってるキャラなんですよね、祥子さま。既刊最新刊の「薔薇のミルフィーユ」においても、祐巳の方にももちろん、それ以上に祥子さまにもまだ乗り越えるべき何かがあるという雰囲気、暗示が入ってます。で、その課題の昇華を祥子さま卒業前にやらなくちゃいけないので、やっぱり祥子さま卒業までにもう一山紅薔薇姉妹に大きなエピソードがあるんじゃないかという感じですね。主人公祐巳を含む姉妹話なので作中最クライマックスの話になる可能性が高いので、今から楽しみです。もう何年、祐巳だ祥子さまだと言ってるんでしょうかね、僕は。

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 「私は志摩子のこと知りすぎているから。だから、荒療治ができない」(聖)

 これを受けての「チェリーブロッサム」での志摩子さんへの荒療治が慣行されるワケですね、雑誌発表で書かれたのはチェリーブロッサムの方が早いんですが、何気ない伏線張りにニヤリとさせられます。聖と志摩子さんの関係はもう少し見ていたかったです。卒業後はもっぱら祐巳絡みのゲストキャラとしてしか聖さま現れないんで、たまには志摩子さんとの絡みも見たいですね。志摩子さんは乃梨子に出会えたことで、ある種聖さまから自立したって流れなんでイイんですが、まあファンサービス的に。

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