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マリア様がみてる好きさん に参加中!

 最後は小説部門をお送りします。企画概要はこちら

 去年は小説あんまり読まなかったなー。一昨年は刺激的な作品ばっかり選んでたんですが、今回はかなりライトライトしたものばかり選んでます。




第5位
沖原朋美『勿忘草の咲く頃に』


 「あなたはそう考えてきたから、ここまで来ることができたの?」


 世界観描写っていうのかな?現代劇なんでファンタジーのように作者オリジナルの世界観が炸裂してるワケではないんですが、現代の普通の「町」ながらも、どこか主人公の少女の心情も絡めながら「町」の情景描写が立体的に描かれてる部分が好きです。そんな風に描かれてる「町」が後半でキーになってくる辺りが中々という感じ。
 ストーリーは王道といいますか、少女が少年と出会って、ちょっとお互いに色々抱えてるモノを交流を通して浄化しあっていく話です。かなりピュアです。ちょっと純な気分に立ち返りたい方にお勧めかな。

勿忘草の咲く頃に




第4位
小池雪『青空のように君は笑う〜僕らが起こしたちょっとした奇跡〜』


 「……みんなはそれで大人らしく、乾杯の一つでもして旅立てるのかもしれないけど、わたしは、何一つ実現してないから。このままじゃ終われないっつーの」


 青春コメディ小説。もうね、仲間で必死になってパンダの着ぐるみを売りさばいたりといったバカな話なんですが、超好き。バカでコメディな日常の中にも恋愛アリーの将来への悩みアリーので、青春青春してる部分に妙にノスタルジーを感じてしまったりする辺りも好き。
 あとは主人公の岡町環ちゃんが中々強力で素敵。物語序盤からコケる、というかちょっと落ちパートに入るんですが、そこから上記の台詞でバイタルに復活してくる所が燃えです。そこからは環ちゃんの行動力が引っ張っていく青春エンターテイメントが繰り広げられます。魅力的な娘です。
 作者の小池雪さんという方、去年のコバルト6月号に載った「はつ恋アパート」という短編も結構好きだったりで、コメディ調の青春モノがすごく面白いと思ってるんですが、是非、同ベクトルのヤツで新作出してくれないかなぁ。

青空のように君は笑う―僕らが起こしたちょっとした奇跡




第3位
米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』


 「小市民にとって一番大切なのは……私有財産の保全ってことにしたら?」


   「小鳩君と小山内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す」……と、紹介文のここまでを読んで既に小市民を目指すという目的や、微妙な二人の関係とか面白そうだなーと思うワケですが、内容は探偵モノ+青春モノちょっぴりという感じです。小市民を目指しつつも中々周囲の状況がそうさせてくれない小鳩君と小山内さんが、日常の謎に挑みます。
 この日常の謎解きパートがかなり面白かったです。友人はどうやってココアを入れたのか?とか、些細な謎ばっかりなんですが、それを解き明かす過程が中々にミステリミステリしててナイス。ミステリ好きと青春モノ好きの両方にプッシュしたい朗らかな作品。

春期限定いちごタルト事件




第2位
機本伸司『神様のパズル』


 「その前に、一つ教えて欲しい」穂瑞は、相理さんをはじめとする、作れない派の顔をじっと見つめた。「我々がここにこうしているのだから、ここに最低、一つの宇宙はある。誰が作ったか知らないが、恐ろしく頭のいい奴だろう。意外とクールな奴かもしれない」


 「宇宙とは人間に作れるものなのか?」

 この究極の難問を解くには、宇宙の原理を、神のパズルを解かなければならない。挑むのは不登校の天才美少女と留年寸前の落ちこぼれ学生の「僕」。対話を重ねながら神のパズルに立ち向かう二人が最後に辿り着いた答えとは?

 といった感じで、まだアカデミックテイストを引きずってた初読当時の僕の心を鷲づかみにした一作。なんか学問テイストの激しい作品なのかなと思いきや、最後に二人が辿り着く帰結の部分はひたすら温かいという作品です。似たようなテイストの作品を発表してるようなので、機本伸司さんも他の作品を是非読んでみたい作家さんの一人です。ちょっと少年少女の心持ちにシンクロして宇宙に挑んでみようかという方は是非。

神様のパズル




第1位
今野緒雪『マリア様がみてる 妹オーディション』


 「えっ、まだ火星なの?」
 祐巳が聞きかえすと、可南子ちゃんは真顔でうなずいた。
 「ええ。祐巳さまの片方と一緒です。私、マリア様の星だと思っています」


 去年の僕的ベストはこれしかない。一年間支えてくれたマリア様がみてるシリーズを代表して、『妹(スール)オーディション』に。「マリア様の星」は本当に感動した一編。お互い表面的なイメージを抱く所から人間関係が始まって、徐々にその人の本来の部分が見えてくる、そういったプロセスを得て等身大の二人での関係が発展していく……そういった人間関係の機微が描かれてるのがマリみてですが、「マリア様の星」が感動的なのは最初に抱いてしまった表面的なイメージの部分も否定はしないよと優しく語りかけている所。そっちの方のあなたも火星で、マリア様の星で生きている。その時、その時で抱いた心を否定はしない。作中の可南子の言葉で言うならばそれは切ないことだから。ひたすら優しくて、今年もっとも温められた1シーンでした。

マリア様がみてる ―妹(スール)オーディション


 と、最後の小説部門でした。コバルト文庫多っ。とにかく刺激的なのとか難解なのとかよりも、温かくて生活の潤滑剤になるような小説が読みたかった1年でした。その意味でマリみては文句なくベスト。ずーっと、発売されて読んでは3、4ヶ月先の新刊発売を心待ちにし、待ちきれず再読を始めてしまうような作品でした。緒雪先生にはひたすらありがとうと言いたいです。

 こんな感じで企画、2005年ランゲージダイアリー的ベストは終了です。今年も色んなビジネス書や小説や漫画や映像作品や音楽を楽しんでいきたいと思ってます。それではまた来年。