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 堂々完結
 未消化要素にありったけ決着をつけたお腹イッパイの最最最終話でした。和月先生は『るろうに剣心』でも細かいサブキャラにまで丁寧に着地を描いたように(宗次郎とか描き切れなかったのもあると単行本コメントで仰ってはいますが)、状況さえ許せば丁寧に一つ一つの要素に結末を描いていく漫画家のようであります。
 以下、ピリオド以前に未消化だった要素箇条書き……
1.未登場の武装錬金&その特性
2.パピヨンの人食い衝動が収まってる伏線は何なのか
3.ヴィクトリアに笑顔は戻るのか
4.カズキ−剛太の関係の着地
5.カズキ−ヴィクターの関係の着地
6.カズキ−斗貴子さんの関係の着地(および斗貴子さん物語のフィナーレ)
7.カズキ−パピヨンの関係の着地

 それにしても、よくある、愛する者に先立たれた者の、「失意」→「気持ちの昇華」の心の変遷を描く話……を斗貴子さんとパピヨンを通して描いてエンディング、つまりはカズキは悲哀のヒーローだったというエンディングと思わせておいて、後半に凄まじい力で逆転させて大ハッピーエンドを爆発させたのはもう、バカなくらい爽快でしたな。

 以下、項目別感想ー。

1.未登場の武装錬金&その特性

 千歳→レーダーの武装錬金「ヘルメスドライブ」:対象への走査及び瞬間移動
 毒島→ガスマスクの武装錬金「エアリアル=オペレーター」:気体の操作?
 ヴィクター→「フェイタルアトラクション」→重力操作

 と、ギリギリ全部登場。このくらいの未消化要素は投げてもいいじゃんとも思うんですが、綺麗に単行本でピックアップされるようなキャラの武装錬金とその特性は全部登場させました。レーダーとか潜水艦とかナパームとか巨大ロボとか、どんどんビックになっていく武装錬金の中で、大ボスポジションなのにめっちゃシンプルに戦斧で戦ってたヴィクターにモエかな。

2.パピヨンの人食い衝動が収まってる伏線は何なのか

 人食い衝動の源泉は人間への未練ゆえ、ゆえに人間や人間の社会・世界に未練の無いパピヨンは衝動が収まってるとヴィクトリアから説明。カズキに自分の本当の名前を認識し続けていてもらいたいという蝶野のカズキへのこだわりは蝶野に残ってる最後の人間との関係への未練とも取れるんですが、それもピリオドでの決着でなくなって、人間でもホムンクルスでもない新たな命、「パピヨン」として生きていくことになるという帰結への布石と考えればいいのかな。

3.ヴィクトリアに笑顔は戻るのか

 錬金の負の部分を受けて笑顔を失ったヴィクトリアの物語は、錬金の正の部分を担うカズキによって笑顔が取り戻されるまでの物語だと踏んでたんですが、予想通り、笑顔じゃないけど、カズキが救ったヴィクターの胸に顔を埋めて涙を流すというシーンが描かれました。ヴィクトリア物語も完結。感慨深い。

4.カズキ−剛太の関係の着地

 「本当に良かったですね、斗貴子先輩――…」

 斗貴子さんに笑顔が戻るなら。

 ぬぐった涙は斗貴子さんに笑顔が戻った嬉しさと、それをやりとげた相手が自分ではないという失恋の涙。それでも斗貴子さんを泣かせない限りはカズキともずっと戦友。最初はカズキと対立しながらも、斗貴子さん主義という重なる一点で相互理解を進めてきた二人の、らしい着地でした。剛太、考えが飛んでるキャラが多い武装錬金の中で、単純に自分が好きになった人のために生きるという、分かりやすいキャラで共感できるキャラでした。好きだったよ、剛太。

5.カズキ−ヴィクターの関係の着地

 単行本コメントより、和月先生曰くカズキとヴィクターには対比があるということだったんですが、その対比は同じヴィクター化という同じ境遇にあって、絶望にしがみついたか希望を手放さなかったか。最後は希望の勝利。怨恨の呪詛を吐いてたヴィクターと綺麗事を貫こうとしてたカズキ。最後までキレイ言を言ってヴィクターに手を差し伸べますが、その想いが届きます。罵られ、傷つきながらも掲げてきた信念、生き方が最後に大きく周囲を巻き込んで作用していくという展開は好きです。大ボスの心をも変えます。頑張った、カズキ。

6.カズキ−斗貴子さんの関係の着地(および斗貴子さん物語のフィナーレ)

 見開き巻頭カラーでウェディングシチェーションまで描いての大大結ばれエンド。
 斗貴子さん物語はホムンクルス・即・斬でトゲトゲしてた斗貴子さんが、カズキに影響されて徐々に柔和になっていくというような物語で、その着地は桜花に止血のために核鉄を提供する場面で大体決着してたんですが、今回カズキを失ってまた元の殺気だった斗貴子さんにちょっと戻ってる所から始まってるんですよね。そこから、カズキとの再会を経ての、

 ――キミが死ぬ時が私が死ぬ時――
 ――いや…キミと一緒に生きていく――


 へ。死ぬときは一緒という強い言葉から、一緒に生きていくという前を向いた言葉へと変遷しきったことで、斗貴子さんの変化を追った武装錬金の物語も終幕という感じです。殺気だった斗貴子さんも魅力的でしたが、剛太じゃないけど笑顔の斗貴子さんへと着地して良かった。『武装錬金』という作品を引っ張った魅力全開のヒロインだったと思います。

7.カズキ−パピヨンの関係の着地

 「蝶野、オマエの名前と正体はオレがずっと覚えている、だから新しい名前と命で、新しい世界に生きてくれ」

 2巻の一瞬の勝負をリフレインさせる形で、同じ墨絵調の絵でもう一度一瞬の勝負を絵で描いてくれたのは満足。実際の勝負はカットされるくらいの覚悟はしてましたよ。良かった良かった。
 決着後のカズキと蝶野の会話は殿堂入り。再び偽善者と罵るもその気持ちは以前とは変わっている蝶野と、それでもイイと、3巻の「もしキミが自分を偽善と疑うならば」に対する答えを見つけた形での返答を返すカズキ。偽善、綺麗事と、ともすれば罵られがちな想いを最後まで貫き続けたからこそカズキが好きだった。
 最後は、蝶野、パピヨンとして新たな道を歩み始めるという、ちょっとギャグチックな味付けをしながらも清々しいエンド。人間でもホムンクルスでもない存在としてのヴィクターがあって、こっちはネガティブだったんですが、それに対して人間でもホムンクルスでもない新しいパピヨンというのはそれに対比させてポジティブな感じ。決着ついて良かった。しかも直接対決があった分『るろうに剣心』の剣心と斉藤よりも明確な感じ。こっちも『武装錬金』という作品を引っ張った魅力全開のライバルキャラでした。

 ◇

 ファイナルシーンは日常への帰還。夢を追って日常を離れていくONE PIECEタイプの夢追い型物語じゃなくて、日常を守るために戦う日常守り型の物語として始まった『武装錬金』。カズキのヴィクター化を期にカズキと斗貴子さんは日常から非日常の世界へと旅だってしまうんですが、最後は日常の象徴であるまひろ&R.O.Dトリオのもとに帰還。日常守り型の物語だったこそ、守り抜いた日常へと帰還していくファイナルシーンは完結感がありました。これにて、『武装錬金』本当に完結。3年近くにわたって楽しませて貰った作品でした。僕的に後々まで思い出に残る漫画作品になると思います。和月先生ありがとうございましたー。

○情報/武装錬金ドラマCD化&最終巻に特別読切掲載

 特別読切は純粋に楽しみ。誰のどういう話をやるんだろうか。ドラマCDはカズキ役福山潤さん、斗貴子さん役柚木涼香さん、蝶野役真殿光昭さんとのこと。ドラマCD化はジャンプのメディアミックスの第一段階という印象が強いです。最近では『BLACK CAT』みたいに連載終了してからアニメ化した例もあるんで、もしかしたら『武装錬金』もそこまでいくかもよ?いくとしても深夜枠の雰囲気バリバリなんで見られない宮城地域在住としては積極的に応援するのでもないですが。武装錬金の絵をしっかり作れたらバトルアクション映えしそうな作品ではありますよね。

エクセレントモデル 「武装錬金」 津村斗貴子

ドラマCDシリーズ「武装錬金」

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