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 というワケで『涼宮ハルヒ』シリーズ2冊目を読了。オフィシャルでは『涼宮ハルヒの溜息』の方が2巻扱いですが、話の時系列順的にも、雑誌掲載時期的にもこの『退屈』の方が『溜息』よりも先ということで、こっちから読んでしまいました。4編からなる短編集。ネタバレ感想につき、アニメ版でタイムリーに楽しんでる方はご注意を。
●涼宮ハルヒの退屈

 草野球エピソード。

 アニメ版の感想にも書いたけど、学生時代に仲間で集まってワイワイとスポーツをした頃を思い出してノスタルジー的に楽しくなれる一編。僕も学生時代に仲間内で集まってソフトボール大会に出たのを思い出したよ。全然ダメな朝比奈さんに、割合スペックが高い鶴屋さんとか、野球の能力値も十人十色な辺り、ああ、部活とかじゃなくて普通の遊び仲間内で集まったチームってこんな感じなんだよなぁと思い出してまたノスタルジー。オチは勿論高スペックなんだけど坦々とこなしてた長門さんがハルヒの不機嫌化に伴う閉鎖空間の発生を期に、古泉からのオファーで呪文を使い出して逆転という、まさに「微妙に非日常系学園ストーリー」な感じの幕引き。

 ラストのキョンの次の試合は辞退しましょうという提言をハルヒが受け入れるシーンが秀逸かなぁ。ハルヒ→キョンの微妙な感情と、ハルヒは非日常を求めてるというよりも、ただ楽しく遊びたいだけ……というハルヒの心情面の本質とが、上手くブレンドされて表現されてた場面。これも1巻ほど顕著じゃないけど、非日常に行きかけた所で日常も十分面白いやと戻ってくる話ですよね。野球で連戦連勝で甲子園!とかいう非日常よりも、キョンの(ここがハルヒ的に重要)おごりでファミレスで打ち上げ!と日常で楽しむのもイイや!という。このハルヒの内部での、「非日常を求めるエキセントリックな気持ち」と「でもどこかでそんな非日常はあるわけないと思ってるという常識的な気持ち&日常でも楽しくやっていけるかも?という気持ち」との相克(大げさに言えば)を軸に置いて作ってる話が今まで読んだ所だと多いです。

●笹の葉ラプソディ

 タイムトラベルもの。これ、後書きで作者も書いてますが、大人朝比奈さんの知ってることが明かされないまま終わる辺りといい、今後の大きい話の伏線エピソード1みたいな意味合いも持ってる話なんですよね。これは作者が大変そう。この短編内では明かされた設定の範囲内で整合性を保ってますが、連作で書いていく大きい話にした時にラストにちゃんとストンと整合した!繋がった!となれるのかどうか。そんなにSF読んでるわけではないんですが、その辺りでタイムトラベルものできっちりオオッというサプライズ付で整合性も保って完了してる傑作として僕なんかは岩本隆雄『鵺姫真話』をあげるんですが、『鵺姫真話』のように1作で完結する作品でもタイムトラベルものは練りに練って制作労力が半端なくかかってそうなのに、人気シリーズゆえにタイムリーに作品を発表し続けねばならない涼宮ハルヒシリーズで大きい話のタイムトラベルものを連作でやって大丈夫なのか谷川先生!などといらぬ心配を。

 本編は長門さん最強!とか、相対的にそんなに凄くない朝比奈さんが可愛い!とか、七夕憂鬱のハルヒがちょっと切ないとか……、要素要素で楽しく読めました。七夕の話なせいか、ちょっと風流さも感じられる話だよね。

●ミステリックサイン

 長門さん最強(笑)。最後は長門の本意は明かされないように締められてますが、キョンが想像するように長門も皆と活動してみたかったと解釈するのがイイ感じですよね。一つ前の「笹の葉ラプソディ」でキョン達と出会う前の長門と出会う後の長門では表情も微細に変わってきてることが描写されてますし、何より「憂鬱」のクライマックスでの「また図書館に」がありますからね。長門視点でもキョン達と過ごすの悪くないと思いはじめてるということじゃないかと。

 ちょっとだけVSカマドウマでバトルシーンもあったのが面白かったですね。光弾を投げつける古泉とか。すごいバトルアクション映えしそうな技なのにあえてあっさりと(笑)。「憂鬱」での長門VS朝倉に代表されるような、バトル要素にもちょっと期待。本当なんでもアリの娯楽小説です。

●孤島症候群

 大部分を使って描かれる合宿の青春パートがひたすら楽しい一編でした。野球同様学生時代に僕も部活の合宿とかやって楽しかったなぁというのを思い出しながら読んでました。

 ミステリパートは、最終的に何故か探偵役になってるキョンが推理であげた根拠よりも、草野球話での古泉の「それにしても今回のことで解りましたが、涼宮さんをあまりヒマにさせておいてはダメのようですね。今後の課題として、検討の余地があります」の台詞とかがヒントになってる感じかなぁ。ハルヒが望んだから事件が起こった……というある意味ハルヒ犯人説が一応ミスリードなんだけど、普通にここまで読んでれば上で書いたようにハルヒは根本的には常識人というのが読者は分かってるので、その説は棄却。あとは野球の時の台詞と、序盤から怪しさ全開の古泉で、古泉が何かしかけてる事件なのだろう……という所までは簡単に推理できました。自演劇という形でトータルで誰かの掌中の中だったというのは、ミステリじゃなくても(ミステリでも勿論ありますが)ファンタジーでの実は全て師匠による修行の一貫だった!パターンとも似てる感じで、今ではワリと王道パターンの一つとして確立されてる感じです。

 ◇

 というわけで短編集も面白かったです。続いて『涼宮ハルヒの溜息』に行きます!

→刊行順に列挙


涼宮ハルヒの憂鬱
涼宮ハルヒの溜息
涼宮ハルヒの退屈
涼宮ハルヒの消失
涼宮ハルヒの暴走
涼宮ハルヒの動揺
涼宮ハルヒの陰謀
涼宮ハルヒの憤慨

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→次巻:『涼宮ハルヒの溜息』の感想へ
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