いい最終回でした。堪能いたしました。まず間違いなく今年度のアニメ部門のマイ・ベスト作品になると思われます。
以下、それぞれのキャラごとの語り↓
●長門さん
「わたしという個体もあなたには戻ってきて欲しいと感じている」(長門さん)
無機的にハルヒを観察するためにSOS団にいたはずの長門さんだったのに、最後にこんなこと言うんですよ。これが感動せずにいられるか、いや、いられない。キョンとの図書館の想い出も含め、長門さんも任務とか抜きでSOS団の風景が大事なものだと感じ始めていたと明かされる瞬間。長門さんラヴ。
●朝比奈さん
「白雪姫って知ってます?」(大人朝比奈さん)
もう一つの謎のメッセージ、「私と仲良くしないで」からは、実は幼朝比奈さんは今後キョンに好意を寄せはじめ、そして別れの時が来たことが暗示されます。そして、とても大事なものを見つめるような郷愁の表情でSOS団の文芸部室を見回したあの第04話(時系列上)の大人朝比奈さん。このメッセージを伝えれば、キョンがハルヒにキスをすることも知っていた。自分とは別れ、キョンはハルヒと時間を紡いでいくことになることも知っていた。それでも、SOS団で過ごしたあの時間を無かったことにはしたくなかった。だから「白雪姫」のメッセージを伝えにきた。朝比奈さんもSOS団の風景を守りたかった。この大人朝比奈さんの使い方に関しては完全にアニメ版が原作の上を行ったところだと思います。時系列シャッフルで視聴者も既にその後の楽しいSOS団の風景を知ってるだけに、同じく未来から来てそんな風景を知って大事に思ってる朝比奈さんと視聴者がシンクロして第04話(時系列上)は見れる、そして謎のメッセージの真意は一番綺麗なパズルの一ピースが最後にハマるが如くのタイミングで最終回で視聴者に明かされるという。完璧。朝比奈さんラヴ。
●古泉
「僕としましては、あなたや涼宮さんともう少し付き合ってみたかったので惜しむ気分でもあります」(古泉)
長門さん、朝比奈さんと同じく、長口上で真意をボカして語る古泉も、この気持ちだけは本心だった。このシーンは「SOS団での活動は楽しかったですよ」と明言する原作版の方が好きかもしれない。ともかく古泉も本当はハルヒラヴ、キョンラヴだったのは確か。古泉ラヴ。
●そしてキョン
SOS団の皆の想いを受けて、キョンも語るクライマックス。
「俺は戻りたい こんな状態に置かれて発見したよ。俺はなんだかんだ言いながら今までの暮らしがけっこう好きだったんだな。アホの谷口や国木田も、古泉や長門や朝比奈さんのことも。消えちまった朝倉をそこに含めてもいい 俺は連中ともう一度会いたい。まだ話すことがいっぱい残ってる気がするんだ」(キョン)
朝倉にも言及してるあたりがポイント。長門さんをはじめとするSOS団メンバーの非日常要素も受け入れた上で、それでもキョンが戻りたいと望んだのは、ハルヒが創出する非日常的新世界ではなく、あの「魔法以上のユカイが限りなく降りそそぐ」が如きSOS団の非日常的日常。
しかしハルヒには伝わらない。ギリギリでハルヒはキョンの手を振り払います(キョンとハルヒの繋ぐ手の意味合いは、「ライブ ア ライブ」のラストシーンでの手繋ぎと同じと思われます。原作の「ライブ ア ライブ」ではその点に関してキョン視点からの語りが入るので、もっと良く知りたい方は是非)。
まだ、ハルヒの憂鬱は晴れていないから。まだ、キョンは本当の気持ちをハルヒに伝えていないから。
そして、とうとうキョンが口にするファイナルクライマックス、
「いやスマン、これも誤魔化しだな、俺にとってハルヒはただのクラスメイトじゃない!」(キョン)
タイトル、「涼宮ハルヒの憂鬱」の源泉、自分が特別な存在でないという絶望。前回の、
「あんたさ、自分がこの地球でどれほどちっぽけな存在か自覚したことある?」
「それまで私は自分がどこか特別な人間のように思ってた」(涼宮ハルヒ)
に対する回答です。
俺にとってお前は特別だ!
「白雪姫」、「Sleeping beauty」。
最後のキスシーンのハルヒ側の心情はOP「冒険でしょでしょ?」によく歌われてると思います。
「なんでだろ あなたを選んだ私です」なキョンとなら、あるいは憂鬱だと思ってた普通・日常も、「普通でも普通じゃなくて」になるのかもしれない。
かくしてSOS団の非日常的日常に帰還してくる二人。見慣れた、だけどモノクロではなく彩りに包まれたいつもの世界。フィナーレ。
やっぱり、この最後の帰還劇の所だけは普通にイイ話だよなぁ。非日常的新世界へのチケットを棒に振ってでも、帰ってきたい場所と、そこに一緒にいたい人がいるのって、ステキだよなぁ。
◇
というわけで最終回。本当に素晴らしいアニメでした。見ていてこっちまで「魔法以上のユカイ」な気持ちになってくるという元気供給アニメでした。あとは、「ミステリックサイン」で七夕がどうこうとキョンが言ってるのに、七夕の最重要エピソードの「笹のはラプソディ」は今回アニメ化されてない、自主制作映画はアイテムとして出てくるし第01話で本編は公開してるのに、その制作エピソードの「溜息」がアニメ化されてないんで、アニメだけでは第01話の映画の内容の意味がよく分からないなど、アニメ版のみだと視聴者的に欠けてるピースがある点だけが惜しまれる点なので、是非ともそれらのピースを補完する第二期の制作に期待したいと思います。全ての制作スタッフの皆さん、ものスゴイ作品を本当にありがとうございました。
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良い最終回でしたね。僕も今年のベストかなぁと思いました。
多分ものすごく力を入れて、スタッフの人は閉鎖空間でのハルヒの笑顔を描いているんだと思うんですが――実際、いい笑顔だとも思うんですが――それよりも最後のしかめっ面の方が良い感じに見えてしまうのが不思議です(いえ、まあわかっているんですが)。
あいばさんも引用されたキョンの台詞は本当に良い。言うようになったなぁ、キョン! その台詞のために、今までのエピソードがあったんだなって感じで良いなぁ。
日常と非日常、どちらを選ぶかと問われれば、僕は間違いなく日常を選びます。日常的に色々な事件が起こっていたら、物語を楽しめなくなりますから(物語が楽しすぎてもダメだと思いますが)。