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10巻に及んだひまわりちゃん伏線がついに回収の第10巻。読み込むのには『ツバサ』17巻が必須です。分かりやすいギミックのリンクだけでなく、テーマを顕在化させるためのシンクロ演出が両作品をまたいで行われております。
最後のページの侑子さんの語り、
「貴方が色んなもの達と関わって変わったように、ひまわりちゃんも変わったの、これからも変わっていける。自分自身で強くそう信じて…、そして一緒にそれを信じてくれる人がいれば」(侑子さん)
に集約されていると思うんですが、『ツバサ』&『XXXHOLiC』の両作品を交差させて描かれているテーマは、
1.貴方(自分)を大事だと思ってくてる人(存在肯定してくれる人)の貴さ
2.そんな人と関係性を結べることの尊さと強さ、人と人との縁の尊さと強さ
3.そういった関係性の中で「変わっていける」ことの尊さと強さ(可能性の賛歌)
だと思います。
まずは1の「大事だと思ってくれる人の貴さ」と2の「人と人との縁の尊さ(出逢いの尊さ)」の部分で、今回四月一日が、
「でも、(侑子さんと)逢えて良かったと思うよ」(四月一日)
「小羽ちゃんにも会えて良かったよ」(四月一日)
「おれ、ひまわりちゃんと会えて本当に幸せだよ」(四月一日)
と、3回も同種の台詞を口にして、人との縁の大切さを噛みしめながら、小羽ちゃんに、あるいはひまわりちゃんに存在肯定を与えます。
そして、そんな四月一日に対して、ひまわりちゃんの方から返される存在肯定。
「ありがと、あたしも、会えて幸せだよ」(九軒ひまわり)
まさに『XXXHOLiC』が序盤から描いてきた対価の原理。四月一日が会えて幸せだ、キミが大事だと言ってくれたから、ひまわりちゃんの方も四月一日に会えて幸せだ、四月一日が大事だと返す。関係性を紡ぐのは1=1。
そして、このラストの四月一日とひまわりちゃんのシーンの感動度を増幅させてるのは、四月一日−ひまわりちゃんの関係が、『ツバサ』17巻でのファイ−サクラの関係とシンクロさせて描かれている点でしょう。
幾多の困難があろうとも「あなたが大事だ」ということを伝える場面が、『ツバサ』17巻のサクラがファイに贈った、
「…それでも…生きていてくれて…よかった…」(サクラ)
の言葉と、ひまわりちゃんが四月一日に贈った同種の言葉、
「…四月一日くんが死なないで、良かった」(ひまわり)
をシンクロさせることで、作品をまたいで、それくらいに人が人を大事に想う心というのは、それくらい深く結ばれた人と人との関係性というものは尊いというのをあぶり出しています。
そして、この1と2のテーマから、やがて3のそこから生まれてくる「変化」の強さへ。そんな大事な人と関係性を結んでいく中で、人は変わっていくことができる。その「変化」は無限の可能性を秘めている。『ツバサ』ではサクラ達は飛王がコントロールする「運命」のようなものの支配下にいますし、『XXXHOLiC』でも所々で四月一日が何か過酷な運命に巻き込まれていくことが暗示されていますが、そういった「運命」めいた予定調和を打ち破れるほどに、関係性から生まれた「変化」は強い。それが、近刊で明らかになった『ツバサ』&『XXXHOLiC』のテーマだと思います。きたるべき運命に向けて、それに対抗する「関係性紡ぎ」のようなものをやっている。それが侑子さんというキャラなのだと思います。
この「変化」の部分では、今回四月一日が「成長」というプラスの変化を見せた部分が最後の侑子さんとの会話の中で描かれます。すなわち、この前過度に自己犠牲をしいて負の状態に陥ってしまった百目鬼のために片目の対価を支払ったエピソードを受けて、四月一日が過度の自己犠牲は相手を幸せにしないこともあるということを学び取っており、今回はひまわりちゃんに対して過度の自己犠牲は行わずに、「自分にできることをやる」と、建設的な意志をみせるにとどまるという成長を見せております。
で、実はここも四月一日=ファイで作品クロスオーバーのシンクロ演出がなされてる部分。自己犠牲を賭してサクラを助けに行こうとするファイに本当の小狼が「サクラを助けに行ってファイが傷つけば、サクラはもっと傷つく」という趣旨の言葉を贈っている場面が、四月一日が「ひまわりちゃんのために対価を払って何かしても、ひまわりちゃんは傷つく」という発言をしてる場面と趣旨が同じで、先にあげた場面の他にも四月一日=ファイでシンクロ演出が行われてる部分です。提示されてるのは「過度の自己犠牲による他者救済」への疑問符。気づきを得てその辺りが理解できるようになった四月一日に対して、まだ「死にたがり」が尾を引いてるファイは真・小狼から忠言を受ける……という形です。
……と、まあ長々と語ってきてしまいましたが、そういった背景を十全に感じながら読んでたので、クライマックスの四月一日がひまわりちゃんを包み込むように、ひまわりちゃんを肯定する辺りは涙腺がヤバかった。他人を不幸にする特質ゆえに自己の重要感が得られず仮初めの笑顔で笑ってきたひまわりちゃんにかけられる、素朴な存在肯定の言葉。その後のシフォンケーキの会話のあたりとかヤバかった。10巻分の伏線のタメを十分に昇華してくれた感動的な場面でした。四月一日も、ひまわりちゃんも、百目鬼も、大好きだ。
◇
◇今巻のピコポイント
●水
前半で四月一日が汲んでた水は『ツバサ』の方で使われる水ですね。作品リンクギミックの一貫です。
●たまご
で、水の対価として四月一日がもらったたまごも、『ツバサ』側の作中で手に入るのが描かれるモノです。やっぱり、そちらも読まなきゃです。
●四月一日を助けるために対価を払った3人
ひまわりちゃんと百目鬼とそしてなんと本当の小狼くん。侑子さん曰く、四月一日と本当の小狼くんは「縁が深い」と、新たな伏線が提示されました。大川さんが既に後半のクライマックスでは『ツバサ』と『XXXHOLiC』が大きくリンクすることを明らかにしているので、そういった後半のリンククライマックスへ向けての仕込みと取れます。どう関わってくるのか楽しみ。
●小羽ちゃん
まだ、上で語ってきたような存在肯定が今巻の段階では十全に与えられず、それに伴う「変化」もまだ見られていないキャラ。なので、小羽ちゃんに存在肯定が本格的に与えられて、小羽ちゃんが力強くプラスの「変化」を歩み出す小羽ちゃん救済エピソードは今後入るものと思われます。カタルシスありそうです。楽しみ。
◇
超満足の1冊でした。最後に四月一日父母の言葉を引用して、
「でも、きっと会える。貴方を待っていてくれる、貴方の未来が途切れないように、貴方を見て、貴方と話して、貴方と一緒にいてくれる人達が」
そんな人達、百目鬼に、ひまわりちゃんに、侑子さんに四月一日は会えたから、ファイも黒鋼に、サクラに、小狼に、モコナに会えたから、だからまだ変わってゆける。そんな、作品をクロスオーバーしてのテーマ提示がひたすら熱かった今巻でした。
◇濃密にリンクする『ツバサ』第17巻の感想も合わせてお楽しみ下さいm(_ _)m

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