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 「…それでも…生きていてくれて…よかった…」(サクラ)

 スーパークライマックス
 「本当の覚悟」「対価の原理」「命」「関係性」「変化の可能性」。こういったキーワードが頭に浮かぶ丁寧に追っていた読者としては涙ものの「東京編」クライマックスの第17巻です。
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 僕の感想では、ずーっと、物語冒頭で失われたサクラの昔の記憶、関係性ではなく、サクラは旅を通して培った新たな記憶、関係性に生きる、そういう帰結を迎えることで「関係性は新たに紡ぐことができる」というのを『ツバサ』では必ず描くに違いないと言ってきましたが、今巻はまさにそんな、「今までの旅を通して新たに培われた関係性」に焦点が当たって、その再構築が描かれたお話でした。

 まずは、サクラが東京を守るために羽根を受け入れることを拒否するんですが、このシーンにて、明確にサクラの中で玖楼国での昔の記憶・関係性よりも、旅の中で新たに培った記憶と関係性の方が優先される/大事であることが示されました。

 小狼くんや仲間達と旅した新たな記憶・関係性>玖楼国時代の記憶・関係性

 もう、玖楼国時代のサクラの記憶を取り戻すのが目的では無いのです。東京編で餌の小狼を失ったサクラの新たなる一番の願いは、餌の小狼の心を取り戻すこと。明確な、作中の主人公達の目的の転換です。こういう風に物語冒頭では絶対的に提示されていた目的が、物語を経た後に獲得したそれを上回る大事な目的によって上書きされるのは熱いです。

 モコナが語ります。

 「苦しい事も辛いこともあったけど、でもすごく楽しそうだったでしょ?」(モコナ)

 圧倒的な、今までの4人+1匹で歩んできた旅の物語の肯定。作中の回帰点は、もはや玖楼国での楽しかったサクラと小狼の日々ではなく、新たな関係性を紡ぐことができた、東京編以前の辛くても楽しい旅の風景なのです。

 そんな、それほどに大事だと分かった旅を通して培ってきた新たな関係性が、この東京編では一旦崩壊してしまうのが切ない。本当の小狼はサクラと新たな関係性を紡いだ小狼とは違うから、もうサクラと小狼は旅の途中で過ごした風景には戻れない。ファイは黒鋼が餌になることで生かされてしまったから、もうファイと黒鋼もこれまでの旅の途中の風景には戻れない。

 それでも、それだからこそ、ラストのサクラの言葉が救われる思いでした。昔「アシュラ王が連れ出してくれた時の言葉」に起因してるらしい、これまでも示唆されてたファイの過度に他者を不幸にしたくないという姿勢、そしてそこからくる、たびたび黒鋼に指摘されてた「死にたがり」の姿勢、今回これまでの旅の関係性が一旦崩壊したことで、(ピッフル国編での黒鋼とファイのシーンに顕著なように/また、今巻で侑子さんも指摘してるように)これまでイイ方向に変わってきてたファイの姿勢が再び負の方向に転じてしまうんですが、それをギリギリの所でサクラの言葉が救いあげるのが熱かった。

 「…それでも…生きていてくれて…よかった…」(サクラ)

 間違いなく、これまでの旅を通して紡がれたサクラとファイの関係性があったからこそ出た言葉です。作中是となったあの辛くても楽しかった旅の日々はもう戻らなくても、そこで培われた関係性が崩壊しかかっても、まだ、生きているし、生きている想いがある。願いがある。

 「死にたがり」だったファイの、旅を通しての変遷を描いていた、僕がファイ物語と呼んでいた物語の、第一幕の帰結です。死にたがりだったファイにも、生きていてくれて良かったと言ってくれるサクラの存在ができた。それが、ファイ物語の帰結にして、また、これまでの旅が無駄じゃなかったという微かな救い。

 こうして生かされたあの辛くても楽しかった旅で培われた関係性を頼りに、今度はサクラが新たな「願い」を胸に新たに再始動します。物語冒頭の小狼の「サクラの心を取り戻す」という「願い」が示された時にかかってきたのは、『XXXHOLiC』で描かれてた侑子さんの、

 「今の世界を失っても 居心地のいい場所を捨てても、求めるものを追う 失うものの重さも辛さ分かってて、それでも欲する そのために生きる そういうのが本当の覚悟」(侑子さん)

 の言葉でした。そして、侑子さんに「本当の覚悟」があるようだと選定される小狼。

 そして、今巻、サクラは、あの日小狼が口にしたような「願い」、今度はサクラが小狼の心を取り戻したいという「願い」を、こんな言葉を前置いて語ります。

 「…私はこれからも、誰か…を傷つけて何かを奪う…自分勝手な理由で…きっとその報い…を受ける。わたしが…そうしたように…でも…それでも……取り戻したいの。貴方の無くした心を…小狼君…」(サクラ)

 物語冒頭にかかった侑子さんの「本当の覚悟」に関する述懐にかかります。リフレイン演出。あの日、「本当の覚悟」で持って小狼がサクラの心を取り戻すと「願っ」てくれたから、今度はサクラが、「本当の覚悟」を持って小狼の心を取り戻すと「願い」ます。まさに、「願い」をテーマにしたCLAMP作品のスーパークライマックスです。

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 もはや、これまでの羽根を求めて異世界を旅する冒険ファンタジーのテイストから、明確な転換を果たした『ツバサ RESERVoir CHRoNiCLE』。あまりに面白いので、マガジンでのタイムリー読者に切りかわりました。今巻の続き部分の感想は、コミックス派でない方は「ツバサ」マガジン掲載分本編タイムリー感想にてお楽しみ下さい。次巻部分では、サブタイ「RESERVoir CHRoNiCLE」の意味も明確に提示されます。いやー、おもわずマガジン掲載分が待ちきれないほど、近刊部分は面白いし感動したよ。

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 それと、テーマを際だたせるための『ツバサ』と『XXXHOLiC』をまたいだシンクロ演出などに関しては、同時発売の『XXXHOLiC』10巻の感想の方で書いたので、そちらの方もファンの方はかかさずチェック下さい。もう、ちゃんと追っていくためには両作品のダブルチェックは必須になってきましたね。↓

◇濃密にリンクする『XXXHOLiC』10巻の感想も合わせてお読み下さいm(_ _)m

 いやー、ストレートに感動できた。続きが楽しみだ。

ツバサ 17―RESERVoir CHRoNiCLE (17)

ツバサ―Reservoir chronicle (17)

ツバサCARACTere GuiDE 2―公式ガイドブック (2)


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