「魔人探偵脳噛ネウロ」タイムリージャンプ掲載分、第132話「愚【ばか】」のネタバレ感想です。今回の等々力さんと石垣さんの対照を主軸にしたエピソードは、「多様性の容認」という方向で作品全体の落としどころが垣間見えた重要エピソードだったと思います。
「まぁ…世の中色んなヤツがいるんだよ」(笹塚衛士)
から始まる笹塚さんの語りの通り、このエピソードの落としどころとしては、優秀な等々力さんも、バカでダメな石垣さんも、存在としては両方いてOK。色んな人がいて「多様」だからイイ。
この辺りは、今話でも笹塚さんと笛吹警視という違うモノ同士も合わさるからイイみたいなのが挿入されてますが、最近で一番顕著だったエピソードは、親の七光り犯人を笹塚さんと吾代でぶっ飛ばした、笹塚&吾代の反目→共闘エピソードの時。そのエピソードの時、ネウロが人間はそれぞれ得手不得手があって、それぞれに役割がある、その役割にハマッた時にそれぞれ真価を発揮するんだという趣旨の、人間の「多様性」を是とする趣旨の語りを語っています。
で、この人間の「多様性」の是に真っ向から反対する思想が、シックスの新しい血族のみで地球上を覆ってしまおうという思想。優秀な等々力さんに、ダメな石垣さんも両方いて、色んな人が沢山いていいんだという最近提示されてる作中の是の思想に対して、超優秀な少数の種族だけの支配が是という極度の「純化」思想が、そのカウンターのシックスらの思想(今話の新しい血族の面々登場の部分の絵は、そうして見ると、心持ち面々が多様ではなく、画一的なカラー/雰囲気で統一されて描かれているような印象を受けます)。
「多様性」VS「純化」
これが、今後一つのこのネウロという作品の構図になりそうです。
そして、この「多様性」と「純化」の対立の構図は、集団の中での「多様性」VS「純化」のみならず、作品としては、一人の人物の内面の中にまで、この「多様性」VS「純化」の構図がテーマとして組み込まれて描かれていることが、最近のお話からは分かってきました。
前者の一人の人物の中に「多様性」を持っているキャラクターの代表が、何にでもなれてしまうがゆえにアイデンティティをロストして永遠の自分探しをしていたサイというキャラ。だけど、このサイに関しては、この前のサイVSネウロの決戦エピソードの中で、弥子の口から、その多様なあり方全てを包み込んだあなたが、多様であったそれまでのあなたの過程すべてがサイなんじゃないの?という趣旨の言葉がサイにかけられ、内面の多様性を丸々肯定する姿勢が作中の是として暗示されています。
一方で、一人の内面の全ての「多様性」を排して、悪意というただ一つの感情に内面を「純化」させて進化してきたのが、サイのカウンターとなるシックスという存在。やはり、このように一人の内面の中でも、「多様性」VS「純化」の構図がネウロという作品の中では描かれているみたいです。
この辺りは、集団的な方では多様性の容認は最近の一大思想潮流ですし、一個人の内面の方に関しても、「アイデンティティの確立」や「本当の自分探し」なんて一昔前の思想であって、本来は個の中の多様性、多面性を踏まえて「個人」というものは考えなければならないという新しいアイデンティティ論が、最近では哲学の中に出てきています。脳科学なんかをはじめ、わりと最近の学術的分野の研究のお話がネウロには盛り込まれてるなと前々から個人的には感じていたんですが、この「多様性」とか「純化」、アイデンティティに関しても、作者の松井先生は結構最新のものにアンテナを張っていて作品に盛り込んでいるんじゃないのかなんて想像します。ネウロの一大テーマである「進化」に関しても、それこそ作中で語られた「純化」の進化である定向進化以外にも、「多様性」を容認しながらの進化論も最近では存在するというのをゆるやかに聞いたことがありますし。
とりあえず、作中では今の所「純化」よりは「多様性」の方を是の要素として推してる感じなんですが、個人的にもそれでイイかなという感じ。悪意という超絶強固なアイデンティティがあるシックスはそれはそれで精神が安定してるのかもしれませんが、色んな側面を内部に持ってるのがやはり人間自然なんで、それを無理くり一つに統一するのは苦痛が伴う気がします。そう思うと、長きに渡って作品内で描かれてきた、サイの本当の自分探しの苦悩という物語は、本来多様であるはずの自分の中から無理やり一つの自分を見つけ出そうという幻想を追った者の苦悩がイイ感じに現れていたと思います。だからこそ、サイに多様なままのあなた全部があなたなんじゃん?と弥子が言ってあげる場面は思い出すだけでグっと来る。アイデンティティ探しの末に心が浄化されるというテンプレートのお話は一昔前の文学から沢山あるけど、あのシーンは内面の「多様性」をそのまままるごとアイデンティティとして容認するという、新しい時代の浄化法を見せてくれた場面だったんじゃないかと思います。
魔人探偵脳噛ネウロ 13 (13) (ジャンプコミックス)
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それが受け付けられないほど嫌悪を誘う描写であれば、シックスは悪ボスとして成立します。
また、自分もこうありたい、という背徳的嗜好を僅かでも、本当にチラリとでも読者に湧き上がらせてくれれば、シックスは魅力あるダークヒーローとして完成します。
後者の方を無責任に期待したいですね。願わくばDIO様以上のものを。
現実の方も、あと10年のうちには「もう多様化しなくてもいいじゃん」と飽きてくる連中が出るのだろうし。
そういう輩が新しく見出す価値感は、やはり純化なのかなあ。揺るがない真理とか、普遍の原則とか、その辺の高尚そうなノリを狙って。