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 「言った筈だ おまえの過去は関係ねぇとな」(黒鋼)

 『ツバサ』第21巻の感想記事です。全体としては収録話に関してマガジン掲載時に書いた感想の再掲記事になっています。コミックス派の方は、これを機会にこの記事で一気読みなどして頂けたらと。
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 以下、本編感想。やっぱりこのセレス国編で描かれたのは「自己犠牲」の棄却。XXXHOLiCの方で理詰めで解説されていた通り、いくら対価の原理が絶対でも、自分の生命までをも犠牲にしての「願い」は肯定されないと、そんな感じ。

●ツバサ/感想/Chapitre.159「魔術師の嘘」

 ファイは飛王の一手だったということが明かされ、逆に侑子さんの一手でもあった黒鋼とバトルか?という引き。

 要するに飛王はサクラのお供に写身小狼の他にファイと黒鋼を当初から考えていて、ファイのもとにも黒鋼のもとにも惨劇を起こさせたと。で、ファイの方は本当のファイの甦生をちらつかせて懐柔に成功したんだけど、黒鋼の方は懐柔する前に侑子さんの一手が効いて、黒鋼は知世(日本国の)の元に預けられたと。

 ファイ=コントロール下に置くことに成功
 黒鋼=コントロール下に置くことに失敗

 というわけですね(ファイは自分が飛王の支配下なのを知っていた、一方で黒鋼はChapitre.133で知世姫に仕えたのは自分の意志だと言っている)。この辺りは黒鋼にも両親の甦生をちらつかせる計画だったのかもなぁ。だけど、その前に侑子さんの一手によって、知世姫という両親に代わる心の拠り所を黒鋼は見つけてしまっていたという。

 そんな感じでファイは飛王の一手として飛王のコントロール下にあることを知りながら仲間に嘘をついて過ごしていたことが明らかになったわけですが、ファイ自身侑子さんにChapitre.133で「仕組まれた事とそうでない事、あなたはもう分かっているでしょう」と言われていて、既に本当のファイが死ぬに至った悪魔の選択は飛王に仕組まれた部分であることを知っている点、また今週の「XXXHOLiC」でサクラが「優しい嘘」ごとファイさんを信じていると、今話のサブタイの「魔術師の嘘」をまるごと飲み込んで是とするようなことを言っている点……などから、このままファイが墜ちていくという展開は無いものと思われます。ツバサの基本テイストは仕組まれた運命(のようなもの)を新たに築きあげた関係性のパワーで上書きしていくというものですが、ようやく、ファイにも仕組まれた運命を上書きするための物語が訪れたんだよ。

 あとは真・小狼くんがずっと目を押さえてうずくまってるのは、アシュラ王の魔力にあてられて……とかじゃなくて、現在「XXXHOLiC」の方で四月一日くんがピンチになってるから。四月一日くんのために真・小狼くんが対価を払っているという伏線がありますが、今週の「XXXHOLiC」ではピンチの四月一日くんに、真・小狼くんが「きえるな」と呼びかけるシーンが描かれています。どうやら、サクラと小狼の誕生日が四月一日というのをキーに、四月一日くんと真・小狼くんは存在として繋がっていて、四月一日くんが消えると真・小狼くんも消える的な感じの設定があるみたい。一端セレス国編では真・小狼くんは使えない状態にしておいて(バトルではインフィニティ編で大活躍だったし)、「XXXHOLiC」の方で小羽ちゃん絡みの四月一日くんの課題がクリアされると同時に復活、逆転のキーマンに……みたいな構成でしょうか。ますます「XXXHOLiC」からも目が離せなくなったなぁ(最近は二話に一度くらい、「XXXHOLiC」の方に夢の世界に渡ったサクラが出てくる)。

●ツバサ/感想/Chapitre.160「遠い日の約束」

 飛王のコントロール下にあることを知りながら旅立つわけだから、旅の仲間と無標の関係性を紡げるはずがない。そう思っていたからこそサクラ、写身小狼、黒鋼らとどこか距離を取っていたファイというのが明らかになるに連れて、だからこそそういった縛りが覆されるほどに仲間との関係性に目覚め始めていってしまったファイという「東京編」以前の物語が泣けるなぁ。

 「桜都国編」での、

 「……本当に良い娘だねサクラちゃん。他に構ってる暇なんてない筈のオレが幸せを願ってしまうくらい」(ファイ)

 とか今思うとだいぶ切ない。

 いや、今パラパラと読み返してたんだけど、「桜都国編」はファイの過去を知ってから読むとヤバい。織葉の歌を聴いてる時の、

 「俺はずっと待ってたからなぁ、連れてってくれる誰かを」(ファイ)

 の台詞とか、今読むとこういう意味だったのか!と納得できる。

 今回ようやく魔力制御の入れ墨の謎が、自分より大きい魔力を持つ者を殺すという呪いの予防策として、せめてこれ以上魔力が巨大にならないようにと縛りをかけていたということが明かされたわけですが、そうなるとその入れ墨を侑子さんに渡した後の、入れ墨無しでは魔法は使わないというファイの縛りはある種過去のトラウマからくる重い縛りだったわけですよ。その縛りを解いてしまうほど大事になってしまった仲間のためにレコルト国編で魔法を使用した時のファイの気持ちとか、これも相当切ない。

 そしてサブタイの「遠い日の約束」として、アシュラ王の願いはセレス国に仇なす者をファイが殺してくれることというのが明らかになり、その文脈で今邪魔な黒鋼を殺さなきゃという流れに入りかけるんですが、それを黒鋼が最後のコマで茶番と一蹴。これは黒鋼は何を看破してるんだろうな。確かに、本当にアシュラ王に従う形でファイがセレス国へ来たのなら、セレス国編冒頭で黒鋼の手に蒼氷を宿して黒鋼をパワーアップさせるような真似する必要がないし、アシュラ王も本物のファイの甦生というファイの目的を知っていながら、

 「人は死ぬよ、いづれは」

 なんて、ファイには矛盾を突きつける形で、かつ作中的には是となるようなこと言ってるしとで、よく分からない要素は多いです。何にせよ、なんでファイがアシュラ王を一旦封印して、次元を渡って逃げ続けなきゃならない流れになったのかという、一番コアな部分の過去編が明らかにされてからですね。なかなか、ファイの過去編も長いな。面白いけど。

●ツバサ/感想/Chapitre.161「笑顔と魔法」

 黒鋼VSファイのバトルシチェーション。これは、WJの『ONE PIECE』なんかでもあったルフィとゾロのバトルエピソードと同じ感じで、ファンは一度は見てみたいシチェーションとして面白かったです。最初の二人の衝突で砕かれたガラスみたいな鏡みたいなのの破片の中に、ファイの過去が映されながら散りばめられている演出が相当カッコよかった。

 「東京編」以前まで、ファイはいつも笑っているけどファイの笑顔は作り物というのが一つの謎になっていたわけですが、このファイの笑顔の源泉は、今回のアシュラ王に治癒魔法の代わりの笑顔だと笑顔を肯定されたエピソードにあるみたい。誰からも肯定されなかったヴァレリア国時代のトラウマがあるからこの時笑顔を肯定されたのが心に残って、とても笑えない状況になっていても旅の途中は笑っていたとか、そんな感じでしょうか。

 そんなファイの過去編、突如としてアシュラ王がヤンデレ化。これは単純にアシュラ王が実は黒かった!っていうだけなのか、そうではなくてセレス国でだけ発動するファイの呪いの伏線とか、ヴァレリア国時代も何故だかファイとユゥイのせいで王さまがおかしくなってしまったという設定みたいなのが関わっているのか、今の時点ではよく分からない感じ。どうでもいいけどヤンデレ流行りすぎ。

 そして、真・小狼くんが苦しみながら「はやく」と言ってるのは、「XXXHOLiC」の方の四月一日くんに語りかけてるっぽいんだけど、今週のヤンマガは「XXXHOLiC」お休みだったので今ひとつ意味が分からず、次号のヤンマガに期待です。扉絵の四月一日&真・小狼の絵に運命はこの二人に託された云々のコピーはわりと普通にその通りで、「XXXHOLiC」で語られてる近付いているという「最後の瞬間」に関係しているという四月一日くん。そして、その四月一日くんを対価を払ってでも生かし、今はシンクロして苦しんでいるという何やら深い縁があるような真・小狼くん。この二人が現在のダブル主人公で重要というのはその通りっぽい。「最後の瞬間」には百目鬼が何かするって「XXXHOLiC」の方で侑子さん言ってるんだよなぁ。結局、現在ピンチに陥ってる四月一日くん、ファイ、真・小狼くん辺りを、これまで紡いできた関係性による所による仲間が救うとか、そんな展開だといいんですけど。

●ツバサ/感想/Chapitre.162「綻びた過去」

 アシュラ王が見せてたファイの過去編自体が、操作されてた綻びがある過去ということで、エー!という感じです。ここでこれまでの過去編をそう裏返しちゃうと、一体どこからどこまで本当だったのかとか、読者としては放り出された気分に。黒鋼に矛盾点を指摘されて諭されるまでファイ自身も操作された過去を本当と思っていたようなので、ファイの主観がアテにならないことを意味しています。これだと一番コアな部分のファイとユゥイを天秤にかけた命の選択のシーンなんかも実はねつ造された過去でしたというのもアリになってしまうので、視点キャラの主観の方に齟齬があるトリックは近年流行ってるのか氾濫してるけど、この主観のここまでが本当でここは間違いとかが送り手でいくらでもコントロールできるようになるので、あんまりやられると読者としては感動していいのか悪いのか戸惑うというのはあるよなぁ。ミステリ作品だったら推理要素からどこまでの主観が間違ってるのか推理できたりもするけど、ツバサはミステリ作品じゃないから、その辺り、送り手まかせにならざるを得ない感じはします。

 というわけで黒鋼が指摘した「茶番」は、魔力制御の入れ墨に関する矛盾。そう言われればその通りなんですけど、2話前のシーンでは魔力の強さと呪いの強さみたいなのは連動していて、魔力を制御していれば呪いの発動もなくなったり弱まったりと制御できるのかと勝手に補完してスルーしてたよ(;´Д`)。

 アシュラ王は本当分からないな。もはやアシュラ王の願いが「セレス国にあだ成すものを討って貰うこと」だったのかどうかさえ真偽は分からないんですが、仮に真だったとしたら自分があだ成すものになることで、(アシュラ王の魔力ゲージがファイを超えるのをきっかけに)ファイに討たれることを望んでいたということだろうか?それを、アシュラ王への愛情からファイが回避して、例のアシュラ王を眠りにつかせての逃亡の旅になったと。でも、それでも、アシュラ王死にたいなら勝手に死ねばいいというのはあるよな(;´Д`)

 ただアシュラ王、作中の要素として否の方向に転がりそうな雰囲気としては、ねつ造した他人(ファイ)の過去を黒鋼や真・小狼に強制的に見せてるって点かな。作中で是となるのは、レコルト国編での写身小狼くんが黒鋼の過去を見てしまって、過去はその人だけのものなのにと悔いて涙するシーンの方だと思うから、あのシーンとは真逆に過去を強制的に暴露してるアシュラ王は否のベクトルに既にだいぶ振れてるんじゃないかというのはあります。そもそも東京編以前に描いてきた、失われた過去(クロウ国時代の写身小狼とサクラの関係性)よりも新たな関係性(旅で培われた仲間達の絆)は尊いというのがツバサ的な是なので、人のトラウマ的過去を掘り起こして痛めつけてるアシュラ王は感心しない感じ。その点では、今話で黒鋼がファイにおまえの過去は関係ないと言っただろと言い切ってたのは熱かった。やっぱり、頼りになるのは黒鋼ですよ。

●ツバサ/感想/Chapitre.163「果たせぬ約束」

 アシュラ王を眠らせてファイが逃亡の旅に出た謎は、やはりアシュラ王を殺せなかったファイが、アシュラ王を眠らせて旅に出たというのが真相の模様。まだだいぶ謎だらけですが、アシュラ王の目的が表面通り、いつか自分が暴走するのを知っていてその対策として自分を殺させるようにファイを連れてきたというのなら、それなりに筋は通りますね。魔力制御の入れ墨の矛盾の部分も、それをファイに誤謬させてた部分も、ファイの方の魔力が制御されて、アシュラ王の魔力がファイを超えることで呪い発動→ファイが暴走した自分を殺してくれる……まで考えていたのだと解釈すると、一応の筋は通ります。

 しかし、結局アシュラ王が暴走する運びになっても、ファイにとってはトラウマの過去の中からただ一人優しくしてくれた人だから、ファイとしては殺せずに眠りに付かせて逃亡の旅に……。よって、ファイとしてはアシュラ王と敵対する意志は基本的に無いはずなんだけど、アシュラ王がサクラの体にトドメを打とうとした所で、その気持ちが裏返ってアシュラ王にファイが反逆する所がものすごい熱かった。その瞬間だけは、サクラ>アシュラ王というファイジャッジ。もう、優しくしてくれたのはアシュラ王だけだった過去のファイではないから。生きていて良かったと言ってくれたサクラの存在が今はあるから、それゆえの反逆。物語冒頭時点の「関係性」が旅を通して本当の絆としての「関係性」に変わっていく、「東京編」で一度は転覆したけれど、それ以後もやっぱりそうして形成された「関係性」は生きている……という最近のツバサテイストが十全だったと思います。アシュラ王しか拠り所がなかったファイが、サクラや仲間と「関係性」を結ぶことができた……そのためにはアシュラ王にも反逆し得るようになった……という変化こそがツバサで描かれている「変化」の是だよなぁ。前回黒鋼がファイに向かって「お前の過去は関係ないだろ」と言っていたのにも通じる部分です。尊いのは、ファイの過去ではなくて、旅を通して形成された新たな「関係性」。このテイストこそがツバサ。

 しかし、ラストは黒鋼が撃ち抜かれる衝撃コマで引き。「東京編」以降パーティーが黒鋼に頼りっきりだったので、何かしらの黒鋼がピンチに陥るフラグがたまってた気がしてたんですが、ここにて発動。黒鋼ー。頑張ってくれー。

●ツバサ/感想/Chapitre.164「優しさと弱さ」

 前から書いてた通り、チュニャンのエピソードや、修羅ノ国編での阿修羅王と夜叉王のエピソードの時に顕著なように、本当の覚悟でもって対価を払えばどんな願いでも叶うという世界観の中でも、ただ一つ、生命の甦生だけは叶えることができないというのがツバサテイストで、逆に言えばその設定でもって、写身小狼パパが言っていたという作中最大のメッセージ、「だから限りある時間を、自分が信じるもののために精一杯生きるように」を目一杯表現しているわけです。

 で、そのテイストからいくと、幼少時の選択の結果を受け入れずに、ファイ(塔の上にいた方)の甦生を願っていたファイはどうしても作中としてはまだ否定される段階にいたわけです。だからこそ、今回のクライマックス見開きでの宣言、

 「……終わらせましょう王、貴方の願いを、そして俺の願いも」(ファイ)

 の部分が熱かった。自分を束縛し続けてきた、自分の選択で殺してしまったファイの甦生という禁忌の願いを「終わらせましょう」と言い切ってるのが熱い。ファイがここでそういう気持ちになれる背景には、アシュラ王が指摘してるように、仲間達の存在、旅の途中で築き上げてしまったサクラ、小狼、黒鋼、モコナらとの関係性が間違いなくあるわけで。

 でもそこで、仲間のためにアシュラ王と共に死ににいっちゃうのが(アシュラ王が語ってる通り、道連れにするつもりで仕掛けた魔法だったと思われる)、まだファイが「死にたがり」から脱出できてない部分を描写してる所なんだよなぁ。17巻ラストでサクラに「生きていてくれてよかった」と言ってもらえて、「四つの対価」の回では、過酷は一人で背負うものではない、同じ願いを共有する者達と分け合ってもいいんだということを示されて、徐々に死にたがりが直る要素は積み上がってきてるのに、それでもまだここ一番という所で死にたがりを発揮して死にに行ってしまう。

 ……という所で黒鋼が復活してファイを守るという展開が最高に熱かった。もう、守護印とか、後出し設定もいい所だとかそういう突っ込みはもはやどうでもイイんですよ。ここでファイを守るために立ち上がれるのは黒さまだけ。それこそ桜都国編でファイの死にたがりを最初に看破して以来、過去は関係ないと言ってくれて、勝手に死ぬなと吸血鬼契約までしてくれて、対価の分割案もさりげなく提案したのは黒鋼で……と、ファイの死にたがり矯正を一番担ってくれていたのは黒さま。これ、本当にファイのお話の帰結として、死にたがりが消滅して生きる気持ちを取り戻す……というのが描かれる部分では、一番重要な役割は黒さまが担うんじゃないだろうか。17巻時点ではサクラが最後のキーパーソンだと思ってたけど、セレス国編に入ってからサクラは実質いないんで、ここはやっぱり黒さまで。

 ああ、もう、黒鋼×ファイ本を出してもイイです!(わりと台無し)

●ツバサ/感想/Chapitre.165「記憶の塔」

 チュニャンのエピソードに、修羅ノ国編での阿修羅王と夜叉王のエピソード、そしてその時の小狼パパが言っていたという形で写身小狼から語られた作中最大のメッセージ、「だから限りある時間を、自分が信じるもののために精一杯生きるように」が、やはり作中の落としどころということで、ファイ、(塔の上の方にいた)ファイの甦生という願いを棄却。

 「オレのせいでずっと眠らせてあげられなかった、ごめんなさい、ファイ」(ファイ)

 は作中的には是となる場面だと思いますが、それでもこれまでの生きる目的だった願いを棄却するっていうのは切ないなぁ。脇に黒鋼がいてくれて良かったよ。アシュラ王も死に際に「彼らとなら呪いを超えられる」って言ってたけど、ファイがこうしてそれまでの歪んだ生きる理由を棄却できるほどに変われたのは、彼ら、黒鋼に小狼くん(両方)にモコナにサクラに……といった面々との間に、侑子さんが言う所の「関係性」を構築できたからなんだろうなぁ。

 自分が(塔の上の方にいた)ファイの命を捨象して自分が生き残る方を選んだというそれまでのファイを縛り付けていた記憶は、飛王が改竄したもので、実はファイ(本当はユゥイ)の方も(塔の上の方の)ファイの生存を願っていた……っていうのは微かな救いなのかな。極端に言えば他人を犠牲にしてでも、本当の覚悟でもって追う自分の願いは尊い……というのを描いているツバサ(というかCLAMP作品)において、ファイとユゥイの二人とも、自分のことよりも他人のことを生命の譲渡という究極の形で願っていた……というのは深い部分。前者は他人より自分、それだけ叶えたい願いがあるというのも尊い気がするし、後者は自分より他人、それだけ救いたい他人がいるというのも尊い気がします。どっちが正しいというよりも、読者にどうなんだろうね?と問いかけている感じです。

 ファイがアシュラ王を殺せば第二の呪いは発動しないという設定が明らかになったことで、アシュラ王は、結局ファイに対してはイイ人だったっぽい。ファイの第二の呪いを発動させたくない→ファイの入れ墨に関する記憶を改竄してでも自分の魔力をファイ以上に→結果として自分がファイに討たれればファイを第二の呪いから救うことはできる……って解釈でOKでしょうか?

 結局、黒鋼がアシュラ王を殺しちゃったんで第二の呪いなるものが発動して引きとなったわけですが、どんな類の呪いなのか、そしてアシュラ王が言うように、それを「関係性」パワーでどんな熱いテイストで乗り越えていくのか、続きを楽しみにしたいと思います。

●ツバサ/感想/Chapitre.166「閉じた世界」

 死にたがりのファイ、前回でそれまでの生きる目的だった(塔の上にいた方の)ファイの甦生という目的を棄却して、また唯一自分に優しくしてくれた存在だったアシュラ王も前回死んだということで、いよいよ自分も死ぬ気モード。第二の呪い発動で閉じる世界というシチェーションで、自分を犠牲にして仲間らをセレス国から脱出させようとします。

 過去編の、ユゥイ(自分)を生かすか?ファイ(他人)を生かすか?という塔での選択のエピソードで描かれていたのは、結局ユゥイもファイも他人の方を生かしたということで、「自己犠牲」に関するエピソードだったと思うんですが、「自己犠牲」は既に「XXXHOLiC」の方で否定されるかのようなエピソードが描かれていました(四月一日が百目鬼のために自己犠牲で眼を差し出してしまう、クモの巣のエピソード)。ちなみに、その時の「XXXHOLiC」での「投げ出しちゃうのね、自分を。そんな簡単に投げ出せるモノが、大切なモノと交換できると思う?」という論理での「自己犠牲」に対する反駁は、僕がこれまで読んだ「自己犠牲」に対する反駁の中で一番美しい論理だと思ってます。ちなみにその時の「XXXHOLiC」での「自己犠牲」のテーマの落としどころは、ラストの百目鬼の「半分ずつだな」の台詞。自分を全部差し出して他人を救うのではなくて、自分と他人とで半分ずつ差し出しながら、二人とも生き続けていこうというモノ。

 で、今回のツバサラスト。やはり同じ結論を描いていたと思います。相変わらずどうしようもない死にたがりで、自分を犠牲にして最後に黒鋼を行かせようとするファイに対して、黒鋼が左手と蒼氷を捨てて、残った右手でファイを救いあげるという結末。黒鋼も犠牲を出すんだけど、自分を全て犠牲にしてファイを生かすというほど自己犠牲ではない、部分的に差し出し合って、二人とも生き残るという選択。生まれた時から呪われた子として誰からも重要だと思われず、自分を全部差しだして(塔の上の方の)ファイを生かそうとしたものの飛王のせいで改竄された意識を植え込まれ、ずっと贖罪意識にさいなまれながら死にたがりであり続けたファイだけど。サクラが看破していたように、自分だけは大切にできないと「自己犠牲」が染みついていたファイだけど、旅の末に全部じゃなくて少しづつ差し出してでも一緒に生きようとしてくれる黒鋼達との関係性ができて良かったなぁ。

 前々から僕はファイと四月一日がシンクロされて描かれているフシがあるということを書いてきましたが、この「自己犠牲」に関する部分もそうだったのかな。そうなると、さしずめそれぞれファイと四月一日をすくい上げるポジションにいた、黒鋼と百目鬼も何かしら重ねて描かれてる感じでしょうか。

 ともかく、「四つの対価」の回の、一人で対価を払う(自己犠牲)んじゃなくて、対価は仲間と一緒に四分割しようという話から始まって、最後に自分を犠牲にして(自己犠牲)仲間を生かすんじゃなくて、部分を指し出し合いながら二人とも生きようという所に落ち着いたセレス国編。出だしと結びに共通するメッセージを見せて、死にたがりのファイという長い伏線だったテーゼを「自己犠牲」の否定という形で描ききったシリーズ。構成美の点からも充実したシリーズだったと思います。

→「ツバサ TOKYO REVELATIONS」ED

・坂本真綾さんの「さいごの果実」が良すぎる。歴代坂本真綾バラードでもトップ3に入るくらいの勢いで気にいりました。公式サイトでプロモが全部見れる。すなわち全部聴けるんで、是非聴いてみて。

さいごの果実

→OPは牧野由依さん

synchronicity

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