
謎解き。
最終章に来て、原点回帰的に「その世界の謎」を解き明かすお話が始まっているのが面白いです。最初の阪神共和国の話で、巧断の謎を解き明かす部分なんかから始まって、考古学(世界の謎を解き明かす学問)志向という設定の写身小狼が、一種の世界の謎に対する探偵役になって(ジェイド国なんかでは文字通りミステリの探偵役だったけど)その次元その次元の謎を解き明かしていくという、ツバサ初期の面白さ。
「東京編」以降はその次元その次元の謎というよりは物語全体の謎にフォーカスが移っていって薄れていた部分なんですが、この最終章に来て、ループする時間という、玖楼国の「切り取られた時間」は何なのかというその世界(次元)特有の謎を解かないと先に進めないという初期テイストのRPGチックな展開に。
この辺りは脚本の大川さんがトップランナーに出たときに、すぐに答えを知りたい最近の読者に配慮して、「起承転結」の「承」を省いて作劇している(概意)と語っていたのと関係していて、初期のツバサは謎解き部分で、謎の提示、その探求のパートみたいな「承」のパートがまだあったんだけど、「東京編」以降は極端に「承」のパートが減っていた印象でした。「セレス国編」「日本国編」なんて、「承」パートまったくなかったですしね(世界に着いた途端、真・小狼の魔法で一気にアシュラ王の元へとか、いきなり星史郎さん登場で一気に夢の世界の真・小狼VS写身小狼へ……とか)。
前回の感想のコメント欄で話題になったように、「切り取られた時間」が侑子さんの場所の方にもかかってるとすると、ここでループする時間という現象が出てきたのは、XXXHOLiCの方で12巻で描かれた四月一日の胡蝶の夢ループ現象と何か関係がある予感。おそらく、単純な予想としては、侑子さんはあれだけダメージを追いながら真・小狼一向を玖楼国の「切り取られた時間」に飛ばしたはずなので、通常の時間が流れる玖楼国(物語冒頭に写身小狼と真・さくらが過ごしていたような、時系列がある時間)の他に、ある期間がループしてくり返されている「切り取られた」玖楼国の時間があって、今回、真・小狼達はその「切り取られた」部分の方にやってきたんじゃないかと。
そして、どんな期間が切り取られているかというと、それは遺跡で「祭り」が行われる期間だという。「祭り」が非日常へ突入する合図の記号を秘めていることは、最近の作品では「綿流し」という「祭り」の日が重要な意味を持つ「ひぐらしのなく頃に」をあげるまでもなく(というかツバサとひぐらし自体が、虚構性をキーに似た命題を扱ってる作品だという話を以前この記事で書きましたが)、伝承学的、フォークロア的、物語学的に一般的な事実ですが、超読書家という大川先生のことなので、意図して「祭り」というものを、最終章の非日常へ突入する契機として設定して、今話で語っているものだと思われます。
ひぐらしじゃないですけど、はじまりの地、玖楼国の「祭り」の日に、最終章の幕が上がる。これだけ聞いても、なんかワクワクしますね。
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