
アニメ版「狼と香辛料」第五幕「狼と痴話喧嘩」の感想です。バンダイビジュアルでの遅れ視聴となります。原作は1巻まで読んだ所です。
第四幕「狼と無力な相棒」は、ヤフー動画での配信終わったの?とか思ってるうちに見られなくなってしまったので、感想飛ばします。トレニー銀貨のトリックが明らかになる回だったと思われますが、たぶんもう原作小説orTV放送をチェックしてトリックの内容は知ってる人が多いと思うので、その辺りの感想は飛ばしで。
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ホロと銀貨を巡るミローネ商会VSメディオ商会の攻防が、ある種安楽椅子探偵モノみたいに、ロレンスとミローネのトップの人との対話を通しての(頭の中だけの)仮定と検証の繰り返しで描かれるんですが、向かい合って対話してるだけの絵なのに、会話によって仮想の攻防をくり返している所が結構燃えた。商売とか、マジで頭の中での仮定と検証の繰り返しが勝負なので、この辺りは商売人として見ていても面白いです。
で、そうやって頭の中で仮定と検証をくり返してある程度固まったものが「理論」になるんですが、理論と実践はまた別。
後半では、実践パートである、ホロの救出作戦が今度はアニメ特有の絵的な魅力を伴って描かれます。良かった。オッサン(ミローネのトップの人)と半オッサン(ロレンス)が会話してるだけで一話終わったらどうしようかと思った。ホロが出てきて良かった。
とりあえず、今話までは理論通りにホロ救出作戦が進んでいるんで(引きで不穏な描写がなされていましたが)、見所はやっぱりホロとロレンスの関係でしょうか。
土着の神さま的だったホロが、守ってきた土着の住人の代表であるクロエから、いわば、もうあなたの時代は終わった、これからは人間の時代なのよ宣言を食らってしまって、落ち込んでるんですね。
それをロレンスがなぐさめるんですが、もちろんおもむろにヨシヨシとなぐさめるのではなく、「考えようだ」とかなり合理的に励ました後に、「俺たちは商人だ」と、俺たちにはまだ商売があるじゃないか的な励まし方をするんですね(ここで一旦「俺」と言ってから「俺たち」と言い直すロレンスに萌え)。
この、一神教(らしい)の教会に、それとは逆の自然主義や人間主義、そういったものに囲まれてどこにも居場所がないホロとそれに共感するロレンスが、「商売」というわりと即物的なアイデンティティでもってそんな回りに負けないように強く生きていく姿勢がいいです。その辺りを通して、オーソドックスな恋愛モノ作品からはかなり離れる感じで、ドライなような湿っぽいような独特の関係をロレンスとホロが築いていくのがとてもいいです。そして、そんな二人を囲む中にも、ミローネ商会のスタッフの面々みたいな、商人スピリットをかいした理解者がちょくちょくといるのがまたイイ。
というわけで、今話のMVPは、ロレンスとホロの馬車内でのやりとりを聞いてて、行商人に戻りたい気になったと語っていた、ミローネ商会のおじいさん。なんか、たくましい商人の歴史を感じさせてるイイキャラだった。



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