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 『コードギアス反逆のルルーシュR2』の視聴率が低いことに関してコメント欄にコメントを頂いたので、それへのレスポンスとしての記事です。
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 『ガンダムOO』の頃から視聴率を大変気にする方からのコメントだったのですが、全体的に僕の「視聴率」に関する現在の考え方をば。

 まず、「価値判断」と記事タイトルに入れましたが、自分個人の主観的な価値判断に関してなら、本当もう自由でいい訳です。視聴率がものすごく高い番組こそ面白いと思う人もいれば、TV視聴率自体が存在しないマイナーなニコニコ動画の映像コンテンツの方がそんな高視聴率番組よりも面白いと思う人もいる。ニコニコ動画のマイ神動画こそが至上という人もいれば、そんな動画の何が面白いのか分からないという人もいる。その辺りは、とりあえず何を考えるかに関しての自由を保証されている国にいる限りは、個人がどういう主観の価値判断のものさしを持つかは自由であって、特に問題にならない訳です。

 ただ、そういう主観的な価値判断からはちょっと視点を変えて、もうちょっと客観的に共有できるコンテンツの価値判断の指標として、「視聴率」は最近ではどういう位置づけになりつつあるかというのが今回のトピックです。

 結論から言うと、「企画の目的によって(ある程度の)客観的価値判断指標として意味がある場合もあれば、あんまり無い場合もある」というのが僕の考えです。

 一昔前の、映像配信メディアがTVしかなく、しかも今より相当少ないチャンネル数だった時は、そのたった一つのメディアをどれだけ制したかという基準がとりあえず一番客観的な指標としては有効だったので、「視聴率」は映像コンテンツ全般の客観的価値判断指標として、突出した意味を持っていた訳です。実際に深く調べた訳ではありませんが、実際の所映像コンテンツのビジネスとしても、収益の面からも、顧客満足度の広さ・深さの観点からも、その頃は視聴率が高い映像コンテンツの方がそれらの数字も高かったのではないかと推測されます。そういう時代だったら、ある程度一元的に「視聴率」を映像コンテンツの価値判断指標として、だいたい皆で共有していてもいい。「視聴率」が映像コンテンツの企画としての価値を判断する指標として、共通言語になっていた時代だったんですね。

 ただ、時代が変わって、OVAで収益を取るモデルが出てきたり、途中を色々吹っ飛ばしていよいよインターネットの登場になってWEBでの映像配信ビジネスなんかがあたり前になってくると事情が変わってきます。今やTVは多チャンネル化し、WEB上には企業がオフィシャルで配信している映像コンテンツから、ユーチューブやらニコニコ動画で個人が発信した映像コンテンツから、実に多様な形態の映像コンテンツが溢れている。

 形態が多様になったということは、それらを(ある程度)客観的に価値判断する指標も多様になったということです。共通言語一つで色々語れた時代から、何カ国語か言語をマスターしてないと相対評価はしづらい時代になってきたんですね。

 「形態が多様になったから価値判断の指標も多様になった」というのは、具体例をあげると、NHKの朝の連ドラと、『Candy boy(公式サイト)』とを同じ「視聴率」という指標に基づいて価値判断して意味があるかといったお話です。

 これは極端な例ですが、同じ映像コンテンツでも、NHKの朝の連ドラができるだけ国民みんなに楽しめる健全な娯楽を提供したいという目的で(おそらく)企画されていて、「できるだけみんな」というくらいだから視聴率が良い価値判断指標になり、実際他の番組一般に比べたら視聴率が高いのに比べて、『Candy boy』は百合という相当ターゲットを絞ったユーザーだけ楽しんでくれれば良いやというのが目的で(おそらく)企画されていて、そもそもニコニコ動画配信だからTV視聴率そのものが存在しないのでそれを価値判断指標には使えない訳です。

 ビジネスとしての収益の面や顧客満足度の広さ・深さをはかるにあたっても、NHKの朝の連ドラは視聴率が結構指標になるけれど、『Candy boy』ではまったく指標にならないのがお分かり頂けると思います(そもそもTV視聴率が存在しないから)。これが、企画の目的・配信形態などが違えば、それを企画として(ある程度)客観的に価値判断する指標も違ってくるという例です。

 で、『コードギアスR2』ですが、これはかなりNHKの朝の連ドラとは逆ベクトルの目的で企画されてる映像コンテンツ企画(ビジネス)だと感じています。少なくとも、できるだけ多くの視聴者が健全に楽しめる娯楽を提供しようというのを第一の目的には作られていない印象です。むしろ、かなりの程度ターゲットを絞って、深くハマってくれたユーザーだけ深く顧客満足度を感じて頂ければいいという方向に近い印象(『Candy boy』ほどじゃないですが)。

 で、ビジネス面でも、収益形態として、とにかく広告(CM)を露出させて広告費から収益を得る、だから露出が高くなれば高くなるほどいいんで視聴率がとにかく大事、というモデルの形態ではなくて、ターゲットのユーザーにDVD(Blue-ray)を買って頂いたり、WEB配信で第一期や過去話を有料ダウンロード視聴してもらうあたりにキャッシュポイントを置いている企画という印象を受けています。R2は、第二期から誘導して第一期の有料ダウンロードをキャッシュポイントにしてるという少々変わったモデルを取っているのは興味深いなと思っていました。だから、鬼のようにR2のCMではビッグローブストリームの無料配信をプッシュしてるんだと思うんですね。まずはとにかくWEBサイトに飛んで貰って、無料コンテンツで満足してもらう。そこからフロントエンド(有料の一期)を売って、バックエンド(DVDや各種グッズ)購入にまで結びついて頂く(フロントエンドとバックエンドの概念についてはメルマガのバックナンバーが一番いいんですが、フリーでは公開してないので、深く知りたい方はこの記事:オタクに評価されるアニメ、されないアニメあたりで)。

 とまあ、そういう感じでWEB時代特有の企画形態をビジネス的にもかなりの程度取っている映像コンテンツ企画だと思うので、ちょっと、一昔前のノリで「視聴率」だけを指標に価値判断はできない印象です。

 なので、冒頭の方みたいにコードギアスR2の視聴率が低いことにこだわっている人には、『Candy boy』に対して視聴率が低いみたいなんですけどダメな作品(企画)なんじゃないですか?と言っているような妙なチグハグ感を感じてしまっています。そういうので語れるモデルとはちょっと違うのではないか、という。

 逆にじゃあどういう指標で語るならコードギアスR2という企画の価値をある程度客観的に語れるかと言ったら、WEBサイトにユーザーを誘導してからの有料コンテンツダウンロードまでの成約率が想定していたよりも低いのですが、ダメな企画だったんじゃないですか?とか、フロントエンド(一期有料映像)を購入してくれたお客様のうちのバックエンド(R2のDVDとか)購入率が想定していたよりも低いようなんですが、どうなんですか?とか。

 そういうコメントだったら、かなり分かります。

 他にも、WEB配信をはじめ、映像コンテンツ企画の目的・配信形態が多様化した今の時代に、じゃあどんな指標が有意味かという点に関しては数点、僕が企画の目的や形態に応じて有意味だと思っている指標がありますが、全てを語ると長くなり過ぎるので、最後に一つだけ。

 まあ、昔も重要だったんですが、今後さらに重要になると思われる要素・指標は、「口コミ」です。ガンと数字で出る「視聴率」に比べるとファジーな指標ですが、これはかなり実感としてあります。顧客満足度を充足させる方向での連鎖が起きる口コミが広がった作品(企画)は、いい作品かつ成功した企画。これは、ビジネス的な収益の面でも、顧客満足度の広さ・深さの観点からも、です。根拠もあるんですが、長くなってきたので割愛かまたの機会ということにさせて頂きますが、そういう観点から見ると、(主に検索エンジン的な意味で)日本一と思われるコードギアスの感想TBセンターを運営している身からすると、こちらから先にはまったくTBを送らずに1話の感想TBが100を超えるといった現象は、かなりの程度口コミが起こっている印象です。これだけTBが来たのは、ガンダムSEED&DESTINYの時以来です。

 とりあえず、「視聴率」という指標は必ずしも共通言語としての映像企画全般の価値判断指標にはならなくなりつつあるようで、そういう観点から口コミやその他といった新しい個別言語的な指標で見てみると、コードギアスR2にも視聴率の観点からみていただけでは見えなかった風景が見えてくるのではないかといったお話でした。