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 「鮮花祭りでいいのかな、と」(三浦貴博監督「第六章パンフレットより」)

 続いて、これまた昨年12月の公開序盤に東京で観た『劇場版空の境界』第六章「忘却録音」の感想です。もう、鮮花燃え萌え。
 劇場版、原作小説、記事中には双方のネタバレを含みますので、その点は注意でお願いしますー。
 ◇

 引用したパンフレットの劇場版第六章の三浦貴博監督の言葉通り、鮮花祭り状態でした。

 今までで一番原作と内容が違っていて、事件の真相がそもそも、キリスト教絡みの自殺にまつわる諸々ではなくて、覚醒剤に関する事件と、大幅にシンプル化されております。

 ただ、全ての改変、派手演出を、全ては鮮花祭りにするためだったと僕は笑顔で受け入れました。それくらい、鮮花に燃え萌えな一作だった。

 一応、玄霧皐月経由の式の記憶復活とか、物語上の重要イベントは通過してますが、それさえも枝葉に過ぎない感じ。とにかく、鮮花鮮花。

・予告時点で悩殺された人が大量発生したと伝えられる、鮮花ウィンク。
・犬に顔をなめ回される鮮花。
・式にパンチする(あたらない)鮮花。
・式を組み伏せる鮮花。

 この辺りが萌え萌えで、さらにこの一作は、渾身の「燃え」バトルに繋がります。

 原作にもあった鮮花と黄路美沙夜とのバトルですが、黄路美沙夜の扱う妖精が、シューティングの如く鮮花に降り注ぎ、鮮花がそれを打ち落とすという弾幕ゲーム化。しまいには、妖精達が合体して巨大妖精としてラスボス化し、鮮花超常決戦みたいなノリになってきます。

 ここはまじで凄かった。もう、どんなガンダムバトルか、という。

 ラスボス巨大妖精から降り注ぐ妖精シューティングをかわしながら、礼拝堂の椅子の上を鮮花がダッシュして接近、「邪魔!」と言って自分でスカートを破り捨て、巨大妖精本体に超接近。炎を直接食らわせて爆殺という所までの流れが熱すぎた。

 第六章パンフレットによると、これでも、最初は「爆熱鮮花フィンガーで旧校舎ごと、こう、ボーンと、ね」(第六章パンフレットの奈須きのこインタビュー部分より)してた辺りからは大人しくなった方なそうなんですが、こ、これで、おとなしくなった方なのかよ、と。

 十分ガンダムバトルしてるよ、と。

 僕としては、最後に妖精のラスボスを爆殺する時に鮮花が発光してるシーンを、鮮花トランザムと名付けたいと思いました。

鮮花トランザム
(鮮花トランザム/第六章パンフレットより画像引用)

 私のこの掌が真っ赤に燃える、お前を倒せと、轟き叫ぶ!って感じでありました。

 ◇

 そんなこんなで、燃え萌えで、は、早く、DVDを……!近くの劇場でやってたら何回も通うのに!って感じなんですが、さらに感動的なシーンもありました。

 原作と一番遠い劇場版の章でしたが、それでも、原作で一番大事な所は押さえていました。

 鮮花が、幹也に恋心を抱くきっかけになった、隣の家のおじいさんが亡くなった時に、幹也が泣かなかった、二人で星空を見上げた……というシーンですね。冒頭から使われていて、音楽と相成って感動的でした。

 禁忌が起源で、特別であろうとし続けた幼い鮮花が、普通が起源であるがゆえに、誰かのために泣くことは「特別」だから泣かなかった幹也を憧憬した、恋をした。

 普通であり続けることも特別だ、という幼い鮮花が察知してしまった真実。第五章の、理想の人間かありふれた人間か、ホンモノかニセモノかというお話とも通じる部分です(もっと言うとFateを含めて奈須きのこ作品でたびたび題材になってるのですが)。ありふれてるとか、「普通」であることの、逆説的な尊さ、特別さ。

 これ、原作でも解釈を委ねられているけど、結局鮮花は、この幹也に恋心を抱いたきっかけを思い出さなかったと解釈したい所だよな(読者にだけ伝えられただけ)。それが、アカシックレコードに記録されてる記憶をなんでもかんでも本人に思い出させようとしていた玄霧皐月のカウンターとなる、一生思い出さなくても、その人の生き方を規定する、糧であり続ける、尊い記憶もあるっていう、この章の主題。ある意味、これも一瞬で超える永遠。

 鮮花は忘却の中の幹也と見上げた星空の記憶を糧に、兄に禁忌の恋心を抱き続ける。なんて美しいんだろう。なんて美しいんだ、空の境界。なんて美しいんだ、鮮花。

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→次回:第七章「殺人考察(後)」の感想へ
→DVDで再び見た時の感想:まぎれもない少女小説の系譜〜劇場版空の境界第六章「忘却録音」〜
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