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ツバサ 26―RESERVoir CHRoNiCLE (26) (少年マガジンコミックス)  「‥ありがと‥‥」(写身小狼)

 『ツバサ』第26巻のネタバレ感想記事です。全体としては収録話に関してマガジン掲載時に書いた感想の再掲記事になっています。コミックス派の方は、これを機会にこの記事で一気読みなどして頂けたらと。
 ◇

●ツバサ/感想/Chapitre.201「遺跡の中の真実」

 という訳で時間の巻き戻しをやっぱり真・小狼はやっていた訳ですが、作中で何度も否定(というかそれはアリなのか?みたいな感じ、紗羅ノ国編、修羅ノ国編とか)されてきた次元の理を歪める「願い」ということで、対価も相当なものに。

 真・さくらの呪いを知る藤隆さん、撫子さんの(たぶん)消滅。真・小狼自身の関係性の放棄。放棄した関係性の空白を埋めるための四月一日の存在、などなど。

 真・小狼と四月一日は兄弟かと予想してたけど、もっと踏み込んで「もう一人の自分」でした。「もう一人の自分」は『CCさくら』のエリオルと藤隆さんの関係なんかで使われていた、これもCLAMP的に意味深な設定。

 そういう訳で、四月一日はやっぱり虚構の存在だったのだけど、飛王はそんな虚構の存在に意味はないって思っていて(だから星火なんかをあっさり殺している)、侑子さんは虚構の存在でも、夢(虚構)は強く願えばホントウになる(『XXXHOLiC』12巻より)って思ってるのね。そういった思想対決。

 そして、確定された未来に向かって計画を進めている飛王と、それに対立する「未来はまだ決まってない」と言いきる侑子さん。そういった思想対決。

 で、この未来は確定されてるのか?っていうのは実は『CCさくら』からのテーマで、未来視だったクロウ・リードの苦悩っていうのが『CCさくら』では描かれていて、だけど『CCさくら』時点で作品としては解答も出ていて、クロウ・リードでさえ未来視できなかった未来を確定させない要因っていうのがCLAMP作品作中にはあって、それは、ズバリ『CCさくら』時点で描かれたのは、「人を好きになる気持ち」。

 『CCさくら』と『ツバサ&XXXHOLiC』が繋がっている以上、この設定も繋がっているはずなので、つまり、人を好きになる気持ち、もうちょっと広義に言えばツバサ&XXXHOLiC作中でよく使われていた言葉で、「縁」とか「関係性」ですか、そういったものは、確定された未来を変えていく力を持っている。ここまできた以上、写身サクラが写身小狼を好きになった気持ちとかで、最後に逆転するのかもなぁ。

 あとは、明らかに次元や時間を超える「親と子の愛」っていうのが最終章にはあって、パパ小狼(『CCさくら』の小狼)から真・小狼に技とかが受け継がれているのもそうですし、四月一日の躰の記憶に両親(『CCさくら』のさくら&小狼と明らかになった訳ですが)のモノが刻まれているのなんかもそう。

 で、たぶんこの「親と子の愛」も最後の逆転カードなんだろうなー(「人を好きになる気持ち」と関係してるものですが)。パパ小狼→真・小狼&四月一日への「受け継ぎ」がもう随分描写されているのに対して、ママさくら(CCさくら)→真・小狼&四月一日への「受け継ぎ」がまだあんまり描写されてないのは、作品としての「タメ」だと思っています。技をパパ小狼から継いだ真・小狼なので、ママさくらから継いだのは、精神面、つまりはあの「無敵の呪文」としか思えないと、予想してるんですが、どうなんだろうなー。(現実世界で)10年越しに、作中世界では幾つもの次元を超えて、最後にママさくらから受け継いだ無敵の呪文が出てきたら、そうとう泣くなーとか妄想してるんですが、もう、お願いします!

●ツバサ/感想/Chapitre.202「歪んだ願い」

 真・小狼の時間巻き戻しが生んだ虚構の存在だとしても、これから関わる人達との「関係性」が四月一日のことを生かすっていう今回の侑子さんの語りから感じられるのは、ツバサ冒頭の写身サクラと四月一日がパラレルっていうこと。

 わりと最初の方の感想から、この物語は、一度記憶という全ての関係性を失った写身サクラが、物語を通して培われた新しい関係性によって新しいアイデンティティを手に入れていく話なんだ。だから記憶を失った後の写身小狼や黒鋼、ファイ、モコナと過ごした時間(具体的には東京編以前までの旅路)にも意味があったんだという話になるんだということを書いていたんですが、この最終章になって、実は写身サクラだけじゃなくて、四月一日もそういう物語をXXXHOLiCの方でずっと経験していたんだということが明らかに。

 写身サクラが、写身小狼と、黒鋼と、ファイとモコナと過ごした時間、新しい「関係性」で生かされていたように、四月一日も百目鬼やひまわりちゃんと生きた時間、「関係性」で生かされていたっていうことですね。

 本当の両親を、真・小狼の時間巻き戻しの歪みのせいで失っているというのも、さくら(サクラ)と四月一日で共通しています(四月一日はCCさくらママ、CC小狼パパと思われる両親を失い済みで、さくら(サクラ)の方は一周目の真・さくらの本当の両親であった藤隆パパと撫子ママを二周目時には失っている)。

 そして、写身サクラが虚構の存在だったのはもう言うまでもないですし、ここしばらくで明示されたように、四月一日も虚構の存在だったのも同じです。そして、そういった虚構の存在を誕生させてしまうきっかけが、そもそも真・小狼の時間巻き戻しにあったという(今話の飛王の台詞から、どうやら飛王は真・小狼の時間巻き戻しがきっかけで、一つを二つに分ける、すなわち写身を創り出す技術を手に入れたっぽい)。

 という訳で、時間巻き戻しを行ったという真・小狼の罪の作中での贖罪のあり方がだいぶ見えてきた気がします。つまりは、自分がきっかけで創り出してしまった写身という存在(四月一日、写身サクラ、写身小狼)に、虚構じゃないホンモノのアイデンティティを手にしてもらうことこそが、真・小狼の責任の取り方なんじゃないかと。

 大局的に虚構の存在でも、写身でも、生きた時間に意味はあるんだ!ということを描いている作品ですので、そこに向かってどんどん収束していきそうです。四月一日、写身サクラ、写身小狼の虚構組の救済っていうのがやっぱり最終章の見所ですよね。

●ツバサ/感想/Chapitre.203「側にいる者」

 「ピッフル国編」の冒頭で、「紗羅ノ国」編&「修羅ノ国」編での次元への干渉について、写身小狼にいい意味での答えの先送りを促していたファイから、今回真・小狼に対して、次元干渉に関する罪についてのアンサー。罪を一人で背負うというのなら、それもまた傲慢。

 真・小狼に対する写身小狼も虚構の存在でもホンモノだというように、時間巻き戻し後の世界というのも、真・小狼の選択がなければ無かった世界かもしれなくとも、それでも作中で物語として描かれてきたものもまた、辛いこと哀しいこと含めてホンモノだって所に向かっていきそうです。時間巻き戻しそのものを全否定したら、その結果生まれた四月一日をも否定することになるから、作品の落としどころとしてそれは無いんですよね。

 今週はヤンマガのXXXHOLiCが泣けました。今話で真・小狼にその存在を規定してくれる黒鋼やファイ、モコナがいるように、四月一日にもそういった存在がいるんだろうということが言われていますが、百目鬼やひまわりちゃんといったキャラの他に、最重要な存在として、四月一日を規定する存在について描かれています。

 「ネタバレ/四月一日の両親、CCさくらちゃん、CC小狼は生きてるっぽい。CCさくらちゃんとCC小狼が四月一日に逢いに行くという決意を込めた名前が、君を尋ねるで、君尋。真・小狼の時間巻き戻しによって生まれた虚構の子どもでも、両親は四月一日を愛している

 やっぱり最終章は、次元・時空・虚実を超えた、親子愛なんだよなー。

●ツバサ/感想/Chapitre.204「重なり合う願い」

 か、かっけー。

 そして切ない。

 画面二分割で、真・さくら一周目と、真・さくら二周目との「誕生日」にまつわるシンクロ語り。

 一周目の時は、真・小狼に語っている、二周目の時は写身小狼に語っていて、真・小狼は視ているだけ。

 ……という演出で盛り上がった所で、満を持して、写身小狼が敵対するように真・小狼のもとに登場(←ここが一番痺れた)。

 こう、虚実の対決だけじゃなくて、真・さくらの笑顔はどちらの小狼のものだったのか?的な盛り上がりがありますよね。写身小狼も、旅に出た後は写身サクラを好きになってた訳だけど、二周目〜旅に出るまで……は真・さくら二周目を好きだった訳なんで。

 一回目(正確には東京編に続いて二回目)の真・小狼VS写身小狼の対決で「躰の記憶」がキーになって、今、ヤンマガのXXXHOLiCの方でまた躰の記憶について四月一日に語らせている所を見ると、今回の(おそらく)最終戦も「躰の記憶」がキーになりそうな予感ー。

●ツバサ/感想/Chapitre.205「壊れた摂理」

 けれん味たっぷりに、ラスボス、飛王登場が描かれて最終決戦開始に。

 真・小狼の願いが、世界の摂理を壊した、それを写身の目を通して見てきても、願うことをやめなかった、自分と真・小狼は同じという飛王の演説をぶった斬って、黒鋼の一撃から最終戦開始。

 引きの「栄光なき決戦」っていうコピーがいい。真・小狼が正義の味方っていう訳でも全然無いんだよね。大事な人の生命と世界の摂理を天秤にかけて、大事な人の方をとったエゴむき出し同士の決戦な訳で、世界を救うためとか、そんな少年漫画のテンプレートにのっとった正義はそこには無いという。

 紗羅ノ国編、修羅ノ国編での、過去改変事例も、真・小狼の願いがもたらした次元の歪みの一旦だったと、そういった真・小狼の非正義性を買う役割に。その点であの時過去改変に懐疑していた写身小狼が今立ちはだかっているというのも上手い。考古学、様々な世界の歴史や成り立ちを知るのが好きだったという写身小狼の設定は、ここで、そういった世界の成り立ち・世界の摂理そのものをエゴで壊してしまった真・小狼のカウンターになるためにあった設定だったんだなー。愛する人のために歴史の成り立ちそのものを歪めてしまった真・小狼の写身が、歴史を愛し、同じさくらを愛していた皮肉という、切ない神シチェーション。

●ツバサ/感想/Chapitre.206「今在る未来」

 おおう、ずっと紗羅ノ国編、修羅ノ国編での次元改変を写身小狼が疑問視していたシーンが、時間巻き戻しを行った真・小狼の物語にかかってくるんだろうとは書いていたけど、今話で明示的にファイの口から回想シーン付きで繋がりました。やっぱり重要な場面だったんだなー。

 こうやって、紗羅ノ国編、修羅ノ国編が作中で非常に重要だったのが分かってくると、あの物語にあった、次元改変の他の、もう一つのテーマ、「生命の甦生はアリか?」も、この最終章にかかってきているのが分かります(阿修羅王は夜叉王の甦生を願っていた)。

 あの時、紗羅ノ国編、修羅ノ国編のクライマックスで、写身小狼が、

 「おれの父さんが言っていました」

 と言った上で、

 「「死者を甦らせる事は誰にも出来ない たとえ神と呼ばれる存在(もの)でも だから限りある時間を 自分が信じるもののために精一杯生きるように」と」(写身小狼)

 って言ってるんですよね。

 真・小狼が行おうとしていた甦生(正確には死ぬ直前に時間を止めてのやり直し)を、同じ存在であるはずの写身小狼はお父さんの言葉を借りて否定していたという。

 前回書いたけど、真・小狼と写身小狼は同じ存在のはずなんだけど、

 写身小狼:歴史、一度きりの時間を貴ぶ(考古学設定)、甦生には否定的
 真・小狼:歴史、次元を歪めて時間を巻き戻した、甦生が願い

 っていう対立構造が存在してるのは、二人のラストバトルを盛り上げてますよね。

 あとは、写身小狼のお父さんは甦生に否定的だったけど、じゃあお父さん繋がりで、真・小狼のお父さんは、CCさくら小狼は、甦生に関して何と言っていたのかが、当然この対比構造からは気になってくる訳で。

 XXXHOLiCの方とつなぎ合わせると、CCさくらちゃん&CCさくら小狼も登場してきそうな気配がありということで、本当クライマックスに入ってますよね。

●ツバサ/感想/Chapitre.207「進化する化身」

 真・小狼VS写身小狼最終戦第一ラウンド、まずは写身小狼優勢という回。

 これ、写身小狼は自我戻ってないのかな?少し意味深に真・小狼がおまえのさくら(写身サクラ)の気持ちは届かなかったのかと問いかけているのと、あと前回書いたように、真・小狼と写身小狼は次元改変の善し悪しに関して対立軸が存在するので、写身小狼も自我が奪われた状態ではなく、自分の意志で最後は真・小狼と戦ってたなんて展開も盛り上がる気が。

 後は、扉絵が、本編の内容と連動する東京編以前シリーズになってますね。

 今回の(たぶん)阪神共和国で写身サクラが目覚める前に寄り添う写身小狼の絵なのは、写身カップルの物語の始まりがこの阪神共和国だったから……というのを、本編で写身小狼と写身サクラの関係にフォーカスがあたっている(今回の真・小狼の台詞)のと連動しているのだと思います。

 そしてこの前は高麗国が扉絵だったりして、その時の本編の内容は、甦生の是非についてと、親から子への想いについて。その本編の内容が、同じくチュニャン母の意志をチュニャンが継承する様と、それでもチュニャン母は生き返ることはないというのを描いていた高麗国編の内容と連動していたってことかと。

 もしかすると、東京編以前の写身カップルだった時の物語にも、一つの世界一つの世界に、この最終章にかかってくるテーマ的な伏線みたいなものが含まれていて、一つ一つ大きな意味があったりするのかもしれないですね。大川さんなら、それくらいの仕込みはやりそう;

●ツバサ/感想/Chapitre.208「届かぬ刃」&Chapitre.209「魔王と傀儡」

 前話208「届かぬ刃」の時点で、写身小狼が真・小狼に何かを語りかけていると取れるコマがあったので、そうなのかなとは思っていましたが、今話(209)にて、写身小狼が真・小狼に協力して、飛王に一撃を。

 207時点で印象的に真・小狼がおまえのさくら(写身サクラ)の気持ちは届かなかったのか?と真・小狼に問いかけていたのですが、やっぱり届いていた!という展開。Chapitre.179「二つの写身」での写身サクラの「あなたがすき」の告白はきっと写身小狼にも届いていたんだなー。

 で、今話でも写身小狼が真・小狼を飛王の刃からかばった所で、真・小狼に対して何かを語りかけているととれるような?コマが。写身から真へのアンサー的な言葉だったら泣けるなー。泣けるし、W小狼が同じ方向を見ているという飛王を貫く絵の所は普通に「燃え」でした。

●ツバサ/感想/Chapitre.210「知りたい言葉」

 これは泣ける。

 「黒鋼さん」「ファイさん」……と、真・小狼はずっとそういう呼び方では黒鋼達の事を呼ばなかったので、ああ、写身小狼の自我が戻ったんだ……とその時点でウルウルきてたんだけど、「モコナ」から鉄板として「さくら」……と続いた後で、最後に「小狼」と続いた所でグワっときた。

 真・小狼も、瞳を通して一緒に旅した仲間だった、と写身小狼が最後に認めてくれた。真・小狼の物語は、「東京編」後に加入したパーティ内で、徐々に仲間としての絆を深めていくというものだったのだけど(だから東京編直後では深い所ではバラバラな感じでパーティが描かれていて、そこからインフィニティ編やセレス国編を通して仲間の絆が再獲得されていく様が描かれるという流れだった)、最後の一ピースとして、写身小狼から真・小狼も仲間だって言って貰えた。

 そして、写身小狼が真・小狼を助けた理由が、Chapitre.179「二つの写身」での写身サクラの「あなたがす(き)」の言葉の続きを聞きたかったから。

 これは、ツバサ第1話で、さくら(この時点では真・さくら)が写身小狼に気持ちを伝えようとしたんだけど、鐘の音の邪魔が入って、次会う時こそは伝えるからと約束しておいて、果たせないでいた約束と同じ。第1話で聞けなかった言葉を、第179話でも最後まで聞けなかった言葉を、あとは真・小狼が聞いてくれと、真・小狼に託して写身小狼消滅。

 ちなみに、『カードキャプターさくら』でも好きっていう気持ちを相手に伝えることが如何に大変でどれだけ尊いかっていうことにフォーカスがあたっていて、真・小狼ママ、CCさくらちゃんが真・小狼パパに想いを伝えるのは、実に最終回(有名な熊のぬいぐるみのシーン)。そういう点からも、『ツバサ』はまぎれもなく『カードキャプターさくらアフター』なんだと意識させられて倍涙腺にくる。

 『CCさくら』では、やっぱり小狼に想いを伝えられない、絶体絶命っていう所で、知世ちゃんから「さくらちゃんには無敵の呪文がありますもの」っていうエールが届いて、無敵の呪文で大逆転を決めるんだけど、果たして『ツバサ』は、真・さくらの想いを伝える言葉は、真・小狼に届くのか?っていうクライマックスになってきました。マジですげー作品だなー。

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