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ツバサ 27―RESERVoir CHRoNiCLE (27) (少年マガジンコミックス)  「絶対だいじょうぶだよ」(さくら)

 『ツバサ』第27巻のネタバレ感想記事です。全体としては収録話に関してマガジン掲載時に書いた感想の再掲記事になっています。コミックス派の方は、これを機会にこの記事で一気読みなどして頂けたらと。
 (今回最後の方にちょっとだけコミックス版オンリーの追記感想)
 ◇

●ツバサ/感想/Chapitre.211「焼き付いた笑顔」

 一コマ一コマ息を飲む。

 消滅した写身小狼からファイが魔術を受け取り、黒鋼が「桜都国編」で写身小狼と一緒に作ってもらった思い出の刀を受け取り……という所から、写身の刀を黒鋼が真・小狼に渡して、真・小狼が何も言わずに受け取る所までが凄い。

 『ツバサ』で何回も用いられてきた「反転」表現。

 インフィニティ編、Chapitre.144で真・小狼が自分自身の剣を召還した時は、真・小狼は写身小狼とは違う、一人の「個」である小狼だというのを表現していたのに対して、今回の、最後に真・小狼は自身の剣ではなく、写身小狼の使っていた刀で戦うというのは、だけど、写身小狼と真・小狼は繋がっていたんだ……という表現(今話のカラー扉絵がそんな感じですよね。笑顔で笑い合えたという、叶わなかったifですが)。

 写身小狼の最後の魔法で飛王の本拠地へ。真・小狼が握りしめている写身小狼の刀が、「東京編」以前にも意味があったんだ……という感じで熱いです。虚構の時間だったとしても、写身達がいなければここまで辿り着けなかった。

●ツバサ/感想/Chapitre.212「動き出した時間」

 長い長いツバサ歴でも、今までで一番「エー!」となった引きだったかもしれない。

 クロウ国=東京!!!

 すげー。

 多次元放浪モノだったのに、物語の最初と、転換点(東京編)と、終着点の舞台が実は同じ。しかもそれが表面上は読者に隠されていたという構造美がすごい。

 さすがにどういうことなのか今話だけでは分からないなー。次元干渉モノの常として、完全な整合性というものはあり得ないと思うのですが、とりあえず、本編で描かれた「東京編」ラストで写身サクラが羽根を置いていく決断を下したから、現在描かれているクロウ国には羽根が存在しているってことだよね?

 あの決断は、それまでの旅の目的(サクラの羽根を集める)というものを明確に棄却したまさに物語の転換点の最重要シーンなので、それがこうして最終章で意味を持ってくるっていうのは本当にすごいな。

 てか、今読み返してみたら、飛王の居場所(今戦ってるクロウ国)が明らかになる回のChapitre.181のサブタイが「未来の国」だわ。東京から見て未来の国って意味だったのか。すげー。

 あと、現在本編上に「さくら」の体が二つある訳ですが(死ぬ直前の幼真・さくらの躰と、各次元の記憶が刻まれている写身サクラの躰)、これも何か展開上意味がありそうだよなー。

 簡単に表にすると、

真・さくら(一周目)
→躰、魂、共に死ぬ直前で止まっている

真・さくら(二周目)
→躰:飛王が写身サクラを作った時に消滅
→魂:現在飛王が手にしているらしい

写身サクラ
→躰:現在ビジュアル的にも飛王の手の中に
→魂:Chapitre.179「二つの写身」で消滅

 って感じなんだけど、写身サクラの魂消滅時の、

 「あの二人が生きていてくれれば…終わりじゃないから」

 の台詞もあって、何らかの大逆転劇があり得る気もする。写身小狼が真・小狼に全てを託して前回消滅したのも、上の「あの二人が……」発言を写身サクラから聞いていたからとも考えられそうー。

●ツバサ/感想/Chapitre.213「比類なき力」

 サクラが自然とお話できたりという設定、特にクロウ国の水場と相性が良かったのは、そもそもその水がサクラ自身とゆかりの存在(過去/東京編の水場を守ったイベントより)だからだったのか。久しぶりに次元ループモノで強力なトリックをくらいましたよ。活字SFならともかく、漫画の週刊連載で炸裂させるというのはやっぱり凄いよなぁ……。

 本編は東京−クロウ国ラインと、次元を刻んだ写身サクラの躰でもって、いよいよ次元の理が本格的に崩壊開始。CLAMP作品の定理に挑戦する、飛王の甦生の願いが発動という所でメインキャラが何もできず、モコナが叫ぶことしかできないという絶体絶命の状況に。

 これは燃える。どう覆すんだろう。

 おそらくは甦生に関しては今回も否定するんだろうなぁ。月並みだけど、生が何回も許されてしまったら、その分一度きりの生の価値が相対的に崩壊してしまう。一度きりの人生だからこそ、閃光のように生きたいと思うのだと、作外でも普通に思うのでした。

●ツバサ/感想/Chapitre.214「最後の鎖」

 真・さくらの手を取りに行く真・小狼を全力で援護しながら、黒鋼とファイが「小狼」って叫ぶ所はグっときた。

 写身小狼消滅時に、写身小狼の口から仲間達と同格で「小狼」と呼んで貰えて、最後の最後にようやく本当の意味で真・小狼が仲間になったというのが効いている。写身小狼に対しては、黒鋼は「小僧」、ファイは「小狼くん」と呼んでいたので、「小狼」という呼び名は、真・小狼に対してだけのものなんだよね。

 そして、過去編で「触れられない」をキーにためにためていた、真・小狼と真・さくらの関係に、ついに真・小狼が真・さくらの手を取った(触れた)という感動の場面もつかの間。死に際に時間を止めて大事な人の死を回避した真・小狼の選択が、実は飛王の思惑通りだったという展開に。

 最後のカットからするに、侑子さんも死に際に時間が止められていた存在なのかな。ちょうどXXXHOLiCの方で、四月一日が侑子さんと会えなくなっている所だし(死別を意識させる雰囲気になっている)。

 四月一日が尋ねた侑子さん本人の願いが「生きたい」だったのだけれど、それは許されないことだから、侑子さんは儚げに笑うしかなかった……とかなのかも。

 ここで、死に際に時間が止められていた救済対象として真・さくらと侑子さんがシンクロするっぽいですね。同存在だった二作品の主人公、真・小狼と、四月一日、それぞれのヒロインが、真・さくらと侑子さんだったと。

 XXXHOLiCのヒロインは、やっぱり侑子さんだったんだなぁ。

●ツバサ/感想/Chapitre.215「真の存在」

 次元の記憶を刻んだ写身サクラの躰、幼真さくら、東京→クロウ国リフレインで魔力貯蔵した羽根が一つになり、超魔力で甦生が可能になるか……という所なんですが。

 前回の引きと今回の描写から、飛王の助けたい対象が侑子さんなのはほぼ確かなんですが、さらに気が付いた電撃的な見解として、以下の推理をば。

1.侑子さんの存在の核心に迫りはじめた「XXXHOLiC」12巻冒頭から、侑子さんの存在の核心に触れるようなシーンの時は、「舞う桜の花びら」が絵的に印象的に使われている。
2.1の「舞う桜の花びら」は真・さくら、写身サクラの存在の核心に関わるシーンで使われているものと同じ。
3.今話サブタイトル「真の存在」の意味。
4.「XXXHOLiC」で占いのお婆ちゃんが言っていた、四月一日(と真・小狼)の両親は死んだのではなく、遠い世界(次元?)にいるという発言。
5.今話にて、本当の侑子さん(あの蝶の羽ヴァージョンと思われる)がいる所が「切り取られた時間」であることが明示。
6.真・小狼パパ(CCさくらの小狼)は人影だけの描写ながら登場しているのに、真・小狼ママ(CCさくらちゃん本人)の登場をここまで伏せている作品としての理由。
7.Chapitre.189「受け継がれし覚悟」以降、明示的になっている「次元を超えて受け継がれる親から子への愛」というこの作品の主題。
8.侑子さんを救うための一連の儀式に必要な存在が、何故他ならぬ真・さくらであったのか?

 以上の点から考えるに、

 侑子さん=CCさくらちゃん

 ってことか!?

 もしこれが炸裂したらヤバ凄いな。この推理のもとにパラパラと読み返してみると、色々と繋がる感があるのだけど、さてはて……。

●ツバサ/感想/Chapitre.216「生と死の狭間」

 巻き戻し前の男側のシルエットがモロに以前出てきたパパ小狼のシルエットと同じであるし、筒状のものを侑子さんに託した「肉親」のシルエットも明らかに「CCさくら」の雪兎さんと桃矢兄さんだし、そして「XXXHOLiC」にあったCCさくらちゃんとパパ小狼は違う時間(次元)にいるという情報、及びそんな二人の時間を侑子さんは守っていたという今回の情報から、ツバサ冒頭の筒状の中で別かたれていた二人は、CCさくらちゃんとパパ小狼(の巻き戻しVer?)ということっぽい。

 二重三重のトリックで目眩がするな。

 物語冒頭時の読者→あの筒の中の二人は写身サクラと写身小狼?

 東京編以降の読者→もしかして真・さくらと真・小狼?

 今回→な、なんだってー! CCさくらちゃんとパパ小狼!?

 みたいな。もう一回くらいひっくり返ったりして。いや、さすがにここまでか。

 という訳で、何回か書いてきた最終章のテーマ、「次元を超える親と子の愛」ここに極まれり。絶対絶命のピンチに、パパママの力が到着。

 しかも届け主が侑子さん。

 台詞から判断するに、「インフィニティ編」以降描かれていた、侑子さんも個人的に小狼やさくら一向を愛していて助けたいんだけど、理を曲げられないから積極的には干渉できないというジレンマは、侑子さんが死ぬ直前で時間を止められた存在だったからなんだな(そういう死んでるのと同等の人間が世界に干渉してしまっては、それこそ甦生と似たような状態になってしまって理に抵触するから)。

 けれど、これまた台詞から判断するに、前々回の飛王のギミックで侑子さんの止まった時間も動き出したので、今の侑子さんはただの死ぬ直前の人間。直前だけど、今だけは時間が進んでいる普通の人間なので「干渉しては理に反する」という制約がついに解除。侑子さんは自分の意志で、死ぬ間際、小狼とさくらのもとに、パパとママの力を届けたと。今回のモコナが「侑子の魔法陣!」って叫ぶ所熱すぎる。

 侑子さん本人の救済はないのかなぁ。理を曲げた小狼や、そのために生まれた四月一日を生かそうとしてるのに、自身は理に殉じて消えていこうとしてるかのような。

 小狼とさくらの方は、パパママまで仕込んでたスーパーギミックでなんとかなりそうな気がしてきたけど、侑子さんの方は。四月一日の「侑子さんの願いは俺が叶える」がそこにどう繋がるのか。どちらのエンディングでも泣きそうな。

●ツバサ/感想/Chapitre.217「魔法の言葉」

 今週月曜発売のヤンマガ掲載のXXXHOLiC分で叫んだばかりだったのですが(今週のXXXHOLiCのネタバレ感想)、さらに上を行かれた。

 真・小狼ママとオリジナルCCさくらちゃん本人は多次元同位体だけど、一応別人だったんだ。『CCさくら本編』は本編で独立した世界。ツバサ&XXXHOLiCは半CCさくらアフターって感じということか。

 という訳で、今週分のXXXHOLiC時点では、

 絶対だいじょうぶ…よ(真・小狼ママさくら)

 だった無敵の呪文が(ちょっとだけオリジナルと言い回しが違う)、オリジナルCCさくらちゃんから渡された言葉だったことが明らかになり、今回ついに、オリジナルCCさくらちゃんから真・小狼ママに対して、オリジナルの無敵の呪文、

 絶対だいじょうぶだよ(CCさくら)

 が伝えられます。

 去年が『カードキャプターさくら』10周年。今日は四月一日(CCさくらちゃんの誕生日)。現実世界まで絡めたメタ演出までほどこしながら、現実世界の10年と作中世界の時空の壁を越えて、オリジナルCCさくらちゃんの無敵の呪文復活。

 これは泣いたね。

 XXXHOLiC12巻冒頭以降、虚構性の比喩として機能していた「舞う桜の花びら」の絵が、今回のこのオリジナルさくらちゃんの、

 「絶対だいじょうぶだよ」

 と同時に、希望の象徴というか、ポジティブなものに反転しているのも凄い。

 これは勝ったな。

 次元の記憶を写身サクラの躰に集める、東京→クロウ国の時間超越魔力貯蔵ギミックとか、飛王の方も凄かったけど、オリジナルCCさくらちゃんの無敵の呪文には叶わない。

 オリジナルCCさくらちゃんから真・小狼ママに星の杖と無敵の呪文が渡されるっていうシチェーションが神だよね。CCさくらちゃん世代で今では親になったかもしれない読者へ。作中では色々絶体絶命だった真・小狼ママさくらへ。現実世界でなら時勢もあって色々大変であろうかつてのCCさくら読者へ。

 オリジナルCCさくらちゃんから、もう一度、

 「絶対だいじょうぶだよ」

 すごい。

●ツバサ/感想/Chapitre.218「記憶の破片」

 世界の記憶が破片に映し出される演出が、同じく「理(ことわり)」の崩壊が一つのポイントになっていたセレス国編の時と同じで、クライマックス感が漂っています。理の崩壊が招いた悲劇の典型例がセレス国のアシュラ王の事例だったと解釈できるので、ああいった悲劇が起こらないようにと、理の崩壊を食い止めようとするパパ小狼・ママさくらに感情移入がしやすくなります。

 また凄まじいのが、前回のオリジナルCCさくらちゃん登場で、破片の中に描かれている一つ一つの世界が、CLAMP旧作の世界でもあることがかなりしっくり来るようになったので、メタ演出として、パパ小狼達の「世界を壊させたりしない」って言うのは、これまでのCLAMP作品を壊させはしない、否定させはしないっていう意味合いになってるのね。

 死者が生き返ってもいいとなってしまっては、死は覆らないからこそ生は尊いというのを描いてきた旧作CLAMP作品の世界・意義が無くなってしまう。なので、最早パパ小狼・ママさくらがCLAMPファンの代表(笑)として戦っているかの如くの意味合いになっています。その二人が代表作『カードキャプターさくら』のヒロイン&ヒーローの多次元同位体だっていうのだからどんだけー、しかも昔からのCLAMPファンが感情移入しやすいように親世代になってるというのだから、もう大川さんの脚本どんだけーっていう感じですよね。

 大好きな作品の世界に自分も参加したいというのは、コア読者の長年の願いだと思うのですが、擬似的に作品への読者参加装置を作り上げてしまった(前回のリアルの四月一日にオリジナルCCさくらちゃん登場なんかもその一貫)ツバサ&XXXHOLiCの試みは凄いと思うなー。

●ツバサ/感想/Chapitre.219「継がれた魔法」

 クロウの魔法までパパ小狼が継ぐ形で発動。

 前回書いたけど、飛王の理の破壊、世界の破壊は、これまでのCLAMP作品世界破壊的なニュアンスなので、それに対抗する方も、CCさくらちゃんにクロウと、CLAMP作品最強陣が続々登場。パパ小狼が異様にカッコいいな! 小狼はずっとクロウの血筋って呼ばれていたいたので、ここも血縁関係。次元・世代を超えた総力戦になってます。

 そして、真・小狼がパパ小狼から生み出された存在と捉えられるならば、真・小狼から生み出されたのが写身小狼。

 写身組、真が存在している限り終わりではない伏線通りに、生存確認。

 これは、パパ小狼、真・小狼、写身小狼の小狼祭り(笑)になるんだろうか。オールスターズノリで、もうトリプル小狼バスター的な攻撃とかやって欲しいんですが(笑)。

●<コミックス版のみの追記感想>

 という感じで、この巻収録時はタイムリーに雑誌で読みながら魂を揺さぶられていたのですが(CCさくらちゃん登場の所がヤバかった)、さらに気付いたことを追記をば。

 Chapitre.218の感想で書いた通り、現実世界を巻き込んだすごいメタな演出がこの巻では特に顕著なんですが、そう考えると、Chapitre.218のファイの、

 「それぞれの世界を流れてきた時間 過去 いや記憶たちだ

 というこの台詞。

 これは、CLAMPファン読者の、心に残っている過去CLAMP作を読んで過ごした「記憶」ともメタにとれるってことなんだよね。

 子どもの頃に昔のCLAMP作品を読んでいた読者達も、今ではもう大人で、過去作たちは過去の話。だけど記憶には残っている、という含意が感じられます。

 ここでは飛王はそういった他の次元(オリジナルCCさくらちゃん登場で、CLAMP過去作の世界もこのカケラの中にあるのはほぼ確か)を壊そうと、読者達の心の中の過去作と過ごした記憶なんて消してしまおうとしてるのだけど、それに、パパ小狼やママさくらは抗う、という。

 そこに、代表作『カードキャプターさくら』のオリジナルCCさくらちゃんも応援に来てくれる、という、そういう構図なんですよ、たぶん。

 かつての読者達の現在の年齢に合わせて、親になったママさくらが、パパ小狼が頑張る。ママさくらはオリジナルCCさくらちゃんから「無敵の呪文」を託され、パパ小狼は同じくCLAMP作品シリーズ最強の魔術師であるクロウの魔術を託される。がんばる。CLAMP作品二大最強魔術師からの、劇外への応援。

 それくらい、過去、子どもの頃にCLAMP作品を(というかもうマンガを、とか物語を、くらいに拡大した意味で大川さんは書いてる気がしますが)読んで得た感情は、ニセモノなんかじゃない、ホンモノだ!というメッセージを感じる。

 大人読者の感情移入先である、ママさくらとパパ小狼が、この最終バトル時では子どもの姿に戻っているなんて設定(演出)はもろにそうですよ。大人になって現実に埋もれかけている読者達に、もう一度、子どもの頃に胸をときめかせたあのハートを思い出してと。いつだってCCさくらはあなたの胸の中にいると、「無敵の呪文」は死なないと。そういう大川さんバカなんじゃないかというくらい(笑)熱いメッセージ。

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