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「あたしの願いは、ね ただ貴方が存在(い)てくれる それだけで、いいのよ」(壱原侑子)
侑子さん本人の願い伏線、回収。
凄いのは、おそらく劇中初の侑子さん視点を見開きで持ってきていること。
いずみのさんの『漫画をめくる冒険―読み方から見え方まで― 上巻・視点 (1)(サイト)』に詳しいのですが、漫画には右から左に流れているベクトル(といずみのさんが呼んでいるもの)という不可視の流れが存在するので、基本的に視点キャラは右側に、視点キャラから見た対象キャラが左側に描かれるようになっています。
で、侑子さんはずっと視点キャラにはならず、対象キャラだったんですね。というのも、侑子さんは作品世界の謎の全てを知っている超常存在なので、侑子さんが視点キャラになっては、それに視点を合わせている読者も侑子さんと同じ全知の存在ということになってしまって、どうしてもそこに違和が生まれてしまうから。だからこそ、ずっとXXXHOLiCは、右側に描かれる視点キャラの四月一日の視点で読者は作品を読み、謎の存在である左側に描かれる侑子さんに時に導かれ、時に世界の謎の断片を教えられ……という形で進んでいく娯楽作品でした。
それが、『ツバサ&XXXHOLiC』の物語が終盤をむかえ、侑子さんしか知らないという謎もほとんどなくなり、侑子さんの絶対対象性が限りなく薄くなった所で、今回ついに十全に仕込まれた「侑子さん本人の願いは四月一日が叶える伏線」を踏まえて、侑子さん本人が自分個人の願いを語るシーンが描かれる訳です。
今まで作中の超常存在ゆえ対象存在だった侑子さんが、ここで劇中初で視点キャラになります。これはいわば、超常存在の人間化。神の人化とも言えるシーン。そのシーン、
「あたしの願いは、ね ただ貴方が存在(い)てくれる それだけで、いいのよ」(壱原侑子)
が、劇中初の、見開きで侑子さんが右側で、左側の四月一日を見ているという構図。
またこのシーンは、はっきり言って愛の告白です。
かなり哲学的というか詩情的な台詞になっているけど、前回マガジン掲載の「ツバサ」の方で同じく、写身サクラがようやく写身小狼に愛の告白を遂げるという見開きシーンが描かれていることから、作品をまたいだシンクロ演出をこれまでも何回も使ってきた『ツバサ&XXXHOLiC』的に、侑子さんの気持ちはLOVEだったと解釈したい所です。超常存在が人間化した時点で描かれるのが、LOVEというのがもの凄く感動的。そこではじめて視点キャラになったというのがもの凄く感動的。
「ツバサ」の方の告白シーンもまた右側に視点キャラの写身サクラ、左側に告白を受け取る写身小狼という構図になっている点がまた凄く、さらに言えばその告白シーンが、『カードキャプターさくら』の最終回のCCさくらちゃんの告白の時の構図とリフレイン演出してる所がまたもの凄いのですが、それが今回のXXXHOLiCでも踏まえられています。つまりは、今週は『ツバサ』と『XXXHOLiC』での、シンクロ演出での「愛の告白をする視点キャラヒロインと、それを受け入れる主人公」という物語上の最クライマックスだったということ。
『XXXHOLiC』の方は詩的なフィルターが強いですが、同じく見開きで左側(視点キャラから見ると対象側)に描かれながら、
「おれは店(ここ)にいて 佑子さんとまた逢えるのを待ってます」(四月一日君尋)
とアンサーを返している四月一日は、ツバサの方の写身小狼の「俺もだ……」と同じく、愛の告白を受け入れたように思えます。四月一日としても、ひまわりちゃんは憧れで、LOVEは侑子さんになっていたと解釈したい所。
なんで少年誌なのに両方とも視点キャラが主人公の小狼、四月一日(しかもこの二人は作中の同位存在)ではなく、ヒロインの方になっているのかは、もしかしたら前述した『カードキャプターさくら』の最終回に重ねるという意図の他にも、最後のクライマックスではCLAMPという作者が女性というのを素で出してみたというのもあるのかもしれないと想像したりもします。それくらい、圧倒的なヒロイン視点からの愛の告白シンクロ演出。
しかし、「相手の存在を願う無償の気持ち」というのは、「愛って何?」という漠然とした問いに対する一つの答えを見た感じ。この解答を描くために、ここで両作のダブルヒロインから愛を告げさせるために、写身小狼と四月一日という、「存在」が揺らいでいる虚構存在の苦しみをずっと描いてきたのだと思うと感無量ですわ。
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