
作中屈指の名話だったんじゃないかと。
「――幸せになったら弱なるなんてウソや 幸せなんやったらもっともっと強くならな 今幸せやなかったり 何かの理由で大変やったりする人たちのためにも」(近衛木乃香)
ここがもう、感動してしまいましたね。
まほら武道大会編の刹那VSエヴァンジェリン戦から続いている、刹那の幸せになっていいのか?問題に解答を出しただけでなく、今話、この台詞、このシーンは、おそらく今後明日菜にかかっていくのですよ。
この魔法世界編の本筋が、「過去と向き合って精神的な危機を向かえることになる明日菜が、仲間達によって救われるまでを描く話」であるというのはもう僕の中ではかなりブレない感じなんですが、前々から書いている通り、今回の話で明日菜の精神の救済をメインで担うのは僕が「過去の悲劇組」と呼んでるキャラクター達なんだと思っているんですね。刹那、エヴァンジェリン、ネギあたりなんですが。
過去に悲劇的な出来事を抱えていたのだけど、その出来事からくる精神的な危機を明日菜によって救われた面々。その面々が、「お返し」的に、このシリーズでは最後に明日菜の精神的な危機を救ってくれるのだろう、と。
で、第一陣として、今話で刹那が過去の悲劇から完全に離脱。悲劇的な過去があったとしても、幸福を求めてイイという、圧倒的な木乃香からの肯定。この「悲劇的な過去があっても〜」の流れは、奇しくも京都編の終わりで明日菜が刹那にかけて刹那を救った類の言葉ですし、まほら武道大会での刹那VSエヴァンジェリン戦の後のエヴァの過去語りの後に、同じく明日菜がエヴァにかけた種の言葉でもあります。
そして、ここで第一陣として刹那を完璧に救い上げるのが木乃香というのがね。また凄いですね。最後の幸せじゃなかったり、何かの理由で大変な人達のために強くなるっていうのは、刹那に語りながら、作品としては明日菜にかかるようになってるんですよ。第1話から明日菜の親友として登場していた木乃香が、ここでこの台詞を口にするというのが感動的。木乃香も、明日菜のために強くなる。今話の木乃香は凄いですね。ずっと刹那視点で描かれていますが、刹那じゃなくてもある種神様的な存在の女の子に見えますよ。
こうして、夏休み編のスタートだった第169話で未遂に終わって以来の木乃香と刹那のキス(仮契約)が実現するんですが、さらに深く読み込むなら、今話は169話冒頭と対照構造を持ってるんですよね。169話が、はじめて冒頭で明日菜の出生が、明日菜は実はアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアであり、過去に何らかの悲劇を持ってることが示唆されつつ、その横で木乃香と刹那のキスが未遂に終わるという話。
そして、今話が、(作品としては)過去の悲劇から明日菜を救い出すために、そのための力を手にするために、木乃香と刹那のキスが実現する話。
かなり凄いですね。明日菜救済組の第一陣がこのせつで、こんなにボリュームたっぷりの仕込みで描かれるとは思わなかったです。
◇
そして、さらに凄いのが、明日菜を救うことになるであろう二大要因、「過去に悲劇があっても、今、幸福を追ってもいい」と、「記憶を失っている間に出来上がった関係性にも意味がある」を、今話では平行して描写していることですね。前者は上述したように木乃香と刹那で描いているのですが、後者はユエとアリアドネー魔法騎士団の仲間との関係で描いています。
魔法世界編に入ってから記憶を失ったユエと、幼い頃の記憶を無くしている明日菜が平行描写になっていることはウチの「ネギま!」感想では前々から書いておりましたが、そうすると、現在のユエと、委員長をはじめとするアリアドネー組のキャラクター達との間にホンモノの絆がある描写(委員長はそう簡単にユエをネギには渡せないと前話で言っている)はちゃんと意味があるんですね。
つまりは、記憶喪失中のユエと、アリアドネー組との絆がホンモノであるように、明日菜が記憶を失っている間に形成された明日菜と3-Aのみんなとの絆も、またホンモノである、という風に持っていく仕込み。
(さらに、記憶喪失中に出会った仲間が「委員長」というのも、おそらく平行描写的に意味がある)
前々から書いてますが、絶対に魔法世界編のクライマックスの明日菜救済展開の所で、ユエの役割はドカンとくると思いますよ。
◇
という感じで、こんな短い話に(しかも表面上はシンプルな百合萌え話)、魔法世界編の本軸である、「明日菜の精神的な危機の救済」に向けての仕込みを入れまくっていた、もの凄い濃密な一話だったと思ったのでした。
「――幸せになったら弱なるなんてウソや」から始まる木乃香の台詞は、数あるネギま!作中名台詞の中でもトップにランクインだなー。

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