
ネタバレ感想につき、アニメ版でタイムリーに楽しんでる方はご注意を。
中編三つからなる一冊。ただハルヒの場合時系列的にもバラバラの中編でも、単純な息抜きストーリーではなく、大きい本編の流れに組み込まれる要素がふんだんに盛り込まれております。以下、編ごとの感想。
●エンドレスエイト
僕的に、ハルヒ全編のストーリーラインのエッセンスを中編に凝縮してまとめたものだと解釈しているシリーズ中でも重要な中編。
終わらない夏休み(=楽しい時間)を繰り返し続けるのだけれど、最後にはそこから脱出して時間を進めることを選ぶ……というこの中編の流れが、楽しいSOS団の時間をハルヒ達は全編を通して駆け抜けつつ、最後にはそこから抜け出して何かを進めることになる……(例えば、最低限みくるちゃんは未来に帰るので、いつかはSOS団の時間も終わる)というハルヒ本編の縮図なのではないか、という解釈。
この中編までは脱出に関しても、「ハルヒは蚊帳の外構造」が続いているんですが、本編ラストはハルヒも蚊帳の中で、主体的にそれでも選ぶ……という話をだいぶ前から期待してたりします。
●射手座の日
『消失』で爆発する、「情報統合思念体の一デバイスでしかなかった長門さんが人間味を帯びてくる」といった長門さんストーリーラインに属する一編。長門さん、コンピュータゲームが結構面白くて、密かにハマリ。
アニメ版でパロディネタが爆発した回でもあります。「ガンダムを出しなさい!」は今でも思い出して笑いそうになる。
●雪山症候群
謎がおそらくは後で来る長編のために伏線として張られたまま解決しないで終わる中編。どうも何らかの敵勢力と戦うお話になるっぽい?
謎の敵によって雪山の館(異空間)に閉じ込められたSOS団メンバーが脱出するまでを描いたお話ですが、特筆すべきは、
・ハルヒが、「ハルヒは蚊帳の外構造」から抜け出し始める初動が示唆されている
点。『消失』の件をハルヒに嘘説明するキョンの所と、今回の遭難事件自体を「集団催眠」だと古泉が嘘説明する所と、相変わらず何とかハルヒを蚊帳の外に置こうと回りはする訳ですが、この中編から、本当にハルヒがそれで納得したのかがちょっとボカされるように。
後は『消失』の件に関するキョンとハルヒの会話で、長門に危機が迫ったら、キョンとハルヒは暴れるという点で同意する点が良かったな。今回の異空間からの脱出の際に、古泉が、例え『機関』の意向とそぐわなくても、長門の危機の際には一度だけSOS団側に付くという「約束」をするのですが、この、それぞれが所属している組織からハルヒを観察対象として事務的に集まったはずのSOS団メンバーだったのに、話数がここまで進むにつれてそういう表面的なものを超える、簡単に言えば友情が芽生えているというのがジンと来る所。
異空間脱出のキーとなるオイラーの多面体定理ネタも面白かった。多面体から一つの数字を導き出すという数学の過程と、長門、古泉、キョン、ハルヒ、全員がいなければこの異空間から脱出できなかったという作中の展開が上手くシンクロしておりました。
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Super Driver
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涼宮ハルヒの憂鬱
涼宮ハルヒの溜息
涼宮ハルヒの退屈
涼宮ハルヒの消失
涼宮ハルヒの暴走
涼宮ハルヒの動揺
涼宮ハルヒの陰謀
涼宮ハルヒの憤慨
涼宮ハルヒの分裂
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