以下、相羽家の徒然などを交えつつ、漫画トークです。
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 平城遷都1300年とかで世間が盛り上がっております。

 で、いきなりぐぐっと相羽家徒然話なんですが、TVで遷都関係のニュースなり特集なりを見ていた母上が、急に「昔読んだ漫画が見たい」と言い出しまして、なんでも、平城京とかあの辺りを舞台にした漫画が我が家にはあるんだとか。

 確かに、歴史好きの姉上が昔集めていた日本史を扱った少女漫画が我が家にはたくさんあります(ちなみにこういうのを僕も子どもの頃から借りて沢山読んでいたのが、なんとなく今に繋がっている気がします)。

 で、それは里中満智子の『天上の虹』だろう! と出してきたんですが、パラパラめくってみて、どうも母上が思っていたのと違うらしい(ここで里中満智子さんが出てくるのが、時勢的にタイムリーであります←例の都の条例改正案問題でコメントがメディアに上がったりしていたので)。

 ああ、もうあの漫画は家にないのか、私の記憶はやっぱりおかしくなってるのか……と若干母上は落ち込んだっぽいんですが、後日また急に閃いたように『天上の虹』じゃなかった! こんな感じだった! 我が家には別な遷都時代の漫画がある! と言い出しまして、ようやっと突き止めましたよ。

 長岡良子『眉月の誓』でした。

 おま、こういうのも失礼かもしれませんが、『天上の虹』よりもだいぶマイナーな作品ですよ、母上! と。

 しかし、本当にこれだったらしく、母上、現在久々に休み休み漫画を読んでいるという。

 僕はここに感動してしまいましたよ。よくぞ意識不明で長く入院していたあの頃からここまで回復したな、と。車椅子で、言葉もあんまりうまく喋れなくても、漫画を楽しむことってできるんだな、と。

 僕は専門が広い意味で認知科学と言語学なので何となく気付いていたのだけど、改めて思った。『物語』が古来から続いている最も根源的なエンターテイメントである理由は、ここにある。

 現在の母上は、例えば現在の年金にまつわる仕組みを詳しく説明してもほとんど理解できない程度の認知状態、言語状態だけど、漫画で『物語』を楽しむことはできるんだな、と。

 これは、人間の言語認知における『物語』の優位性(と言っていいのかまだ分からないけど)については研究してみる価値、余地がまだまだあるな。現役の研究者の方、トライして頂けたら嬉しいです。いや、僕がやればいい、のか?

天上の虹(1) (講談社コミックスmimi)
天上の虹(1) (講談社コミックスmimi)

眉月の誓 (上) (秋田文庫―古代幻想ロマンシリーズ)
眉月の誓 (上) (秋田文庫―古代幻想ロマンシリーズ)

眉月の誓 (下) (秋田文庫―古代幻想ロマンシリーズ)
眉月の誓 (下) (秋田文庫―古代幻想ロマンシリーズ)

 さて、続いて、そんなことを姉上に電話で報告していた時に出て来た、これまた漫画トークです。現在相羽家のもっぱらの話題は、「歴史」と「漫画」です。

 どうも姉上、今週の『ONE PIECE(ワンピース)』の展開に、『学園アリス』との共通性を見出したらしく、それを得意げに教えたいらしい。

 「能力無効化」の能力と、「能力を盗む能力」が両方登場する作品が、二つもあるんだよ、ふふん、みたいな。

 そして、それを聞いて、「能力無効化」と「能力を盗む能力」は、能力もの漫画における王道の二大能力なんだよ! と、大人げなく鬼のように実例をあげ始める弟。

 く、こういうことするから一般的にオタクウザいとか思われるのかもしれないな……(まあ確かに、/<この二作品のネタバレ>/「能力無効化」と「能力を盗む能力」を一人で持ってるという点で、黒ひげと蜜柑は共通度が高いかもしれないけど

 そして、そんな凄い能力者に、ゴムゴムだけで向かっていくのが熱い展開なんじゃないか! と力説してみたんだけど、そこは上手く伝わらなかったっぽい。え、この熱さってもしかして男女で共有できないのか?

学園アリス (1) (花とゆめCOMICS (2469))
学園アリス (1) (花とゆめCOMICS (2469))

ONE PIECE 巻57 (ジャンプコミックス)
ONE PIECE 巻57 (ジャンプコミックス)

ハンター×ハンター (No.11) (ジャンプ・コミックス)
ハンター×ハンター (No.11) (ジャンプ・コミックス)

 最後に、最近の個人的にお勧めの漫画をば。

 これは、文句なく東毅『超弩級少女4946』ですね。

 『物語三昧』さんのこの記事↓

『RETAKE』『ねぎまる』ドラゴンクエストの同人誌など  きみまる著  この腐った世界で、汚れても戦い抜け。楽園に安住することは人として間違っている。/物語三昧〜できればより深く物語を楽しむために

 に心動かされて購入してみたんですが、大当たりというか、めちゃめちゃ面白かったです。

 もうね、作者さんの内側のエッジがビリビリと伝わってくる。スタンダードなバトルとか萌えを描きつつも、その内側、深部になんとも言えない鋭さがあるというか。大袈裟かもしれないんですが、萌えバトルっぽいけど内側には『幽遊白書』の仙水編みたいな黒さと深さ、というか(いや仙水編は単なるイメージですけど)。

 さらにヒロインの名前が「衛宮」だったりするのも、たぶん近年の物語史の諸々を踏襲したりパロディしたり、色々考えてるんだろうな(『Fate』の主人公が「衛宮士郎」。まだ2巻までだけど、既に桜ルート的なテーマが盛り込まれている)。ちゃんと骨太に「物語」している期待作です。

 現在コミックス2巻まで刊行中。お勧めです。

超弩級少女4946 1 (少年サンデーコミックス)
超弩級少女4946 1 (少年サンデーコミックス)

超弩級少女4946 2 (少年サンデーコミックス)
超弩級少女4946 2 (少年サンデーコミックス)

 とりあえず、最近の新人さん(にカウントしてよいのか?)では、『波打際のむろみさん』の名島啓二さんと、この東毅さんが僕的ツートップかなぁ。名島さんは東さんとは別の意味で、凄い感じを受けています。ギャグ漫画だけど、ギャグ漫画だけど、一般人が日本史とかせいぜい西欧史の文脈で創作するのに対して、地球規模みたいな広い視野でギャグ漫画を描いておられる。人魚さんって、世界規模で訴求力があるんだろうか!?

波打際のむろみさん(1) (講談社コミックス)
波打際のむろみさん(1) (講談社コミックス)