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アニメから入りましたが、原作ライトノベル(集英社スーパーダッシュ文庫)の方の感想です。
ツンデレ幼なじみ芹沢文乃に萌え狂いながら読めるラブコメライトノベルであり、ラスト一章だけホロっとイイ話という微泣きライトノベルでもありました。
「ツンデレ属性」で一周回して何か新しいことをやろうがコンセプトなんじゃないかと勝手に思ったんですが、こてこてのツンデレヒロインである文乃のキャラクターで押しながら、実は「表面上は深層の意志と逆の言葉を言う」のをコミュニケーション論みたいな形で盛り込んで「ツンデレ」自体を作品のギミック/主題にしてしまっていたのに送り手の実力を感じました。
クライマックス、孤児・霧谷希救済にあたって、文乃が本当真逆のこと、「ツン」の態度で表面上の言葉では冷たいことを言うんですが、内面は逆であると、本当は文乃も希に戻ってきて欲しいと思っていると希にちゃんと伝わっているというシーンは技巧的過ぎて驚きでした。この手の「コミュニケーション不全を乗り越える」話のネタに「ツンデレ」を使おうと思いついたの凄いな。
ある一定条件でだけ文乃は本音もそのまま喋るんですが、その条件下で主人公に言ってしまった「あなたが好き」も、作品の最後の一文で否定して終わっているのもニクイ。最後の一文では逆に「ツンデレ」条件が発動しているので、「好きの否定」は、実は「本当に好き」ということ。意外と技巧派の小説で、文法自体はミステリに分類してもそんなに怒られないかも。巻末コメントで限定条件下で戦うバトルものが好きと『HUNTER×HUNTER』なんかを作者さん上げてるんですが、この作品自体がラブコメに「限定条件下での駆け引き(ツンデレの発動/解除条件など)」を盛り込んだ作品になってます。
またラブコメにおける「ハーレム問題」に関してもある程度「先」を見せているのも素敵。主人公はオーソドックスに美少女に囲まれながら一人の女の子を選択しないタイプなんですが、今作ではヒロインの方がこの問題に敏感で、希が文乃の巧への気持ちに気付いて、身を引いて「居場所」から出て行ってしまう。文乃もその気持ちに気づいてしまう。つまり、巧の隣という居場所は有限のものであるという事実を、ヒロイン二人の方は共有してしまっている。
それでも希も孤児なので、他に居場所もない。そして同じく孤児だった文乃にもその気持ちは分かる。ときて、上のツンデレ救済のシーンに繋がります。「ハーレム問題」は確かに問題なんですが、だからと言って恋仇が減った、やった! と喜べないシチェーションでどうするか? という、少し「先」を描いている感じがする。「ハーレム問題」のダーク解答が「ヒロインがヤンデレ化して主人公に天罰」だったら(「スクールデイズ」、「ときメモ4」など)、この作品は綺麗事解答としての、「恋仇でも救済したいから自覚的に問題を先延ばしにする」が描かれている感じ。
ラスト一章はマジで結構ホロっと来るんですよ。メインは巧をめぐる文乃と希の人間関係ですが、1巻では言明されてないものの、家康、大吾郎、梅ノ森らのバカ組も、巧と文乃が孤児だったことは知ってるっぽいんだよな(男二人と巧はつき合いが長いのがそこかしこに描写されており、梅ノ森は財力に物を言わせて巧のことを色々調べているのが描写されている)。だから同じく孤児だった希がいなくなった時、鬼のように協力してくれる。「普段バカだけど熱い時は熱い」はカッコいいな。
そういう訳で、居場所探しとかハーレム問題とか、だけど何気ない日常の時間が大切だった、だからそれが失われそうになった時はみんなで立ち上がるとか、そういう00年代テイストの熱くて萌えな部分がてんこ盛りな作品だったと思うのでした。これは2巻も買おう。あとアニメ版とも色々違っていたので、今月末発売の矢吹先生の漫画版も楽しみ。

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