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 今週のジャンプ掲載分の「めだかボックス」のネタバレ感想です。
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 前回の感想で書いた通り、能力、過去、そして人格……と、めだかちゃんを形作っているものがどんどんと剥奪されていくのが最近の展開でした。

 能力じゃないでしょ、過去からの関係性じゃないでしょ、ただ人格の点でわたしとめだかちゃんは友だちなの……という喜界島会計の回が涙腺展開だったすぐ後に、その人格すら剥奪されてしまっためだかちゃん(改)が現れるという西尾維新展開。

 で、前回、人格すら剥奪されたけれど、それを越えるめだかちゃんの核心、生きる理由が記憶の中に残っていた(善吉との出会いのシーン)……という展開だったんですが、今回冒頭で、「サンタを信じていた記憶を思い出しても、今更サンタは信じられない」の理屈で、それさえも一旦転覆。

 なんだけど、そこからさらに怒濤の逆転劇を見せて、善吉自身はめだかちゃんに言ったことなんて覚えていない、だけどその時のめだかちゃんに言うことなら……と今推測して出た言葉が、見事に照合される……という展開で、何か今回は凄いものを描いていた感が。

 人格でもない、人格を規定した大事な記憶のワンシーンでもない、何か、それを越えるものが描かれていた感が。「大事な人に同定される」というアイデンティティを扱った作品では定番の着地を、一歩踏み込んで描いて見せていた感が。

 話は若干変わりますが、人間は多かれ少なかれ互いに洗脳し合っているようなもの……というくじらの語りは、原作者の西尾維新がわりと真剣に考えている事柄なんじゃないかと感じたりしました。

 例えば現在連載中部分の「バクマン。」のように、ひたすら自分の影響力の拡大(ヒット作を出して、大多数に影響を与える立場に着く)を目指す……というステップがあるとして、その次に見えてくる視界として、自分は果たしてそれだけ影響力を持つに足るのか……というものはありそう。

 既にベストセラー作家だからこそ、影響が大きい作品を発表することに対する自己言及的な視点というか。あんまり影響を与えすぎて、洗脳と呼ぶに近いものになってしまったら、それはそれでダメな気がする、と言うような。

 この辺りは、周囲に影響を与え過ぎるめだかちゃんの特性に関して、既に不知火がネガティブなニュアンスで言及してる箇所が「めだかボックス」作中にもあったりします。

 さて、そんな話と関係して、WEB環境を始め、伝達する技術が発達した分、人はお互い影響を受けやすくなってきたんじゃないかという話は、メディア論的な場所でだいぶ前から言われている話でもあります。

 そして、だからこそ、他人からの影響じゃない、私自身の核心、私のあり方を何処に求めるか? というのは、わりと現代人共通のテーマになっているフシがあります。

 今回の一連の「めだかボックス」の話は、その辺りのテーマをジクジクと扱っていた気がします。だからこそ、何故めだかちゃんはめだかちゃんなのか……というのをぐりぐりと容赦なく掘り下げていって、いや、やっぱり能力とか過去の記憶とか、あるいは単純な意味での人格すら越えて、めだかちゃんがめだかちゃんたる核心のようなものはあるでしょ、と持ってきた今回は熱くかつ現代に生きてる人間には考えさせられる部分だった気がします。西尾維新やっぱり凄いなー。

めだかボックス 1 (ジャンプコミックス)
めだかボックス 1 (ジャンプコミックス)

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