先日放映分の第23話「放課後!」の感想です。
凄かった。全話凄かったけど、ここ3話くらい本当凄い。
「最後の放課後」に4人が取った行動が、それぞれこの「けいおん!!」という物語の4人のキャラクターの物語上の役割の比喩になっています。
●唯:終わらないスゴロクを提案
→常に「延々続行エンド」を示し続けたのは唯。
→「放課後ティータイム」に終わりはない(第20話の「いつまでもいつまでも放課後です」など)。
●律:部費が5円だけ残ってる
→5円(ご縁)は残ってる。
→卒業しても放課後ティータイムの縁、絆は残り続ける。
→最初にメンバーを集めたのは律っちゃん。
●澪:トンちゃんにエサをあげたかった。
→今までは他の誰かがやっていたのだけど、自分でやりたい。澪の主役になる、当事者になるという物語とシンクロ。
→澪が人生の主役を自覚した時、外の世界へのリンクが開ける(進路変更の決断)。
→澪がエサをやる決断をして、トンちゃんが水槽(部室の比喩)から外の世界へ顔を出している。
●紬:窓をピカピカにしたかった。
→一期最終回で、「延々続行」のライブを最初に願ったのは紬。
→外の世界へ出ても「輝き」を続行したいという願い(「窓」はエンディングや前回の話をはじめ、「外の世界とのリンク」の比喩)。
→4人が行く大学は最初は紬の志望校。外の世界での4人の未来を輝いたものに指し示した。
凄いな……。
そして最後の放課後の時間に選ばれたのは、4人だけの写真を残すとかではなく、「5人の演奏(ライブ)をカセットテープに残す」。
これも凄い。カセットテープなので、おそらく複製はできない(勿論技術的には可能だけど、それぞれが持ち帰って想い出に浸るためのものではないという表現のためにカセットテープなんだろうと。)エンディングの歌詞通り、甘美な想い出に浸るためのものではない。
チャイムやくしゃみに中断されて、どこまでも既製品(無難な大人ルートの比喩)のようなアルバムにはならない、延々続行ライブの、放課後ティータイムのカセットテープ。
劇中の収録風景で流れた曲は、「ふでペン〜ボールペン〜」という、複製品のボールペンより、ふでペン一発書きがいいよねというライヴ性賛歌の歌。
このカセットテープは、番組のアイキャッチで使われているカセットテープと同じ意味であろうことから、「5人の一回性の高校生活の輝き」を描いた物語としての「けいおん!!」はこれで終わりとも取れる。おそらくこのカセットテープは部室の外には持ち出されないので、唯達は外の世界でライブ延々続行でも、桜高校軽音楽部の話を描いた物語は、終わり(実際原作もそこで終了するし、延々続行の外の世界編は「軽音楽部」というくくりではなくなるので、それはもう「けいおん!!」というタイトルではないとも言えそう)とも言えそう。
外の世界へと輝きを持ったまま抜けていく前向きさ(輝いている窓の外が印象的に使われている。梓が窓の外を見ると、ギー太(=輝きの象徴)を背負った唯がいる……という冒頭など)と、それでも、5人の高校の軽音楽部を綴った物語は一回性であった(「ライブ」を閉じこめた複製できないカセットテープ)という切なさが両方ある、粋なラスト2でありました。

けいおん! (4) (まんがタイムKRコミックス)

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