先日DVD&Blu-rayが発売になった『仮面ライダーW(ダブル) FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ』、映画公開当時劇場に見に行く時間が捻出できないでいたのを、DVDで視聴しましたので感想です。
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 ディケイド、W、オーズと繋がっていると僕が解釈している、「外の世界と街(共同体)」というテーマが今作も色濃かったと思いました。ディケイドは外の世界を旅して回る。Wは街を守る。オーズは、外の世界の旅でトラウマを負った主人公が街にやってくる。

 今作の敵役のテロリスト達は「外の世界」の住人で、ニュアンスとしてはオーズで「映司が紛争地域で遭遇した内戦」に近い。そんな外の世界のリアルで過酷な現実が、「小さい街の共同体」という、『W』という作品で肯定的に描いてきたもの、Wが守ろうとしてきたものを否定にかかる。外の世界はこんなに過酷なんだよ、それなのに、こんな平和な街でヒーローごっこしやがって、と。序盤で為す術もなくテロリスト達にやられていく「街のおまわりさん」達が悲しいです。

 そして、その敵達の主張に対する、僕が感じた今作の解答は二つ。


1. 街でも人は真剣に生きている

 「平和な街でのヒーローごっこなど、外の世界の過酷な現実の前には無力」とでも言うがごとく、今までのガイアメモリが全部使用不能に。敵側は人体実験とか、そういうリアルな過酷の前に生み出された新型のガイアメモリを使って襲来してきます。こんなの普通に考えたら勝てるはずがない。現に、旧型ガイアメモリのWもアクセルも一旦は敗れ去ってしまう。『仮面ライダー』の存在意義が問われます。『仮面ライダー』とか、平和な街でのらくらしてるだけのファッションヒーローだったんじゃないか、と。

 しかし新しく『仮面ライダー』を名乗る敵テロリストに対して、翔太郎は言う、「軽々しく『仮面ライダー』を名乗るな」と。こっちは街のヒーローでも、真剣にやってんだ、と。

 よって、ファッションヒーローと言われようが何だろうが、フィリップが連れ去られてしまって何もできなくなろうが何だろうが(思えばフィリップは過酷な現実側の人間だ)、翔太郎は戦う。一人でも戦う。街と街の人を守るために。

 今までの武装、存在意義、相棒、と全部封じられても、翔太郎がおやっさんが残してくれたロストドライバー片手に仮面ライダージョーカーに変身する所はガチで胸に来る。何がなくても、この精神性においてだけ、翔太郎は仮面ライダーなのだ、という、『ディケイド』夏の映画ラストの「だって仮面ライダーだからな」に通じる理屈になってないヒーローの姿。派手な追加武装も、謎の最強フォームもない、ライダーキックとライダーパンチしか武装がない「ただの仮面ライダー」で孤軍奮闘する翔太郎が熱すぎます。肉弾派テロリストに対してクロスカウンター(実体はただのパンチだ)とか、地味な技術で戦ってたからね。プリズムビッカーが使えれば、一瞬で一掃できるのかもしれない。だけど、それがなくても戦う。だって仮面ライダーだからな!

2.街(共同体)は一人ではない

 敵テロリストさん達はガチの過酷な世界で戦ってきた本物の武闘派ですが、一点、単体の弱肉強食の世界に慣れすぎて、仲間を信頼していなかった。

 メンバーを切り捨て、自分一人に全てのメモリを集める敵ラスボスさんに対して、孤軍奮闘した翔太郎の活躍で、照井はアクセルを取り戻す。このシーンでは、明確に照井が翔太郎を仲間だと言っている。

 照井が「街のおまわりさん」代表で、ライバル役のトリガーの人が「外の世界の武装地域のスナイパー」っぽいのも熱い。普通に考えたら照井が勝てるはずがない。街のおまわりさんがゴルゴ13に勝てるはずがない。けれど、照井は一人で戦っている訳ではない。単独の能力値としてトリガーを越えるだけが能ではない。「共同体」の力とは、そういう類のものなのだから。

 ラストバトル、「メモリの数が違う!(一人にこれだけ集まっているのだから、お前らが勝てるはずがない)」と言い放つラスボスさんの前に、風都タワー(『街』の象徴だ)は壊され、Wも蹴散らされてしまう。今まで「敵よりメモリの数が多い」というアドバンテージで戦っていたかにみえる『W』に対して、やっぱそこが現実のポイントだよね、と突きつけているかのごとく。

 しかし、メモリの数が多いから、一人で強いから『W』は『仮面ライダー』である訳ではない。

 ラスト、最弱の街の住人である所長の「(『仮面ライダー』!)」という祈りから、街の住人達の祈りが伝染して、「風都」という『街』の風が吹き始める。そして『W』の風力発電が起動……という流れが熱すぎました。『AtoZ』という表題はダブルミーニングで、「AtoZ」全てのメモリを自分一人に集めようとしたテロリスト大道克己に対して、こっちの「AtoZ」には、街の住人一人一人に対応する物語があった。ずらっと顔を揃えるTVエピソード版のゲストキャラ達がこの戦いを見守っているのが説得力があります。別にメモリがいっぱいあるから『仮面ライダー』な訳じゃなく、こうした街の人々を守ってきたから『仮面ライダー』なんだ、という熱さ。もう、このシーンはエリザベスとかサンタちゃんとかウォッチャマンまでカッコいいよ。外の世界には過酷な現実があるかもしれないが、それはそれとして、この街でもみんな必死に生きている。エクストリームの真ん中の銀色部分がついに黄金になるギミックとか、「風都タワー」という表面的な象徴が破壊されてもそれが『街』の本質ではない、という部分が表現されていたりと、このシーンはエラく熱かった。ストレートに主題歌をかぶせてきたのも、もしかして『アギト』の映画以来やもしれない。


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 という訳で、エラく熱い映画でした。ここ最近のライダー映画のクオリティはまじ凄い。ディケイドの映画あたりから、燃えっぱなしですよ。

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