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テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)  またまた近年話題のヤマザキマリさんの漫画、『テルマエ・ロマエ』をとりあえず1巻だけ買ってみたので感想です。
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 時空を越えてお風呂職人がうっかり古代ローマから現代日本のお風呂関係の場にやってくるお話。始終ギャグなんですが、背後に作者さんの実力や本気度が感じられて心地よかったです。凄い教養と思考力で描かれてる気がするんですが、ちゃんと笑いと愛で隠してくれてるので娯楽としてスイスイ読めます。コラムを読むとどうも海外在住で描かれているっぽい? ご本人が作品の裏テーマであろう部分を実践されている方だ……。

 お風呂技師としてのルシウスの求道の姿勢からは普通にものつくりの尊さが伺え、現代パートでは文明と積み重なった歴史の偉大さに思いを馳せることができ、公衆浴場の場面では身分や肩書きを越えた人間の本質について考えさせられます(お風呂に入って気持ちいい! という表情を描くのが凄い上手い)。でもそういうのを堅苦しい評論で訴えるのではなくて、こういう漫画でギャグを通して切り取っているのが素晴らしいと思います。これもそのまま作中の大衆浴場のコンセプト。気取っていてもしかたがない、という部分での笑いと、笑えるからこそにじみ出ている文化的な雰囲気。

 アドリアヌス(五賢帝の一人)とか出て来た時点で歴史好きには面白かったんですが、ルシウスとアドリアヌスが真面目にお風呂トークしてる辺りが、やっぱこの作者さんはただ者じゃないなと思いました。裸のつき合いとか、お風呂が気持ちいいとか、そういうのは身分や国境が関係ないよね! という作品の根底に流れてるテーマ的に、やっぱり当時の一番エラい人である皇帝を出すのは必然性があるんだよな……。そして容赦なくホモオチでまとめている辺りが豪腕でした。いや、確かにそうだったらしいけど!

 なんか、母数が多い感想とは少し違うのかもしれないけれど、たいへん知的な印象を感じた作品でした。合間合間に挿入されるコラムなど、歴史ジャンルの文庫を読んでいるかの如く。ギリシャ、ローマ、日本、歴史、文明、そんなキーワードにピンとくる人には、笑いと共に気持ちいい時間を手にすることができる作品だと思ったのでした。

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)
テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

テルマエ・ロマエ II (ビームコミックス)
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