「文法書は一冊で良い」が、それこそ受験勉強での英語の勉強くらいからの個人的なモットー。何冊も買うよりは、感性が合ったものを暗記してしまう方が良い、というスタンスです。そういう意味では、この『フランス文法の入門』はコンパクトな割に一通りの文法規則は網羅してるし、例文も豊富だし、CDまで付いているしで、十分合格点だと思います。というか、個人的に大学院入試の時に使っていたものなので、再読した方が学習上効率が良いというのが大きいのですが(大学院入試はフランス語も課されましたが、受かっております)。
ただ、いわゆる規範文法の立場で書かれている文法書である点には注意。
規範文法というのは、簡単に言えば日本の中高の英語教育で教えているような文法のことです。
これ、初めて聞く人は驚く人も多いのですが、「文法」というのは実は一つじゃありませんので。正確には「文法理論」ということになりますが、文法理論は星の数ほどあり、日々最先端の研究で追求され続け、新しく更新されています。そんな中のたまたま一つが、日本の中高の英語教育で教えている「規範文法」であるだけ。それをたった一つの唯一の「文法」であるかのように権威付けして教えてしまっているのが、残念ながら今の日本の英語教育の限界の一つであると言わざるを得ません。
この「規範文法」、文法学習を通した論理トレーニングにはある程度なるけど、実際に喋れるようにはならないと専門家の間では有名です。日本人が英語ができないのには母語である日本語の特性もある程度ありますが(例えば少し遠目の方言くらいの関係のドイツ語と英語で、ドイツ語話者が英語を学習するようにはいかない)、それ以上に学校で教えている「文法」が化石化しているという側面が大きいのは否めません。
代案は、僕的には喋るだけだったら(言語学専攻だったので、外国語学習理論も当然ある程度やってます)、今のところ「認知意味論をベースにした文法学習+多読&喋りまくる(いわゆる大量のインプット&大量のアウトプット)」です。中高で英語全然ダメだった人が、文法を規範文法から認知意味論ベースのものに変えただけでみるみるできるようになった事例を結構知ってますので(僕もその一人かもしれない)、もうちょっと、これからどんどん国際対応していかないと日本は沈む訳ですので、公教育での英語学習もうまくアップデートしていけたらいいんだけどなと思っているのでした。今のままだと、小学校で英語学習導入して「慣れ」は身に付いても、その子が中学校に入学して規範文法の洗礼を受けたら、瞬く間に英語嫌いになったりすると思うので。
話が飛びましたが、個人的にはそういう認知意味論ベース的な文法に変換しながらこのフランス語文法書も再学習しております。そもそも人間言語の普遍性を追求するにあたって生成文法(これが、理念は違うのですが、結果的に形式重視で規範文法に分析手法は近め)の代案として出て来たのが認知意味論なので、英語←→フランス語の変換はかなり効く感じです(それくらい人間の認知機能の普遍性から言語を捉えていくスタイル)。
だいぶ前に介護でリタイヤしましたが、研究活動再開しますとブログに書いて、実際色々再開していたのですが、今年中にはフランス語の原文でレヴィ=ストロースの『野生の思考』が読めたらいいなと思っています。友人のヤコブソンの方が言語研究者としては馴染み深い感じですが、僕の研究の焦点的に、ちょっとレヴィ=ストロース読む必要が出て来たので。
ではでは、英語学習、外国語学習はこれからほとんどの日本人が本気で考え直さないといけなくなってくると思うので、折に触れて何か書いていこうかと思います。

フランス文法の入門

野生の思考