NHK連続TV小説「おひさま」今週分までの感想です。
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 前の感想で、育子とタエさんが、対照されている登場人物なんだろうという話を書きました。自分の自由意志の決断であの時上京した育子と、自分の意志というよりは全てを川原さんの決断に委ねてあの時満州に渡ったタエさん。作中時代的に全体主義的、強権的な思想がつきまとう戦争前後を扱っているだけに、この「自由意志に基づいた決断」については作品としても重要なんだろう、と。

 結局、育子もタエさんも、安曇野を離れた後、一度バッドエンドを経験してしまう。育子は東京で東京大空襲に遭遇し、最中に恋した人を失い、タエさんは満州で死亡してしまう。物語は「残った者はどう生きればいいのか」という部分に突入していくと思われますが、それは、今度は一度は一種の「安曇野から離れて夢を追う」という決断を下し、でもダメだった上に愛した人を失った育子と川原さんのその後の物語になりそうです。構成的に、育子のその後の生き方と、川原さんのその後の生き方は、ある種のそれぞれの別解として分けていくように感じます。また、タイミング的に上手いですね。ちょうど、もう一度上京した育子の演説がラジオから流れてきたタイミングで、もう一人の夢追い人だった川原さんが帰ってきてるエピソードが描かれるなんて。そこには、一度目のバッドエンドから立ち直り新しい物語を始めている育子と、「戦争はなかったことになったのか?」とバッドエンドの痛みを抱え続けることを尊重する川原さんとの対比があります。大きな悲しいことがあった時、新しい一歩を踏み出していくべきなのか、悲しみに寄り添い続けるべきなのか、というすごくラディカルな部分を描いているように思います。川原さんが春樹兄さんの遺影をずっと眺めていた……というくだりは、川原さんが喪失や悲しみに寄り添い続けている、という描写に思えます。一方で、育子は生き残って何とか新しいことを始める気になってきた、茂樹兄さんの方に縁が深い。ここも対照的。

 あと一ヶ月あまりの放映期間ですが、悲しいことがあったけど頑張ろう、ポジティブ、ということだけに焦点をあてない、よい作品だと思っています。

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