ちょくちょく書いていかないと今月中(今年中)に終わらなさそうなので、変動が少ないであろう小説部門から。毎年やってる(年によってはやってない年もありますが)その年に触れたものの主観的ベスト記事です。
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 以下、ランゲージダイアリー的2011年小説ベスト5。


第五位:田口一『この中に1人、妹がいる!』

この中に1人、妹がいる! (MF文庫J)
この中に1人、妹がいる! (MF文庫J)

 個人的な妹萌え研究の一環として読んでみた作品。個人的にもニーチェの妹萌えとか宮沢賢治の妹萌えとか、わりと真面目なテキストも一部で書いてるんだけど、日本の妹萌えは複雑化し過ぎてわけ分からなくなってる感がにじみ出ていて象徴的に面白かった一冊。

 イヌイットには雪の語彙が多く、日本には雨の語彙が多い、というように、概念の複雑化はそのジャンルに精通している証でもあるんですが、日本は妹に関する文脈が細分化し過ぎてわけ分からなくなっています。外国の人に説明する自信がない。


第四位:東浩紀『パラリリカル・ネイションズ』

 雑誌「papyrus (パピルス)」掲載の、まだ単行本化はされていない作品。

 飛鳥時代の日本人が魔導的に詩を使ってバトル、萌え美少女もあるよ! みたいな作品。

 一応SFで、主人公は現代人なので、現代日本と昔の日本がどう接続されるのか、みたいなのも楽しい作品。今年は歴史や日本の起源について考えることが多かったので、そういう点でもエンタメ方面からこれは今年のベストの中に入れておきたい感じ。


第三位:佐島勤『魔法科高校の劣等生』

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)
魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

 話題のWEB小説、リファインしつつ本年刊行開始。

 とにかく面白い。個人的には久々にハルヒ級の感触。

 なんか、自分のデバイスはこーして、自分なら魔法はこれ系だろう、そして深雪さんとお近づきになりたい(遠目で眺めていたいと翻訳する)、とか思いながら読んでます。これはきっと面白いということで、何やら幼少の頃の読書体験を思い出させてくれる作品です。消費ではなく空想の中に浸ってその時間を満喫し尽くす、という至福の読書の醍醐味を思い出させてくれたのが、何故だかこれだったのでした。


第二位:谷川流『涼宮ハルヒの驚愕』

涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)

 五年ぶりくらいに今年出されたハルヒシリーズの新刊。期待を裏切らない面白さでした。もう時代的な作品になっているので、同じ時代に生まれた者として物語を共有させてほしい。佐々木さんのあり方が良かったな……。

 次々と起こる驚愕的な出来事も、過去に由来する何やら悲劇を予感させる未来も、現実を思い起こします。だけど佐々木さんは言う、勉強(学問)をする、と。

 反転で超絶ネタバレすると、「未来軸のハルヒが出てくるんだけど」あのルートに繋がってる未来のために、今何ができるのかっていう部分がすごい切り取られていたと思う。もう、面白いことがないとボヤきながら現実に諦観してるだけの物語冒頭とはみんな違うのです。ハッピーエンドを決めるために、そんなに凄いこともしないんだけど、出来ることをコツコツやっていくキョンがなんかイイと思うのでした。


第一位:栗山緑『おジャ魔女どれみ16』

おジャ魔女どれみ16 (講談社ラノベ文庫)
おジャ魔女どれみ16 (講談社ラノベ文庫)

 伝説のアニメ『おジャ魔女どれみ』の、どれみ達が16歳になったアフターストーリーにして新章。スタッフは当時作ってた人たち。

 馬越嘉彦が描く16歳おんぷちゃんにノックアウトされ、栗山さんの変わらぬおジャ魔女力高いストーリーに胸トキめく。5ページくらい読んだだけで泣いたよ。

 刊行されたばかりなのでネタバレ躊躇われるんですが、さわりだけ書いてみると、不景気の中、どれみ家の家計は火の車、お父さんも渓流釣りの記事だけじゃなく海釣りの記事も書かないとやっていけなくなっている。あいこ家の物語にも一つ区切りがつき、おんぷちゃん周辺も訳ありになっている。悲しい話があり、がっかり感が漂い、悩みも問題も尽きない。

 そんな中、運命に導かれるようにまた六人が集まり始める。一度は別れを告げた(というかある意味否定した)魔法をもう一度だけ、少しだけまた手にしながら……。

 嬉しいことに「続く」です。みんなで応援して、是非続きを作ってもらおう。

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 今年はそこそこ読めた方でした。やっぱり心に潤いを保ちながら生活していけるのが理想。