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 去年大変ハマったアニメ、『輪るピングドラム(公式サイト)』最終回の感想をまだ書いてなかったので、感想&考察のようなものを書いておきます。
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 まず、「こどもブロイラー」が存在する現行世界には、批判的な視点が少なくとも作中にある作品(プリンセス・オブ・ザ・クリスタルに変身する時の楽曲「ROCK OVER JAPAN」をはじめ、挿入歌から主題歌まで、歌詞を読むと革命歌が多いです)。選ばれた子どもと選ばれなかった子どもが存在し、選ばれた子どもが弱肉強食の中で勝ち残っていき、選ばれなかった子どもはこどもブロイラーで淘汰されてしまう。すごい象徴的、記号的、比喩的に描いてますが、現実のもろもろの理不尽に物申してるのかな、と思った視聴者は多かったのではと思います。

 で、キー台詞「生存戦略」にある通り、どちらかというと選ばれなかった側の子ども達が、弱肉強食の世界で何とか生存をはかっていく、というお話。

 選ばれなかった子どもも生きていけるためには「運命の乗り換え」が必要で、作中のキーポイントで、何回かこの「運命の乗り換え」が行われます。

 幼少時の時籠ゆりは、こどもブロイラーでこそないものの、理不尽な大人(父)のために淘汰されそうになっていた。そんなゆりを、荻野目桃果はノートに記された「呪文」を使い、運命を乗り換えて救済します。自分の身は炎に焼かれながら。

 幼少時の陽毬は、やはり選ばれなかった側の人間で、こどもブロイラーに送られて淘汰される所だった。だけど、晶馬が走っていって助けた。自分の身を削っても、あなたは大事な存在だと選んであげた。選んでくれた。

 最終回のキーシーンも、幼少時の冠葉と晶馬、一個のリンゴが与えられたのは冠馬、やはり、晶馬が選ばれない側だった。現行世界では選ばれた側が弱肉強食を生き残り、選ばれなかった側は淘汰されるしかないんだ……というところで、冠葉が「一個のリンゴを分け合う」という別解で、選ばれなかった側の晶馬を救済する……という場面。

 細かいシーンではもっとありますが、共通して、この選ばれなかった側を救済する「運命を乗り換える」というシーンで描かれるのは、たとえ自分の身を削っても「分け合う」ということ。だから、最終回で明かされる桃果のノートに記された「呪文」は『運命の果実を一緒に食べよう』だった。それこそ「運命」としか言いようがない理不尽で、選ばれた子どもと選ばれなかった子どもがいる。現実でも、戦争中の国に生まれる子どももいれば、豊かな国のお金持ちの家庭に生まれる子どももいる。そんな状況で、選ばれなかった側の子どもは無価値なのか、と言えば、そんなことはない、と言ってあげたい、というようなそんな作品だと思いました。

 最終的にこれらの要素が収斂していくのはラストシーンで、最終回の「運命の乗り換え」が行われた後の世界では、陽毬がすれ違う何気ない兄弟が、実は乗り換え前の世界ではあんなにも大切だった冠葉と晶馬だった……というのが描かれます。これは、乗り換え前の世界で自分に関係がある主用登場人物以外の関係ない他人は記号で描かれていたのや、こどもブロイラーのシーンでたくさんの選ばれなかった子ども達が記号で描かれていたのと、正反対の表現。淘汰されていくかもしれないたくさんのあなたにとって無関係かもしれない何気ない人が、本当は何か縁があったりする、大事な人なのかもしれないよ。だとしたら、ちょっと分け合ってみてもいいんじゃないか、そういうシーンに思いました。

 で、知ってる人は知ってる通り、こういう考え方の体系は、ループもの作品がどうこうというよりも仏教方面の考え方かと思います。輪廻とか、一切衆生悉有仏性の考え方は聞いたこともある人も多いかと思います。

 ずっと僕の感想ではキリスト教や仏教の体系がこの作品のバックボーンに編み込まれているみたいな話を書いてましたが、荻野目苹果が「リンゴ」、キリスト教関係の象徴アイテムだよなというのは良いとして、実は荻野目桃果も、「桃」は仏教関係の象徴アイテムだったりします。深く踏み込むともっと考えられてるのかもしれませんが、そういう体系の中で、一つは「選ばれなかった側(=あなたと関係ないかもしれない側)」とも分け合いながら生きていける世界を模索したい、そういう主題の作品だったのでは、などと思って最終回を視聴し終えたのでした。

 この作品に関しては、萌えやら燃え方面よりも、だいぶ真面目に正座して視聴する的な方向で視聴していた自分がいたかな。萌えもあった、というかたぶんプリンセスのFigmaとか買うけど(え)。

輪るピングドラム 1(期間限定版) [Blu-ray]
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figma 輪るピングドラム プリンセス・オブ・ザ・クリスタル
figma 輪るピングドラム プリンセス・オブ・ザ・クリスタル

→前回:輪るピングドラム/第15話「世界を救う者」までの所感へ
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