村上隆がカタールからのニコ生で京都アニメーションがいかような(高いレベルの)モチベーションであの凄いアニメを作ってるのか謎だ、みたいなことを言ってる箇所がありましたが、本当さすが京都アニメーションと思いました。努力と才能込みでそれでも専門に特化してさらに10年とか身につけるのにかかる技術・芸術を、総合力で結集させているのだろうから、凄いもの観させて貰ってると思います。
『涼宮ハルヒの憂鬱』のキョンとハルヒの出会いのシーンで使われた、「君との出会いが日常世界に彩をもたらした」的演出(灰色の画面がカラーになるヤツ)が、オープニングなどに見られます。
これは、『CLANNAD』の冒頭の渚と朋也の出会いのシーンでも使われていた演出だったりしますが、京都アニメーションが手掛けてる一連のアニメ作品にはある程度テーマ的な軸があって、言うなれば「ともすれば灰色で無価値感を感じてしまう日常世界に、どうやって意味を見出していけるのか」というようなものです。現代人はフとした瞬間に無価値感を感じてしまいがちなので、そこを乗り越えていきたいなというような感じです。
このテーマがいったん結実したと思うのが『けいおん!!』で、何気ない日常にも意味を見出すことができるというのを凄い文脈で描いて見せた(詳しくは『けいおん!(!!)』感想記事を参照。)。この古典部シリーズ『氷菓』は、まぎれもなくそこから繋がる「次」の京都アニメーション作品だと思いました(『日常』もこの手の文脈の流れはあったと思ってたんですが、時期的にテキストには起こせなかった……)。
米澤穂信さんが原作ですが、彼が描く「日常の謎」という題材は、そう言われてみれば京都アニメーションが扱っている文脈にドンピシャだと思いました。千反田さんのキー台詞、「私、気になります」は、まったくもって「日常世界に"気になる"意味を発見した」瞬間を切り取ってる箇所かと思います。それは、『けいおん!(!!)』の唯がになっていた「世界の何気ないものに意味を見出す」「"輝き"の続行は可能」などと同種の、京都アニメーション作品が描いている主題が顕現している箇所。
『けいおん!(!!)』はその日常の"輝き"や"意味"を守るために、ある種不自由でも共同体と再契約していくことは必要だ、という風に進んでいったと思うのですが(だから「軽音楽部」という共同体が卒業後も守られるかが最後の主題になる)、今回は「古典部」という共同体でその辺りをどう描いていくのか楽しみ。
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氷菓 (角川文庫)
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