僕は友達が少ない 1 (MFコミックス アライブシリーズ)
アニメもタイムリー放映は終わっていて若干今更感が漂いつつ、『僕は友達が少ない』、通称「はがない」第1巻の感想です。読んだのは平坂読さんの原作小説の方ではなく、いたちさんのコミックス版の方です。
「友だちがいない人間=ダメな人間」というレッテル貼りの社会のアーキテクチャふぁっきん! という意外とラディカルなお話でした。基本コメディなんで笑えつつ、考え始めるとけっこう深い。アニメ化するような作品にはやっぱり何らかの貫通力があります。
感じたのはゼロ年代からテン年代の過渡期に、もう一度90年代エヴァの問題意識を持ち込んだら、みたいなこと。他者と関わりたくない、怖い、でも関わりたい、という例の問題です。
小鷹は父親が海外行きで家族の紐帯は切れ気味で外見へのレッテル貼りで校内でも浮き気味、夜空は自身の本質として「和気藹々とした友だちのクラスメイト」みたいな価値観に懐疑心を抱いてしまう。星奈は男はいくらでも寄ってくるけど、気兼ねない同性の友だちがいない。いずれも、社会が「こうあるべき」と要求してくる理想的な人間関係からあぶれてしまっている。
そんな連中で隣人部を作るという謎共同体もの(僕が命名)です。そして、表面的な仲良しクラスメイトも、友情! 絆! みたいな親友もいない彼・彼女らの関係の方が、胡散臭い友情礼賛社会の中の人間関係よりも、何らかの真実性を秘めてるんじゃないの、という批評性まで感じさせる物語舞台です。
これは面白かった。上のように書いてはみたけど、隣人部はしょせん「友だち」とは言えないような連中の便宜的共同体なのです。その辺りは、SOS団や軽音楽部が作中解としての拠り所になっていく『ハルヒ』や『けいおん!(!!)』とまだちょっと違う感じ。あくまで隣人部は虚構的。でも、それでいいや感でお話が進んでいく。
どう着地していくのかは分からないですが、現時点で、友だちがいないならいないなりに、リア充になれないならなれないなりに生きていけ、という流れは熱い。友だちインフレを招いているFacebook社に送りつけて、「I have few friends(作品の副題)」と物申したくなる勢いです。
僕の脳内設定的に、「世界中が友だちグローバルエリート(きりっ)VS友だちいないよ、オタクだよ悪いかよ、日本の街の片隅」の対立項です。現実で勝てるのかはともかく、物語としては俄然後者の視点が面白い。Facebook内に「僕は友達が少ない」ページを作ってジャパニーズロケンローを世界に食らわしたくなる衝動に駆られるくらいには、面白い作品でした。これ、続きもチェックしよう……。
僕は友達が少ない (MF文庫J)
僕は友達が少ない 柏崎星奈 (1/8スケール PVC塗装済み完成品)
→『僕は友達が少ない』2巻の感想へ