ジャンプS.Q.で連載中の『るろうに剣心キネマ版』第五幕「赤べこにて」の感想です。ネタバレ注意です。
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 過去を引きずってる側の登場人物と未来志向側の登場人物がいて、弥彦はどちらかというと未来側じゃないかと前回は書いたのですが、今話では、弥彦も弥彦なりに幕末〜明治の動乱期にかけて悲しいことがあり、「夢(=侍になる)」というのを封印しているという展開に。弥彦も弥彦なりに、新しい時代の中で過去の体験に根差した自身の実存を引きずってる組だった。

 過去にべっこう屋だったけど、今は赤べこになって文明開化産業の牛鍋屋をやってる「赤べこ」が作中で過去と未来の交差点的な比喩を持ってるのは明らかだと思ってるのですが、今話でも赤べこで弥彦と燕が話すことで、悲しい過去と、それでも未来に進んで行ってしまう文明とが意識されるようなシチェーションになっています。

 もう、文明開化方面の流れは止まらなくて、少し歴史を知ってる人なら、その先にあるのは戦争だったりするのがまた切ないのですが、そんな時代の流れの中で、「侍」なんていうOldFashioned(昔気質な)な夢を弥彦は引きずっている。もうそんなの、時代遅れなのに。

 原典準拠だと、剣心が本当の侍の姿を見せて、弥彦はその背中を追いかけはじめる、という形で、古きを継承して未来に向かう的に収斂していきそう。

 しかしダイジェスト風リビルドになってる今回のキネマ版ですが、やっぱり『剣心』は良い作品だなと思って読んでおります。この年になって読むとこの年なりの発見があります。過ちなり悲しいことなりがあった過去は手放して先に進もうという正論は分かるのだけど、それはそうと進んでいく時代に乗れずに、なんか社会とはズレたまま過去に拘ってうだうだと、そういう心情がとても分かる。で、そんな登場人物ばっかり明治期の東京で交差する、とか、エンタメ作品ですが、どこかでしみじみと情緒深い作品だと思っております。

るろうに剣心─特筆版─ 上巻 (ジャンプコミックス)
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るろうに剣心 全14巻セット (集英社文庫―コミック版)
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→前回:るろうに剣心キネマ版第四幕「正義の行方(後編)」の感想へ
→次回:るろうに剣心キネマ版第六幕「明治の光」の感想へ
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