公開初日に観てきた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の感想です。
 ネタバレで書いてますので、まだ観てないという方は注意です。
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 シンジ君、『破』のラストで、世界とか自分とかいいから、綾波だけは助ける、と行動した結果、本当に世界は滅びちゃったし、自分は14年分取り残されてしまった、みたいなところから始まるお話。

 14年という劇中時間が、だいたいTVシリーズのエヴァをタイムリーに体験していた頃から、現在『Q』が公開されるまでのリアル時間とシンクロすることもあり、何やらしみじみしてしまいました。14年分止まったままで、相変わらず自閉的というか引きこもり的というか、そういう自分の自意識の問題に悩み続けているシンジ君に感情移入するか、14年分精神的には時間が進んでいて、すっかり大人になってしまったアスカに感情移入するかは分かれそう。

 僕はアスカ側の視点で観てたかな。「バカシンジ」に代わって「ガキシンジ」がキー台詞になっていたけど、大人になった目線から、まだ90年代の自意識の問題がどうこう言ってるのか、みたいな感覚は感じられました。あれから時は経って、もう現実は厳しいんだから、シャンとして他にやることちゃんとやらないと、的な(劇中でも14年で世界は大変なことになり、大人になった昔の面々がそこで戦っている)。

 シンジ君。回りが14年分大人になっちゃったわ、助けたと思って再会した気がした綾波は違う存在だったわ、世界滅びたのは自分のせいだわと、散々な状態な所に、カヲル君だけは側にいる、みたいな状況になるんですが、そういう厳しい状況でカヲル君と近づいていくのはやっぱりどこか逃避的に僕は感じましたかね。もう使い古された感もある評論界隈の言葉も使えば、セカイ系的というか。僕とカヲル君で、世界をやり直す、とか、もうできる訳ないだろ感が滲み出ているというか。人類補完計画もどうかという感じですが、二人だけで世界をどうこう、というのも、今の感覚だともうちょっとなぁ、と感じてしまう部分で。

 設定的な話とか、細かい所は相変わらずよく分からないんですが、フォースインパクトを起こして世界をやり直そうという方向に行ったシンジ君が、激しく上手くいかなくて、やっぱりそう都合よい子供的発想が通じるフェーズじゃないんだ。で、大人になったアスカにシャンと自分で立て、と言われるまでの話だと思いました。

 『破』で「そうやっていじけていたって、何も楽しいことないよ」と言っていた真希波は自然とアスカ側(大人側・NOT90年代側)(二人がバディ状態になってる経緯を知りたいw)だし、アスカ本人も眼帯とかしてるしなんかツライことがあった感じなんだけど、あんたには関係ないこと、と言う。この辺りは、大人なんだからツライこととかあるの(あったの)当たり前だ、というようなパートに感じましたね。それでイチイチ閉じこもって落ち込んでもいられない。それが大人。

 ラストは旧劇場版のラストに似てると思ったのですが、あの時シンジとアスカしかいない、ある意味閉じた感じの世界で終わったのに対して、今回は大人になってるアスカが、シンジ君にハッパかけて引きずっていくのね。歩け、と。後をついていく別綾波も、オリジナルじゃないなりならないなりに、何かをつかみかけてる感じもして、今回はあんまり表面的なほど絶望的な雰囲気じゃない。

 レイニー止め(『マリア様がみてる』で「レイニーブルー」から「パラソルをさして」まで空いた時の現象の呼称)ならぬQ止め状態なんですが、これ、最終章の四作目では、シンジ君ちゃんと立ち上がってくれるのかのう。だとしたら熱いのう。

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 ちなみにパンフレットはお勧めです(僕が買ったのは豪華版の方)。緒方さん、林原閣下をはじめ、ちょっとTwitterで軽くみたいなのとは別レベルの素晴らしいインタビュー記事が掲載。大事に読もうと思えるテキストでした。

 個人体験として、世情的にも、あの頃から年をとった個人としての自分としても、変わったことと変わらないことと、意識される劇場体験でした。世の中色々ありますが、こうして緒方さん声のシンジ君に林原閣下の綾波、そして新しい風も入りつつ、作品が新しく生まれつつ、かつ続いてる感がありつつ、というのは良いですね。『破』の時も思ったけれど、次の四作目が公開されるまで、なんやかやと生き延びたい。そう思える映画でした。とりあえず観た友人たちと語りたいw。そう思える広い母数での共有体験としての作品も、今やありがたい感じです。

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