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キネマ版の最終戦と思われる剣心VS鵜堂刃衛を前に、セミファイナル戦三戦が描かれた感じでした。
・弥彦VS武田観柳
「竹刀VS現金がつまったバッグ」はギャグのノリですが、昔ながらの「剣」という価値観VS文明開化から資本主義隆盛への流れの中での「金」という価値観、という意味では分かりやすかったです。
この時点では、弥彦も特に剣術を磨いている訳ではない、というのが良いです。身体能力、バトル能力的には、弥彦も観柳もこの時点ではほとんど普通の人レベル。ただ、精神性の面で大事な人を守りたいという弥彦の「剣」とたくさん支配したいという観柳の「金」の価値観が戦い、弥彦が勝ったという展開。「この瞳にとまる人を剣一本でも守りたい」という、原作全二十八巻分を貫いていたものを、弥彦を通してやってくれたのでもうキネマ版満足ですよ。
・左之助VS戌亥番神
二重の極みを両手で一か所に集中させる「連ね撃ち」なるキネマ版オリジナル技が登場。こういう流れを見ると、双龍閃(相龍閃)はもうキネマ版で出てるので、刃衛戦が何で決着するのか楽しみです。何か新しい技なのか、原作では「生き残る意志」がキーだったやっぱり天翔龍閃なのか。
戦い後の、悪一文字をかかげる左之助の語りも良い感じ。価値観が転覆するような時代だからこそ、一辺倒の正義だけではなく、悪を掲げてこそできることがあるというのはカッコいい。善悪二元論じゃないんだという話は、これまた原作の頃からよく書かれていたことです。
・斉藤VS外印
おそらくは原作の戦い続けるために戦う場所を求め続けた蒼紫のifとしての、「戦うことから降りた外印VS幕末に戦って負けた斉藤」という一戦。「負け犬」の呼称が最低限戦った証だと、ポジティブっぽくなるというのがカッコいい。
その他、このどこにも勝者がいない戦いという全体の雰囲気が好き。時代の変化の中、一辺倒の勝ち組ポジティブ万歳みたいな人はいなくて(どこかにいたのかもはしれないけれど)、みなダメージを負いながら、自分なりの信念のもとに、無謬には新しい時代に乗れないかもしれないけれど、自分なりの戦いを続けていく感。今の時期にキネマ版はやってくれて本当僕は嬉しかったですよ。
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三戦とも、決めコマで和月墨絵(『武装錬金』のカズキVS蝶野の最終戦などで使われていた、和月先生の例のあれ)が炸裂してるのも含め、堪能いたしました。

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