ちきゅう観測隊! (講談社コミックス)
ちきゅう観測隊! (講談社コミックス)

 最近の世情的には四月からのアニメ化が決まっている『波打際のむろみさん(アニメ公式サイト)』の原作漫画描いてる人なる名島啓二先生。

 2009年頃から、この作者さんただ者じゃないわ的に、今に比してひっそりと盛り上がっていた僕らとしては、最近の躍進は嬉し寂しな感じです。図鑑に言及する巻末コメントに盛り上がっていた、ゼロ年代の黄昏の頃の思い出!

 そんな名島先生の、むろみさん以前に描いていたという、ファンの間では有名だった伝説の作品が、今回単行本化したというのが本作です。たいへん堪能させて頂きました。以下、ネタバレ注意で感想記事です。
 ◇◇◇

●謎エロス

 『聖ピスタチオ学園』などでも感じられた、名島先生が描く謎エロス。むろみさんではだいぶ封印されていた感がある(女性キャラほとんど人魚だし)この謎エロスが、『ちきゅう観測隊!』では名島先生のパトスの源流として沈殿してる感があります。フレミィはロボなんだけど、なんかエロい。エロくないんだけどエロい。

 おそらく、思考が地球とか宇宙とか、そういう規模で展開されているであろう名島先生からサービスシーンが提供されると、うっかり種のリビドーに訴えかける表現が生まれてしまうのだろうかとか勝手に思ってます。


 脱ぎ過ぎ!! それじゃ違う意味でリスク高まってるじゃないか!!


 時代の先に進み過ぎていて苦悩するタイプです(え)。


●ちょい深い話

 むろみさんも、ギャグ、コメディ、ユーモアとかそういうものに乗せながら、かなり道徳とか哲学とか、そういう人が生きていく上でのコアをえぐってくる話がけっこうあると思ってますが、今作にもそのコアはある感じです。

 ベガとフレミィが身体を機械化して永遠の命を求めた存在と出会う話と、(おそらく)戦争で滅亡してしまった先進文明(があった)星を訪れる話などは、普通にSF(Speculative Fiction)として良い感じ。

 ラストのようやっとたどり着いた地球は既に地球人の文明に覆われていたというオチと、そこに二人で溶け込んでみて観測を続けよう、というシーンも好き。境界(ボーダー)を気にしないベガ(人間)と、おそらくはもう少しシニカルに差別とかある可能性を考慮するフシのあるフレミィ(ロボット)。それでも、それまでの二人の境界無効化的なハートフルコメディな時間が、希望を捨てずに異種の世界に飛び込んでみよう、と思えるバッグボーンになる構成にちゃんとなってると思います。

 どこかで、『波打際のむろみさん』にも繋がっていく感。続きの話には言及しながらもボカしてますが、これ、むろみさんにもベガとフレミィ出てきて欲しいよ。『聖ピスタチオ学園』のキャラクターは既に登場してるので、領域横断的な名島先生ワールドの続きとして、ベガとフレミィの続きの話も読んでみたい感じ。


●フレミィレポート

 制作裏話的な「フレミィレポート」のコーナーも熱いです。おそらくは代原作家的に九州から作品発表しはじめた、みたいな若かりし頃の初期のパトスや苦悩、揺れ、愛が詰まっている作品。始めた時から八年以上の時を経て、単行本化という形に結実とか熱いです。ラストの「大願成就」の墨絵風一筆描きが力強い。尋常じゃなく大変なのだろうと思いますが、こうして面白い漫画をコツコツ作り続けるっていうのはカッコいい。

→名島先生の他の作品

波打際のむろみさん(8) (講談社コミックス)
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聖☆ピスタチオ学園(1) (少年マガジンコミックス)
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