ジャンプS.Q.で連載中の『るろうに剣心キネマ版』第十幕(最終回)の感想です。ネタバレ注意です。
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 キネマ版劇中に沈殿していた、変わっていく時代に、剣心自身が乗り切れない感。瓦斯灯(ガスライト)が、剣道が、赤べこが、そうやって変わりながら進んでいく文明が、きっと尊いはず……、なのだけど、劇中で剣心自身が述懐していたのは、時代を切り開いてみたもののそこに「自分の居場所はなかった」。

 そういう物語の中、最終回に薫の口から語られるのは、時代を変えても、刀を(逆刃刀に)変えても、人(剣心)が変わらなければ意味がないのだ、ということ。キネマ版は薫がエラく大人な女性のキャラクター造形になってることもあり、何やら年上の愛する人から諭された、みたいな雰囲気です。

 結果、劇中で、維新後の剣心の居場所としてシーソーゲームしていた、


過去:刃衛に象徴、血だまり
未来:薫に象徴、維新後に出会った新しい人間関係(最後の絵の神谷道場の面々。例えば剣道を始めた弥彦とか)


 の中、剣心は未来側へ。絵的にも血だまりの上に立ってる刃衛か、寄り添う薫の側かというコマになっていて上手い。

 ただ、フィナーレの直前が、刃衛ほど最右翼じゃないけど過去側の斉藤との会話になっていて、進んでいく文明と共に歩む未来明るいよ最高みたいなお話ではなく、あくまでどちらが正しいとは言い難い中、例えば灯燈(とうろう)から瓦斯灯(ガスライト)に、刀からお金に、進みゆく文明の中、明治期の東京で交差した実存劇みたいな情趣で締められていたと思います。何かと古いことと新しいことに関して交差点にあるかのような現実の世相にもマッチしていた感じで、今のこの一年余りに連載してくれて嬉しかった作品。

 第六幕「明治の光」(感想)がもの凄く良かったので、キネマ版も充実した漫画体験であったとしみじみと言えます。和月先生お疲れ様でした。

●漫画語りWEBメディア「マンガタリ」様に書かせて頂いた僕の『るろうに剣心』記事はこちら↓

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