週刊少年ジャンプ連載分の「黒子のバスケ」229Q「行ってきます」の感想です。
 ネタバレ注意です。
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 現在編決勝戦は、個人能力による勝利絶対主義最右翼の赤司君に、チームの連帯を重視し、敗北者(淘汰された側)の意義も汲みながら戦う誠凛高校が挑む、という対照での戦いなので、仕込みとして意義がある一話だと思いました。誠凛高校の脇役的キャラクター達やその家族にまで一旦スポットがあたることで、個人能力絶対主義の赤司君とは違う、というのが浮き彫りになる感じに。僕など存在を忘れていた犬まで出てきたのはツボでしたよ。ベンチの人や周囲の人々、犬まで一緒に戦うよ!

 そして、敗北者側の代表たる感じで、氷室からも火神にエールが。氷室は「キセキの世代」にはなれなかった人間の代表として描かれていた感じだからなぁ。やっぱり、そういう敗北者氷室が、また戦おうと言い(氷室もバスケを続けるつもり)勝った側の火神にエールを贈るというのが、敗北者は勝者側とはパスがなく(黒子だけがそれを受け取った)バスケもやめてしまったという過去編の帝光(というか赤司君)VS荻原シゲヒロとは違ってる感じ。

 積み重なった回想をバッグに、赤司君に今夜気持ちをぶつけるというラストの黒子のシーンは分かる感じ。あるいは、過去編のあの時点で口でしっかり反論すれば良かっただけの話にも一見思える。が、長い時間をかけて構築したもの全てをぶつけないと伝わらないことがある、というのも分かる。Twitterで思いつきインスタント反論するのと、五年間己を賭して制作した映画で伝えるのとでは、中身のメッセージとしては同じだったとしても宿ってる重力のようなものの格が異なる、というような話。そういう意味で、中三の全中での破綻から、二年近くかけて伝えるにたるものを構築した黒子の姿勢は、大変誠実に感じるのでした。上手い事言おうとすれば、長い時間かかった黒子から赤司君へのパスの物語なんだよ、『黒子のバスケ』は!

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