アニメ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ(公式サイト)』、第2話〜第10話(最終回)までの感想です。
 ネタバレ注意です。
 また、原典作品たるゲーム版『Fate/stay night』についても結末までのネタバレを記事中に含みますので注意です。
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 奥にあるのは原典『Fate/stay night』の凛ルート、Unlimited Blade Worksの「いくぞ英雄王。武器の貯蔵は充分か」あたりのテーマで、つまりは原典VSパロディ。全ての物語の原典たるギルガメッシュに、偽物、模造の投影魔術しか持たない衛宮士郎が向かって行くという構図を通して、正統者じゃなくとも、パロディ者なりに到達できる真実性がある、というのを描いていたのがあのルートだと思います。

 で、この『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』という作品は、原典『Fate/stay night』という圧倒的な物語のパロディ作品であるし、先行する魔法少女作品のパロディでもある、と、二重の意味でパロディ作品なのですね。

 なので、中盤の山場でイリヤ(今作のイリヤは言ってしまえばしょせんはパロディ)が、模造の投影者たるアーチャー(というかエミヤ)をインクルードして戦う展開には燃えましたよ。パロディ者なりに、やってやんよ! 的熱さ。

 で、一方で描かれていたのは、パロディイリヤと、このパロディ作品『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』にしか登場しない美遊という少女との、友情構築劇なのですね。挿入歌から特殊エンディングへの第9話はすごい良かったんですが、一方で、二人の少女の友情構築劇、というのは、さくらと知世(『カードキャプターさくら』)にしろ、なのはとフェイト(『魔法少女リリカルなのは』)にしろ、もはや魔法少女作品の中核要素でもある。

 なのだけど、その「友情」という使い古されたかもしれない題材を、パロディ作品なりの原典の救済、という風に使ってきたのに、感じ入るものがある作品でした。

 最後に「パラレル・インクルード」なるもので、なんでイリヤと美遊がセイバーさんの聖剣を沢山投影できたのか、投影するのか、っていう部分の解釈なんですが、たぶん原典『Fate/stay night』の救済なんですよ。円卓の騎士の中に心許せる存在が作れず、孤独に自己犠牲による救済を貫いたアルトリア。それと共鳴した士郎と、最後には別れるセイバールート。

 桜ルートは逆に、世界を敵に回しても俺は桜のための正義の味方になる、と士郎が言う。自己犠牲で世界を救うんじゃなくて、世界よりもあなたを愛する、ということを言うという。『Fate/Zero』でアイリスフィールが切嗣にかけて貰えなかった言葉を、士郎が桜に言うっていうルートなんだけど、その裏で、桜が助かった分、イリヤが犠牲になるルートでもあるんです(桜ルート真エンディングの方ね)。お母さんが、私が切嗣に言って貰えなかったことを、士郎は桜に言ってくれた、だったら……という流れではあるのだけど、そこにあったのは、やっぱりセイバールートにあった、誰か(セイバーさんやイリヤ)の自己犠牲の上に成り立つ世界という物語だったと思うのです。

 そんな、原典『Fate/stay night』の自己犠牲的だった人たち、セイバーさんやイリヤに、もし「友達」がいたら? っていうのをやってのけた作品だと思うのです。この作品のイリヤ本人もパロディイリヤだし、美遊にいたってはパロディ作品にしか登場しないキャラクター。でも、その二人が「友情」を構築した時(それは、原典のセイバーさんとイリヤにはなかった要素)、「パラレル・インクルード」だと、パラレルだと言い切った上で、セイバーさんのエクスカリバーが投影される。複数本あるから、アーチャーの能力も入ってる気がするのだけど、それはつまり、原典でセイバーさんとアーチャーは縁がある存在だからだ、と解釈するとますますグっとくる。

 切嗣もアイリスフィールも生きていて、士郎も日常を楽しんでいるようなパロディ作品だよポイズン、だけど、そこで描かれた「友情の構築」っていう昔気質の物語は、原典『Fate/stay night』の「誰かの自己犠牲でしか成り立たない世界」を塗り替え得るくらいのものなんじゃないのか。ねぇ、セイバーさん? →多段エクスカリバー投影、みたいな感じだった。大変熱かった。

 本気のパロディ作品には魂が宿るを地でやってくれた作品。

 そういう骨太なコンセプトは感じられつつ、イリヤが可愛くて美遊も可愛いと楽しめる作品なので、これぞ娯楽という感じでした。メイド美遊はあざとい、あざといと思いつつ、でもイイ! と思いましたよ。 第二期、そして『プリズマ☆イリヤ ドライ! !』第4巻に付くという第11話(ボーナストラック的なエピソードなのかな?)と楽しみ。面白かった!





→前回:『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』第1話「誕生!魔法少女!」の感想へ
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