週刊少年マガジン連載の、赤松健先生の『UQ HOLDER!』(ユーキューホルダー)、第12話「初任務」の感想です。
 ネタバレ注意です。
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 軌道エレベータや太陽系オリンピックに象徴される進歩や上昇志向の是から物語が始まったように一旦は見えながら、作品題の新時代型(と言ってしまうけど)共同体「UQホルダー」はむしろそういう思想の果てに排除される側に付く互助組織だった、という展開はカッコいい。「徒党」という表現が熱い。

 今話の夏凛の語りはリアルでもけっこう重要で、よく語られている「グローバル化」と「ネット社会」の一つの帰結は、「平均化」です。今まで世界規模から見ると格差を前提に下から上に吸い上げられていた構造だったのが、平均化していってしまう。

 で、平均の方向は(イメージとしての)アフリカの貧困層が日本的中流層に近づくかというと逆で、日本的中流層がアフリカの貧困層方向に下がっていく感じで平均化されていくのです。

 だから、「かつて豊だったこの国ももう無縁ではいられない話よ」なんですね。これから、かろうじて残ってた昭和的中流層が、どんどん下層、もっといって貧困層に日本でも移動していく未来を、見てる人は見てる。ブラック企業の話題とか、正社員でも労働時間が明らかに過酷で賃金も安いとか、そういう話題の本質はこういう世界潮流とリンクしてるのです。徐々に中流が、かつて搾取される側だった下層に移動し始めているのですね。さすがに赤松先生は時代性を捉えて作品に反映させていると感じます。「21世紀 人類は「貧困」を世界に平等に配分した…良いも悪いもなく歴史の必然なの」の夏凛の台詞の背景はそんな感じだと思います。

 そして、本当震災があった2011年以降のヒーロー像の求道と各種共同体再考の流れの帰結として、今話は感銘を受けた。


「けれど我らUQホルダー 人の理外れた人間以外の徒党 我らは常に――人の世からはじき出され蹂躙され忘れ去られる者達の側に付く」(夏凛)


 カッコいいね。これからの激動の厳しい時代、こういう風に生きたいものですね。

 まんまJコミじゃないかというカッコ良さですね(笑)。21世紀的平均化された世界では、例えばコンテンツ業界も一部の圧倒的な勝ち組と大多数の貧困層、コンテンツ的には忘れ去られていくコンテンツたちに別れていくので(よく言われる「二極化」の一側面)、うん、軌道エレベータの最上、太陽系オリンピックで戦える的な勝者的コンテンツはそれは尊いだろう、でも、忘れ去られていく側を互助する、という「徒党」の者達に、日本的ヒーロー観があるんじゃないの、というような話です。この比喩・連想だと、漫画家って人の理外れた人間以外だったのか!? という感じですが、たぶんそんなに間違ってない(え)。下層、貧困層、あるいは価値観的マイノリティー層(人の世からはじき出された者)の精神的救済として、漫画がある。そしてその漫画を描く人たちの互助組織(サービス)としてJコミがある、みたいなね。だから例えば作中で九郎丸は一族から排斥された者でありつつ、どうやら性的マイノリティでもあるっぽいという二重マイノリティなのかな、と。以前例の漫画規制の話題の頃に書いたけれど、実際漫画がマイノリティの人達の精神的な拠り所になってる側面って、きっとある。だから、太陽系オリンピックで競争の上層を勝ち抜いていく人達とは異相を異にする、謎の互助思想で動く徒党集団が必要だ。以前メルマガでJコミは独立機動部隊みたいな方向を志向するというようなことも書かれてましたしね。

 予想を数段超えてきてくれて魅了されております。今話で提示された「UQホルダー」の現時代的通りすがりのヒーローの徒党であり、互助集団だ、というあり方は本当カッコいい……。

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