週刊少年マガジン連載の、赤松健先生の『UQ HOLDER!』(ユーキューホルダー)、第13話「負けられない」の感想です。
 ネタバレ注意です。
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 今話も、進歩とか、競争の末先に進んでいく意志みたいなものの象徴としての軌道エレベータの回りにだーっとスラムが広がってるシーンの絵とか、凄いですね。

 赤松先生があまりに世の最先端の部分を写像しながら物語を作っておられるので、ついついリアルの世相の話とかも絡めた話になってしまっている『UQ HOLDER!』の感想なのですが、今、貧困が問題としてクローズアップされてきてるのは実はアメリカです。

 アメリカこそ、少し前までは進歩とか新自由主義とか、そういうものの象徴の国みたいな感じだったのに、今では貧困層の拡大が社会問題になってる。貧困層は例えばフードスタンプっていう制度で飢えをしのいでたりしてたんですが、最近フードスタンプの資金の減額が決まって、凄い社会問題になってる。本当、「アプリ」みたいな最新の知が集約されている物、事柄に富が集まる一方で、周辺には無数の貧困が広がっていってる世界なのです。で、疲弊したアメリカの人達が、競争全開の頃には忘れ去られかけてた「街の教会」に回帰しはじめてる、なんて話が、たとえばリーマンショックの頃からクローズアップされるようになってきている。そう、「教会」も重要な要素ですね。「ネギま!」の頃は内面の告白(主に恋愛沙汰)とかの場だった教会も、今では本当貧困支援の場という世の中。そういうフェーズに突入しているのです。そして、前話での夏凛の「かつて豊だったこの国ももう無縁ではいられない話よ」の台詞のように、この流れはもう日本にもやってきてるのですね。都内の居酒屋とか、店員さんが本当外国の人になってますよね。「21世紀 人類は「貧困」を世界に平等に配分した…良いも悪いもなく歴史の必然なの」ですよ。かなり大きく流れが変わる展開にならない限り、日本も本当一部のアプリ的軌道エレベータ的富の集約者と、貧困層が別れるような未来が始まっている。これ、まだ実感ない人も多いかもなのですが、そういう流れの中に我々はいます(一つの大きい要因は、前回もあげた「平均化」、「ネット化」、「グローバル化」など)。

 そんな世界さポイズン、という中を、謎の互助的思想を掲げた徒党が駆ける。「UQホルダー」は本当カッコいいですね。前話の夏凛の台詞だけど、あまりにカッコいいので今回も引用。


「けれど我らUQホルダー 人の理外れた人間以外の徒党 我らは常に――人の世からはじき出され蹂躙され忘れ去られる者達の側に付く」(夏凛)


 また、UQホルダーとしての最初のミッションとして描かれてるのが「地上げの阻止」というのも象徴性と時代性がばっちりで、『ネギま!』は、有限のリソースを奪い合うしかなかった現実世界と魔法世界の問題を、宇宙開発(技術革新)という方法で「リソースを追加して」解決する物語だったわけじゃないですか。で、「土地」も分かりやすい「有限のリソース」なんです。それを奪いに来る存在と戦う。良いですね。「ネギま!」から繋がってる感じがしますね。

 また、美空の縁者と思われるシスターの春日美柑なるキャラクターが出てくるとかね。悠久の時間の中で「ネギま!」の3-Aという共同体は壊れていったのだけど、近衛姓の刀太をはじめ、縁者がこうして生きている、というのが「悠久」の可能性を感じさせてくれて良いですね。スラム街、ある意味ネギの理想の負の側面なわけじゃないですか。軌道エレベータに宇宙開発、素晴らしい、進歩だ、ノリノリだ。でも、周囲には貧困街が広がっていった。そこを美空の縁者が守ってるとか、ね。一食の恩義で、木乃香の縁者っぽい刀太がそこに参戦するとかね。グっとくるわー。

 そしてそういう物語面の凄さの他に、ついにこの時が来た! というバトルヒロイン夏凛の無双シーンが。この夏凛のバトルシーンのネーム凄い……。本当凄いとしか言いようがない。やばいわー、本当凄い漫画を目撃してると思うのでした。

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