毎年恒例、その年に触れた作品などで良かったものを、僕の主観でベスト形式で記載しておこうのコーナー。

 前回までの2013年の「漫画部門」の記事はこちら。、そして「小説部門」の記事はこちら。

 今回は「アニメ部門」となります。アニメは今年沢山観たのでベスト10で。

 以下、基本的に内容のネタバレを含みますので、回避の度合いは各自で注意お願いします。
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第10位:『劇場版「空の境界」未来福音』公式サイト

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 ええもう、2007年から劇場で公開され、足を運び、DVD買って、という思い出の『劇場版空の境界』の2013年クオリティ版です。「extra chorus」がことの他良かったです。もう雪降る街の映像のバッグに、あの魂に響いてくるような「劇場版空の境界」のコーラスが流れてくる、これぞ『劇場版空の境界』! という趣で、始終大満足。

 本編のボーナス的な位置付ではあるので、もう少しキャラクターたちの色々を美麗な動く映像で観られただけでも満足。藤乃は巨乳であり、式はカッコよく、鮮花は可愛いという。鮮花は2000年代のMyベストFavoriteヒロインであった……。





第9位:『ラブライブ!』公式サイト

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 第3話ラストの、ファーストライブやるぞ!→誰も観に来てくれなかった。甘くなかった……→一人だけ観に来てくれた。→やってやるよ!(で『START:DASH!!』が流れ出してライブシーンへ……)の流れが凄い好きで、あのシーンだけ十回くらい観ましたよ。

 学校が経営破たん、国も経営破たん真近(え)、芸事で集客して反逆を決めてやるよ、と思っても、現実はそんなに甘くない。素人の芸など誰も観に来ない。お金にならない。ランキングで上へも行けない。

 それでも、始めないことには何も始まらないんだ。逆境? じゃあ敢えて歌ってやる、という熱い作品でした。

 ヒロインたちが熱心に筋力トレーニングしたり、わりと体育会系のアイドルものというのも面白かったです。アルパカに執拗になめられるサービスシーンなども謎。来年は二期決定中。今年出会った愛すべきアニメーションです。







第8位:『風立ちぬ』公式サイト

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 個人的に『かぐや姫の物語』を観てセットでようやっと腑に落ちた感じなんですが、結局「ピラミッドがある世界」、つまりは破滅が待っていても零戦を作り、煙草を吸い、結核の妻と過ごす……という志向性を、作品全体としては否定も肯定もしないまま、『生』のワンシーンとして描きとったような作品だったのかなと(手法としては本当文学)。関東大震災はあったし、戦争はあったし、妻もやがて死ぬし、この先も大きい破滅的な出来事はあるだろう。でもその前提でも作り続けてる主人公の姿はやっぱり「美しい」なと思える作品。

 結局、結論が出ないまま、矛盾の中で生きてるようなあり方そのものを切り取る、というのも現代らしい。夏のオフ会で話したのだけれど、一昔前なら謎の呪文で「ピラミッドがある世界」的な科学文明の象徴をぶっ壊して終わりで良かったのだけど(『ラピュタ』ね)、今ではそれも胡散臭い。『かぐや姫の物語』の比喩で言えば、月の世界の住人ほど悟れもしなければ、今更山の野にも帰れない。矛盾、不浄、苦悩、そういうものの中で、生き続けている。漫画版『風の谷のナウシカ』とも符合する感じで、自ら宮崎駿の原点的な作品と語っておられるのも、今は納得しているのでした。







第7位:『Free!』公式サイト

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 今年出会った、時世も反映しての「共同体の再構築」を扱った作品、エンタメ部門での『黒子のバスケ』との二強。

 幼少時の共同体として機能していたスイミングスクールは経営破たんで取り壊し、国も経営破たん真近(え)、上昇志向を追って海外に渡った凛は海外では勝てず、スイミングスクールの笹部コーチは今ではピザ屋のバイト、天方先生も夢破れた人……何もかも壊れてしまった。

 それでもまだ自暴自棄にもなれず、泳ぎたかったりはするわけで。遥、真琴、渚の幼馴染三人から始まり、徐々にメンバーが集まって少しずつ再構築されていく過程が好きでした。ベストシーンは、もう一度泳ごうと、みんなで学校のプールをまずは修復してるくだり。勝ち抜くことは無理ですとは突きつけられても、何か一言言ってやりたい、ワンアクションしてやりたい。劇中ではそれが「水泳」だけれど、各々の視聴者にとっての何かに当てはめられるだろう作品。今年の夏は、立体機動装置を身に着けて巨人に飛び掛かりたくなったり、無性に泳ぎたくなったりと、逆襲の志向性の萌芽が生まれ始めてる時期だった……。

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第6位:『ガンダムビルドファイターズ』公式サイト

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 ガチの戦争は今の所避けられているけれど、年間自殺者が3万人出ている精神の危機は戦争クラスで大変な我が国。どうやったら生きてる意義みたいなものを実感できるのだろう。日常の輝きとか、ループを超えての一回性の獲得とか、ゼロ年代作品にも色々あってそれもそれぞれ尊いと思うけれど、2013年に『ガンダム』が出した解答はこちら。趣味に没頭しよう。

 戦う意義を見失ったレイジとラルおじさんの第6話の以下のやりとりは、『ガンダムシリーズ』全部の中でも屈指の名シーンの勢い。


「改めて見るとよ、何だか滑稽だな」(レイジ)

「何がだね」(ラルおじさん)

「たかが玩具の遊びに本気になってよ。どいつもこいつも」(レイジ)

「お気にめさないかね」(ラルおじさん)

「気がしれないね」(レイジ)

「別にやめてもかまわんのだよ。ガンプラ作りもガンダムバトルも趣味の領域。『機動戦士ガンダム』の作中のように戦争状態でもなければ、命の駆け引きをする必要もない。所詮は遊び、その通りだ。しかし、いやだからこそ、人はガンプラにもバトルにも夢中になれる。好きだからこそ、本気になれる。」(ラルおじさん)


 闘争で勝ち抜ける強者がヒーローなのではない、心の危機に糧になるような構築物を作り出せる者がヒーローなのです。俺たちが、ビルドファイターズ(構築して闘う者達)だ!

 やたら熱いアニメ。来年も続くのでもの凄く楽しみにしています。







第5位:『とある科学の超電磁砲S』公式サイト:音注意

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 最終回が大好き過ぎて何度も観てるのですが、ロボが登場して主題歌がかかって宇宙へGo!という、これぞエンターテイメントという感じで大好き。冷静に考えると作劇上あそこでロボが登場する必然性は別にないのですが(え)。ロボが登場する伏線も(たぶん)1話前からだし。でも、それでも、他にいくらでも描き方がありそうな所を、ロボが登場して痛快に問題を解決していく。ジャパニーズアニメーションなので、それでイイ(きりっ)。全体的にアニメーション媒体ということで、凄いコンテ、細部まで行き届いたワンカットワンカット、歴代主題歌連打、やはり良い……。

 「御坂美琴のみがヒーローなのではない」というのも非常に今年的でした。最終回で春上さんがやってくる所は不意打ちだったので泣いたよ。御坂美琴が通りすがりのヒーローの上條さんに救われ、美琴が助けたシスターズがまた次の誰かを助け。文脈がアップデートされた上で炸裂する御坂美琴のレールガン2013。プロが集結して娯楽を作るとヤバいことになると実感できた一作でありました。

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第4位『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』公式サイト

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 くしくもufotableによる原典『Fate/stay night』の再アニメ化PVも発表された所ですが、原典を尊重しながらその先を見せるパロディ作品ということで、この『プリズマ☆イリヤ』が素晴らしかったです。

 美遊が疑似セイバーさんなのね。あの今回公開された公式サイトにもある、セイバーさんが一人丘の上で聖剣によりかかってる有名な『Fate/stan night』のカットですよ。『Fate/stan night』は特にセイバールートはそれでも自己犠牲的に理想を追ったあり方は尊かった、という話なんですが、セイバーさんが破滅したのも事実なわけで。

 原典をなぞるように、一人聖剣にもたれかかってる美遊のカットが入るのだけれど、それをイリヤが助けに来る、という最終回は大変感動的だった。「もしセイバーさんに『友達』がいたら」って作品なんですね。そして、その『友達』も原典では自己犠牲的に死んで行くイリヤ。もう、アイリスフィール(彼女も原典『Fate/Zero』では自己犠牲的に死ぬ存在)に諭されて、イリヤが『友達』である美遊の元に走っていく……というシーンは反則でありました。

 そして、友達が来てくれた所で発動する、多弾道エクスカリバー。一人の自己犠牲的英雄では、聖剣一本分しか事を成せない。でも友達がいるなら、その分エクスカリバーも増えるよ! どうして投影できるかって言ったら、それはまたイリヤが士郎の縁者だからな訳で……。

 本気のパロディ作品は時に凄い領域に行く、というのを見せて貰った作品。これは本当良かった。





第3位:『境界の彼方』公式サイト

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 仏教的世界観とか、『涼宮ハルヒの消失』をオマージュ元にして乗り越える作品だとか、最終回のラストシーンの解釈は、とかは全部こちらの記事に書いたので、そちらを参照して頂けたら幸いです。↓


境界の彼方/第12話(最終回)感想(少しラストシーンの解説含む)


 分かりづらいとは思うのだけど、細部まで作り込まれてる奇書的な作品というか。今年ぐいっと魂の奥の方に入ってこられてしまった作品。

 やっぱり11話が好きで、そして博臣がなんかカッコ良かった。

 そこそこ強いけどそこまで強くないし、妹萌えの変態だし、作中時間の大部分は泉の手の上だったみたいな博臣なんですが、やっぱり秋人が栗山さんの元に走っていく時、一歩前に出て、


 「悪いけど、今度は俺たちの番だ」(名瀬博臣)


 って言うのね。このシーンにゼロ年代に萌え想像に耽溺した人間たちの反逆の狼煙を見た、というのは感想に書いた通りなのだけれど。やっぱり、「友情」とか「愛」とか、一笑にふされがちになってしまったものを、最後の一線で博臣はまだ大事だと思ってるんだろうと。やっぱりアッキーに友情を感じていたし、そいつが愛する人を助けに行くっていうんなら、まあ一歩前に出るんだろうと。この時点では能力も弱まってるのでぶっちゃけもうただの変態の男が一人、状態なんですが、それでも一線で守りたいものは、ある。

 「ポニーテール萌え」と言いつつキョンがハルヒを本当に大切に思ってるように、ファッション「妹萌え」キャラみたいなことしながら、本当に美月のことも大切に思ってるんだろうしね。あー、そう補完するとあのシーンはまた良いな。

 書きたいことの中核は前の感想で書いちゃったので、今回は「OP」がカッコ良さの山場の博臣だけど好きだから3位ということで。





第2位:『ドキドキ!プリキュア』公式サイト

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 映画も含めての二位ということで。

 毎年その年のプリキュアのテーマをその先一年の指針にしてるくらいの勢いですが、今年描かれたのは、「困難な現実、及び困難が予想される未来において、『リソース』の追加と調整で対抗しよう」みたいなことかなと思っております。

 プリキュアシリーズは特に『GoGo!』以降、テーマが受け継がれつつ発展しているのですが、去年の『スマイルプリキュア!』では、もうメルヘンに耽溺して守られてるフェーズは終わって、あなた自身が立ち上がってメルヘンを贈ったり体現したりする側に回るんだ、あなたがヒーローになるターンなんだ、という主題が描かれておりました。

 それを受けた上で、今年の『ドキドキ!プリキュア』では、「でも一人のヒーローだけでは全員は助けられない」ということが執拗に描かれます。立ち上がってみたものの、仕事に子育てに介護に忙殺、お金もないよ、何もできないよ、現実甘くないよ、的な。劇中の比喩で言えば、童話『幸福の王子』のように、自身をすり減らして街の人たちに宝石を分け与えているだけでは、いずれ自身がすり減りきって、溶鉱炉行きのバッドエンドになってしまう。

 そこで登場する、だったら「街の人たち」が次の通りすがりのヒーローとして立ち上がればいいという劇的なメッセージ。もう、第32話で「幸せの王子」相田マナから愛を受け取っていた「街の人」たる二階堂くんが立ち上がる所はうち震えましたよ。リソースが足りない? よし、追加しよう。これをできる人がいない? よし、出来る人に任せて調整しよう。世界を駆ける、謎の通りすがりのヒーロー多弾道作戦。これだ!

 相田マナさんが、2011年以降のヒーロー像としてこの上なく自分としてはしっくりくるキャラクターで、そこにも非常に惚れた作品。まだ4話残ってますが、映画や終盤のテーマ回で受け取るものは既に十分受け取ってる感があるので、二位で。

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第1位:『劇場版魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』公式サイト

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 物語の「祝砲」のような一作。

 ゼロ年代の物語、一人の少女が犠牲的にふるまい、世界は均整を取り戻しました。ハッピーエンドだけど、切ないね。何を言ってるの?、あの子がいないんじゃ、意味がない。悪魔前進開始。原動力? です。

 「パズドラ」や「艦これ」など、娯楽はもうフラットで空き時間にできるとか、一人一人がそれぞれの嗜好に合わせて小さい物語を想像するとか、そっちに流れていってしまうのかな、圧倒的な「物語」体験とか、もう流行らないのかな……などと漠然と最近思っていたのですが、そんな世の軽きに向きがちな流れに対して、ブチ殺す勢いの一撃を叩きこんでくれた作品。久々に打ちのめされて放心して映画館から出てきたよ……。「物語」という媒体、「アニメーション」という媒体、「映画」という媒体、やはり凄かった。

 映画館に「ウロブチィ……」と震えていた外人がいた、的な話がまことしやかにネットで流れてきましたが、その気持ちは分かるという作品。

 冷静に考えると、TVシリーズのアンサーとしてよく練られているなという静謐な構築力と、思い出す度に「ほむほむ!」「ほむほむ!」と狂ったように叫びたくなるパッションが同居している、とにかく「凄かったなぁ」という感想の作品。こういう劇的な作品に出会えることがある、というのは希望的なこと。何なんだろうな。ジャパニーズ創作文化の肥沃な土壌が一定の方向に何かを集積させていった結果、時々こういう作品が生まれるのだと思う。土に感謝の心境。



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 と、とりあえずアニメ部門はこんな感じで。

 今年は、なんか本当にアニメ凄かったですね。他のジャンルでも、例えば技術分野なんかでも知の複合化と豊穣化がより活発になった結果なんか凄いことが起こってる感じですが、創作のジャンルで、日本の商業アニメもまた何か凄いことが起こっていた感じ。ほわー、どういうこと、これ? 凄いわー、などなどと思いながらTVの画面とか映画のスクリーンとか観ていましたよ。観たの全部凄かったくらいの勢いだったので、正直10作に絞るのが大変でした。なんかこの勢いというか豊な感じというか、魔的エネルギーというか世の諸々を良い感じにしていくのに繋がっていけばいいななどと思いながら、来年も期待しているのでした。

2013年ランゲージダイアリー的ベスト、「小説部門」
2013年ランゲージダイアリー的ベスト、「漫画部門」
ランゲージダイアリー的「2012年にふれた作品ベスト10」(去年は一まとめの記事でした)
ランゲージダイアリー的2011年ベスト/アニメ編
ランゲージダイアリー的2011年ベスト/小説編