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 アニメ『ご注文はうさぎですか?(公式サイト)』、最終回の感想です。第6話以降はタイムリーの感想は書いておりませんでしたが、ずっと視聴はしていたので、最終回のまとめ感想をば。

 記事中はネタバレ注意です。
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 ネットが普及した世界も10年を超えて、実質的な意義を失い始めている学校共同体とか会社共同体に変わる、新しい共同体の模索や、従来の共同体の新しいカタチでの再生を試みる作品が多い昨今。そういう流れの中で、「喫茶店共同体」を一つの可能性として描いているのが、このアニメ版の『ご注文はうさぎですか?』という作品なのだろうという話をずっと書いておりました。

 「共同体」の一番の機能は、「互助」です。激しい現行の資本主義に基づいた競争世界の中で、資本(お金)を媒介にしないでも助け合える関係性、集団ですね。

 現状、最強の共同体は「家族」です。病気になった、鬱になった、世の荒波の中で傷を負った、そういう時でも、助け合える。ただ、その「家族」ですら、圧倒的な資本主義+新自由主義+競争主義のコンボの前に劣勢になっていて、解体に向かわせられる動力が現状強いです。より強い個人になるために、より大きくお金を稼ぐために、家族を置いて夢や進歩を追う。介護も子育てもしたくないからお金で代替したい(方向としては「家族」の解体)。

 そんな世の中さふぁっきんなので、「家族」共同体の何らの形での再生を模索する方向もそれはそれとして、もう一つ、家族共同体のレイヤーだけでは足りないほど状況が過酷なので、何とか、もう一つの共同体レイヤーを加えられないか。そうして近年模索されてるのが、趣味共同体とかで、今作もその流れの中での「喫茶店共同体」かと思います。

 「互助」が一番試される時は、みんなでノリがイイ時ではなくて、大変な目にあってる時です。そういう意味で、病気になったとか、介護が必要になったとか、大きな災害にあったとか、そういう時に本当に助け合えるのが、実質的な力もある「共同体」です。

 そう思うと、上記の流れから、新型共同体のレイヤーとして、上坂すみれさんの「革命的ブロードウェイ主義者同盟」とか、ラブライブ!プロジェクトの「ラブライバー」だとか、地元仙台の地域復興プロジェクトも兼ねた『Wake Up, Girls!』だとか、ちょっとサブカルチャー方面の方に目を向けるだけでも、近年は一種の共同体レイヤーがプロジェクトに組み込まれている作品が多いです。なのですが、現時点ではまだ、それらの共同体レイヤーが、本当に困ってる時にお互いが助け合える段階にまでなっているかというと、まだ途上だと思うのですね。アイドルイイね!と現場でネットでと盛り上がれる関係だけど、病気になった時、介護や子育てでのっぴきならなくなった時、大災害の時、助けてくれるのか、あげるのか、と言ったら「?」みたいな。

 そして、そんな新型共同体の模索が乱舞してる2014年に「喫茶店共同体」を描いた『ご注文はうさぎですか?』なのですが、最終回でココアが病気になって、本当の意味で「互助」できる「喫茶店共同体」だったのか? というのが試される展開になるのですね。たのしい時はつるんでたけど、苦しい時は何の実効性もないファッション共同体だったんじゃないの? と。

 そんな中で、薬がなくなった。お父さんは(資本世界の文脈の中で)お仕事中。どこにも頼れるあてがない、という所まで追い込まれて、千夜から薬を分けて貰おうと、チノが雪の中歩いて行く所は良かったですよ。「喫茶店共同体」という縁の千夜は助けてくれると、チノは信じた。そして、歩いて行ったら当の千夜も「喫茶店共同体」の縁を頼りにシャロを看病中で、チノにあたり前のように薬を分けてくれる。もう、豪雪の中、いかにAmazonお急ぎ便だろうと、薬は届けてくれないだろうという状況で、「喫茶店共同体」を頼る。ドローンも飛べないでしょ(笑)。ファッションめいていた「喫茶店共同体」がホンモノになる瞬間を描いておりました。本作の共同体のテーマに関しては、第4話の作中キー台詞、


 「学校以外だってこうして会えるんだもの。私達、大人になってもずっと一緒」(千夜)


 学校共同体以外でも、続けられる関係性があるということを言っているこの台詞も千夜だし、MVPは千夜に設定されてそうですね。最終回、千夜が良かった。

 こうして、病気みたいな苦しい時に看病して看病されてというイベントを経て、虚構じみた「喫茶店共同体」が、ホンモノに代わりはじめたかも、という所までを描いて、チノがココアを「お姉ちゃん」と呼ぶラスト。

 ココアのお姉ちゃんネタは表面的な疑似姉妹萌え要素だけじゃなくて、疑似的な共同体(仮の姉妹)が、本当の「家族」のようなホンモノの力を持ち得る共同体の関係性にまで変わり始めるまでを表現するにあたってのギミックでもあったのですね。慕ってはいるけれど、まだ「お姉ちゃん」と呼べるまでのホンモノの関係性はないよ、でも、最終回では、呼ぶよ、的な。

 まだ儚い『喫茶店共同体』かもしれないけれど、本当のお姉ちゃんと妹のように、苦しい時は助け合ったりしたいよ。できるかもね、という所で終劇。

 真面目に、超少子高齢化で介護問題でジ・エンドになるかもしれない2020年までに、上記のような新しい共同体のレイヤーを、ホンモノの力を持ったものに変えていけるかどうかが、これからの世の鍵だと思ってるので、そういう意味で『ご注文はうさぎですか?』は最先端の作品だと思いました。

 『ラブライブ!』の方の感想(こちら)でも書いてますが、現行では成長とか進歩とか自己実現とか一見綺麗に聞こえるお題目の前に共同体は壊れていく方の動力が強いから、『けいおん!(!!)』辺りから始まって、共同体を続行したり新しいカタチに再生していこうとする試みの方がロックでオルタナティブ(現行の世への代替案)的、というのは、最近僕が好きな作品の傾向なのでした。





→前回:共同体再構築とリンクする日常アニメ〜ご注文はうさぎですか?/第5話「ココアと悪意なき殺意」の感想へ
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