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 アニメ『ハナヤマタ(公式サイトニコニコチャンネル)』第3話「ガールズ・スタイル」の感想です。

 ネタバレ注意です。
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 最近書いてた『ご注文はうさぎですか?(感想)』とか『ラブライブ!(感想)』方面の「共同体」関係の話だけじゃなくて、「よさこい」を通して『ヤマノススメ』的な「趣味」要素も入ってたりと、本当最前線の作品だなぁとしみじみ。よさこいショップの店長を通して描かれるよさこいの豆知識パートとか、ハマれる趣味を見つけた時にその世界を知っていく楽しさが出ていて良かったですよ。

 また、「共同体」パートも、三人目(と思われる)のヤヤが加入するまでの前段階を丁寧に描いておりました。「食」を使った描き方が上手いです。前半の昼食パートだとハナが一人だけパンで、なるがお弁当を分けてあげるんだけど、後半のパートではお腹が空いて倒れていたハナにヤヤが蕎麦をあげると。食べ物の贈与を通して、関係性が進展していく。

 前話までが、ハナとなるが仲良くなったのでヤヤがハブられ感。今話後半が、ハナとヤヤが仲良くなってる中、映画の約束忘れられちゃってなるがハブられ感。などなどと、そこはゼロサムゲーム的なの、とも一瞬思ったのだけど、どうもそういうことじゃなくて、ここから硬い絆の五人の共同体に進展していくというよりは、この「ゆるい」繋がりが、それでいいじゃんということを描いている作品なのかなとも感じています。「よさこい」ショップのパートで、「よさこい」にかけて出ていた重要キーワードが「自由」なんですよね。それと関連して、後半のパートではハナがよさこい以外にも好きなこといっぱいあるという話が入ったりもします。良い意味で、一人の人とか一つのレイヤーに拘りすぎない。

 なるもお家は居合の道場だったり、ヤヤは和食屋だったり、多美お姉さんも家のレイヤーが強そうだったりと、それぞれが既に持ってるレイヤーはあるのだけど、そこを無理に否定しようって感じは今の所感じないという。それぞれのレイヤーには所属したまま、「自由」のレイヤーとして「よさこい」にも二重所属になる感じなんじゃないかなと。だからオープニング映像でも、よさこい部の部室に、ヤヤはギターとか、多美は習字とか、それぞれが「よさこい部」以外のレイヤーでやってることを持ちこんじゃう、というのが描かれているのかな、と。そしてそれで良いと表現してる作風だと思うので、例えば「卒業したら一つの会社に就職し、一心不乱に尽くせ、一旦外れたら再起も転職も認めないし、何、家の事とか趣味の事とか他のこともやりたい? そんな時間的体力的精神的余裕はサービス残業で奪ってやるぞ!」みたいな残念ながら世にあるらしい圧力に対しては、くたばれって言ってる作風ですよね(え)。そんな硬直化した圧力に対して、よさこい踊るし、家の事とかやるし、仲間と一緒にとかいるけど、何か? とよさこいパワーでかわしていく作風というか。

 そういう雰囲気が人間関係の自由さにも関連していって、なるハナレイヤーもハナヤヤレイヤーもあってよい。でも、映画の約束ハブられたくらいではなくならない関係性のようなものがあるよという話であって。だからある意味、なる依存に陥りそうになってたヤヤが、ハナとの関係性にも開かれて、作中是と思われる「自由」に一歩開かれる話が今話って感じでもあるわけで。

 「よさこい」は題材として大変上手いと思いました。『けいおん!!』以来恒例の「学校共同体の終わりと共に輝いた共同体は終わるのか」問題も題材としてはクリアしてるし(学校関係なく街でお祭りの時に集まれる共同体でよい)、趣味共同体だし、「自由」に表現するというのがキーなのも、ハナとヤヤが共有していた「やりたいことをやる」求道とリンクして、本当良い感じ。

 ラストは、せっかく始まりかけたそんな自由で輝いてやりたいことな共同体の「よさこい」部が、屋上の活動の場が失われそうで……という引き。今話時点ではミクロで小さな話だけど、大きくはそういう自由で輝いてやりたいことやってる共同体、そういう「場」は今後も何度も失われる危機があるよ。そういう世だよ、でもだから尊いんだよ、という所に繋がっていく、今話時点での最初の困難という描き方な気がして。

 その手の困難は、これがルールですとか、この場所だけに制約しますとか、これが現実ですとか、今後も襲ってくるわけで。ただ、そういう勢力は「この鳴子だけを使って決まったようにだけ踊って下さい」とでも言ってるような勢力なので、そういう連中に対して、色とりどりで様々なタイプの鳴子があるし、踊りとか衣装とか自分で創るし、と一撃食らわせている作品。本当『ラブライブ!』とかもそうでしたが、可愛い女の子押しのアニメで、さらっと「自由」への反逆を描くというのは、何故か高位の特殊能力者が創作界隈とかに集まってる日本らしくて好き。ぬらりと「Kawai(可愛い)」で世界をハックした例の手管を感じます。もう、「自由」のために闘ってるのは『ラブライブ!』に『ハナヤマタ』に『仮面ライダー鎧武』という勢いです。

 そして、後半の充実ハナヤヤパートは、地元仙台が舞台のアイドル(&アニメ)プロジェクト『Wake Up, Girls!(公式サイト)』で世に出たWUG!メンバーの田中美海さんと奥野香耶さんです。もっと実波と夏夜っぽくなるかと思えば、良い意味でハナとヤヤの掛け合いになっており、というかわずか半年で実力がすさまじく上がっており……。成長期の若者怖い!

 『Wake Up, Girls!』自体が、メンバーは普段は地方でそれぞれに活動してるんだけど(例:宮城県は石巻のサンクスで非常食のアルファ米のお渡し会をするあいちゃん)、WUG!として集まる時は唯一無二の『Wake Up, Girls!』だ! みたいな上述のレイヤーに多重に所属しながら自由を求道していこうぜを体現してるようなグループなので、この『ハナヤマタ』はそんな文脈も感じつつ観ております。今の世、圧倒的に苦しいですが、凄いこと考えてる人たちもそれをリアライズ(現実化)してる人たちも確かに存在するので、あまりふてくされずにがんばっていかないとなと思ったのでした。

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→前回:『ハナヤマタ』第2話「ジェラシー・ローズ」の感想へ
→次回:『ハナヤマタ』第4話「プリンセス・プリンセス」の感想へ
→コラム:「Vivid性を取り戻すために2014年型作品全弾装填」へ
『Wake Up, Girls!』の感想へ
『けいおん!(!!)』の感想へ