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 アニメ『ハナヤマタ(公式サイトニコニコチャンネル)』第7話「ガール・アイデンティティー」の感想です。

 ネタバレ注意です。
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 近年の「共同体」に関する知見の大事な部分、「共同体に多重所属していれば、一つの共同体がダメになっても、他の共同体にアイデンティティが帰属できる」を、素で描いてくれた印象。

 会社共同体だけが人生の全てだと、会社が倒産したりリストラになったりしたらそこで詰みだから、趣味共同体とか地域共同体とか、多重の共同体レイヤーに所属しておこうというような、例の話ですね。今話だと「ニードクールクオリティ」共同体が崩壊したヤヤが、「よさこい部」共同体で再生を始めるまでだと。

 もっと、多重所属のまま色々進んでいく作品なのかと思っていたのですが、多重所属の段階は描いた上で、一つが崩壊、じゃあどうするか? まで描いてきたのはシビアだと思いました。会社共同体にしろ学校内グループにしろ、リアルに共同体破綻は経験する人も多い昨今なので、そこは厳しくいくのか。というか、演出的に「ニードクールクオリティ」=擬似『けいおん!!』の「放課後ティータイム」くらいの描き方だったのに、きっちり崩壊させてるのが熱い。これ、バラバラになる予感を描いた『けいおん!』番外編「冬の日!」(感想)の前半パートのまま、唯による救済メール展開がなく本当に崩壊したみたいな展開ですよ。オーディションに落ちた(競争世界で勝ち抜けなかった)、受験がある、彼氏ができた、そうして共同体は崩壊しました。よくある話なのです。

 こうして共同体は壊れ、「ニードクールクオリティのドラマー」というアイデンティティを失ったヤヤ(しばらくリボンが外れてるのは、アイデンティティロストの記号に思える)がポツンとしてるのは、物悲しいです。中学生時期の作品だからこういう描き方になってるけど、会社が倒産して公園で一人ベンチに座ってる元サラリーマンと基本的に心情は同じです。

 だから、だけどまだ「側にいたい」「一緒にいたい」と言ってくれる人がいた……で救済されるくだりは良かった。よかった、まだ無縁社会孤立死エンドまではいかなかった。なるが不格好でも「一緒にいる」「側にいる」、多美の時は「隣にいる」でしたか、そう言って、「かつてはなるの方が憧れてた人」を救済していく物語構造は、多美の時と同じ。多美の時は多美が踏切の「こちら側」を見てるシーンで「実は多美の方がなる的、よさこい的なものを憧憬している」を表現していたように、今話では「扉を少しだけ開けて屋上をのぞくヤヤ」で、「実はヤヤの方がなる的、よさこい的なものを憧憬している」を表現していた感じ。この作劇だと、救われたなるが救い返すパート、ハナ編もあるのかな。

 そして、残る真智が今話でも相変わらず受験参考書片手で、どちらかというとまだ「一人で」「競争で」「オーディションで勝ち抜く的、武道館を目指す的」文脈にいる模様。この人はどう合流するのか。このままなるちゃん無双でいくのだろうか。

 共同体破綻で死にそうになってるヤヤのパートは、作品序盤のなるとハナの会話の一人で頑張れるほど強くないという話が伏線になっていたりと、良い意味での弱さゆえの連帯を今の所肯定的に扱ってる感じです。バンドからよさこいにクラスチェンジしたヤヤちゃんが、リボンも復活、本当に元気になってる所で次回へ。これからは、落ち込んでる人にはトランキライザーとよさこいを処方していこう。

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→前回:『ハナヤマタ』第6話「トライ・トライ・トライ」の感想へ
→次回:『ハナヤマタ』第8話「ミッション・イベント」の感想へ
→コラム:「Vivid性を取り戻すために2014年型作品全弾装填」へ
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