ネタバレ注意です。
作中で印象的に語られていた二つの種類の「強さ」、初出は第8話(感想)だったと思いますが、度々この「強さ」にまつわる戒斗と舞の問答のシーンが作品全体としても重要な場面として描かれていたと思います。
より強者になって相手を淘汰できるような力を手にすることが強さだ、と語った戒斗に対して、そういう強者に淘汰されるような立場になっても、折り合いをつけ、形を変えながらでも「舞い」続ける類の強さがあるはずだ、と語った舞の「強さ」。
最終戦の戒斗と紘汰の対立点は、まさに戒斗が前者の強さのもとに一旦現行世界を滅ぼしてから新しい世界を作ろうというのに対して、紘汰が後者の舞側の強さの考え方の元、現行世界でも、耐えたり折り合いをつけたりしながら、何とか「舞う」類の「本当の強さ」、そういうものはあり得るはずだ、という対立だったと思います。
で、紘汰が勝利したものの、紘汰と舞は旅立っていってしまったので、本当にこの現行世界で「本当の強さ」があり得るのか? という部分は、今回の最終回の、「残された者たち」の生き方に託されていた、そこまでが前回だったと思います。
で、前回の感想でも書きましたが、やっぱり城乃内と光実の二人に焦点があたってこの「本当の強さ」に関して最終回でも描かれていたと思って、城乃内と光実は、「罪を犯して」、この世界的にも復興とかで大変な世界で、自身の贖罪も兼ねながら、なんとかかんとか生きていかないといけない立場の二人なのですね。
作中で顕著だった、強い存在が弱い存在を淘汰し栄えていく、優れた者が弱い者を排除して栄えていく世界観からしたら、排除される側の、劇中の言葉で言えば「何者にもなれなかった」側の人間。そんな二人でも、何とかこの淘汰圧を受けた厳しい現行世界で折り合いをつけ、這ってでも生きていけたなら、それは上記の舞と紘汰側の「強さ」のはず。
そこで、城乃内は贖罪意識を抱えながら、弱肉強食の世界のルールでは排除された側の人間、初瀬ちゃんの存在を継ぐように、仮面ライダー黒影に変身するというのが描かれます。
一方で光実は、残った龍玄のベルトを使って変身(何者にもなれなかった人間の戦う力だけど、それを使う。何故なら、紘汰が昔言っていたように、それでも戦う力を持ってるのに弱きを守ろうと戦わないのは違うから)。そして、敵が憑依している人間の少女を「犠牲にしない」という選択をします。弱肉強食のルール、物語中盤まで貴虎兄さんが捕らわれていた一人を生かして六人を殺す世界観や、光実が中盤でやろうとしていた「箱舟」とか犠牲を選別して多くを生かす思想からしたら、この少女を殺すべきなんですが、それをしないことで、光実の変化を描いていたと思います。
総じて、城之内と光実の、罪を、間違いを犯した人間だし、強者が栄えていく世界の中では何者にもなれなかった人間だけど、最後に戒斗と戦った時に紘汰が言っていた「強くて優しいやつもいた」の台詞からするなら、単純な力で弱き存在を淘汰する類の強さじゃなく、一種の「優しさ」を含有した、苦しくても耐え、折り合いをつけながら自分なりに戦っていく強さに向かって二人が歩み始めてる描写だと思いました。
そして、ラストシーンは再生した鎮守の森の御神木の前にて、次の世代の紘汰と戒斗を連想する少年二人がダンスの練習をする(=舞う)という光景を、戒斗と舞が眺めていて、改めて二人の「強さ」にまつわる問答に回帰して、そしてその問いに対して最後のピースをハメるように、
「やはり、お前は強いな」(駆紋戒斗)
の言葉が戒斗から舞に語られます。物語中盤でも戒斗は舞の強さを認め始めていたのが描かれていましたし、最終戦のラストで紘汰の強さも認めて退場していたのですが、上記の流れで城乃内や光実を通して、改めて力に淘汰されるような立場になっても、そういう状況ゆえに間違いを犯したとしても、何とか折り合いをつけて生きていく、ということが、この現行世界にもあり得るというのを描いてから、最後の着点としての台詞という感じ。
少しゼロ年代的なルートで分岐するADV風味の要素もあった本作としては、例えば光実のように、今後も現行世界でも人類レベルで、間違えたりすることはあるかもしれない。だけど、その度にやり直したりしながら、何とか生きていこう。そういう類の「強さ」を信じたい。一旦は巨大資本のユグドラシルという強者に淘汰された御神木がまた再生してるという「場」の描写や、ヘルヘイムの侵略を受けた苦しい世界でも、また次の世代の少年二人が「舞って」いる描写で、そんな「本当の強さ」の可能性を最後の一ピースとして描き、作品を閉じていたと思います。
作品内で描かれていた「強さ」にまつわるメッセージとしても、ノリノリで栄えて富を集積させながら(そしてその行為は作中で風刺されていたように、実際には誰かからの収奪であることが多いのだけど)幸せだと言ってるような人たちよりも、苦しく厳しい現実の中で、何とかかんとか生きているという人達の方が多かろうという(リアルの方での)世相かと思いますので、「強さ」の形としては、ただカッコいいというだけじゃなく共感もできるものでした。
歴代「平成仮面ライダー」シリーズの中でも、久々にハマり、大変に「好き」な作品。制作陣の皆様ありがとうございました!
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