アニメ『甘城ブリリアントパーク(公式サイト)』第1話「お客が来ない!」の感想です。仙台にて地方遅れ視聴中。

 ネタバレ注意です。
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 リアルでも高度成長期に調子にのって建てまくったテーマパークが、その後の不況、というか失われた二十年で陥落という世相。

 個人的にラブホの方が立派で元気のくだりに笑った。性産業系は不況の影響低いからな……。一方で、テーマパークのエンターテイメントなんていう社会の「余剰」、「娯楽」の部分は、社会が厳しくなると真っ先に削られていくと。

 テーマパーク再建ものなのですが、失われているのはそういった経済状況起因の「余剰」だけじゃなくて、人と人との連帯みたいなものもなのですね。一昔前の、一億総中流で、「みんな」が休日にテーマパークに遊びに行くみたいな時代は崩壊。今残っているのはお年寄りだけ&客層が偏ってる(ミリタリーマニアだけ)なんて描写が印象に残りました。閑散とした劇場も、今はそれぞれがスマホの画面でそれぞれがそれぞれの脳内で推してるアイドルに没頭していて、通りすがった小劇場で目に留まった観劇を媒介に「共有体験」を持つなんてこと、なくなってきてるよね、という描写に思えます。総じて、現在の人々は「分断」の中で生きているという問題意識が土台にある作品だと感じます。お年寄りはお年寄りで集まり、マニアはマニア同士だけで集まり、それぞれはそれぞれのクラスタの中に閉じこもってる。「公共」のようなもの、「普遍」のようなもの、「共有体験」のようなもの、それが見つけづらい。

 ずっと京都アニメーション作品を追ってる身からすると、これはThe・京都アニメーション作品だとテンションだだ上がりだったのですが、つまりは『CLANNAD』の宮沢有紀寧のキー台詞で言えば、


 「それは…人の心が変わってしまったからではないでしょうか」(宮沢有紀寧)


 の問題意識をこの作品も継いでるってことだと思うのですね。支配人さんのラティファとか、これどう考えても『CLANNAD』の有紀寧ポジションであり幻想世界の女の子ポジションじゃん! この現在の人の心が荒んで分断され荒廃した世界(社会)では、『CLANNAD』なら光の玉を集めなきゃいけなかったし、『甘城ブリリアントパーク』ならテーマパークを再建しなきゃいけない。一昔前にはあったような気がする大切なもの、「魔法」を取り戻すために。可児江に宿った魔法が「心」を読む系なのもちゃんと作品の意味合い的にリンクしそう。

 そして、そういう一昔前にあった連帯とか、それを誘発する児童時間的ワクワク、「輝き」とか、そういうものを再建しようという「場」の再構築の物語が、かつては天才的子役タレント児玉誠也として輝いていた(であろう)のに、今ではぼっち(これも繋がりから分断された孤独者だ)になってた主人公可児江西也の「実存(個人)」の再構築の物語と、リンクして描かれていく作劇っぽい、と。

 オープニング映像の「『輝き』を取り戻した甘城ブリリアントパーク」の絵は問答無用で胸に来ますね。そういう色んな人たちが場を共有する魔法のような空間が、そういえば昔あった気がする、的な。

 色んな京都アニメーション作品の感想記事で書いてる通り、京都アニメーションの作品って全部に連動してるテーマみたいなものがあって、それは「日常の輝きを取り戻せたなら」ってことだと思います。先進国なはずなのに、人々の心は閉塞して自殺者も毎年三万人超えみたいな世界。その閉塞、鬱屈に、輝きを再建できたならみたいな作品ばかりで、それを物語と映像表現の両方でずっと追ってると思われる会社。

 その「輝き」っていうやつが、『涼宮ハルヒの憂鬱』なら、モノクロの世界を生きてきたキョンがハルヒに出会った瞬間に世界に色が付くあの瞬間であり、その演出をオマージュしてると思われる『CLANNAD』の朋也が渚に出会った瞬間の彩の世界であり、『けいおん!』なら第一期の合宿回で澪が花火をバックにギターする唯に見た「輝き」であったり、終わらせたくないライブ(に比喩される仲間と一緒の日常の輝き)だったり、『氷果』だったら薔薇色(輝き)の千反田さんと灰色の奉太郎の物語であったり、『Free!』だったら輝いていた子供の頃のスイミングスクールの四人の共同体とそれを大人になる過程でどう取り戻すかの物語であったり、『中二病でも恋がしたい!』なら輝いた中二世界の終焉と継続の物語であったり……とずっと続いてきて、今回の『甘城ブリリアントパーク』では、「輝いた」場としてのテーマパーク(とそこを行きかう人々)の再生の物語であると。ようは、第1話時点の廃れたテーマパークは、灰色に見えていた頃のキョンの視界みたいなものだと思うのですね。たぶんこれは、そこからハルヒに出会って、非日常的日常(=輝き)を再建するまで、『ハレ晴レユカイ』の歌詞にキーワードを重ねてみるなら"「 魔法」以上のユカイ"のような「場」、「時間」を目指して、世界が色彩を取り戻していけたなら。そういうのを志向している物語。

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→次回:『甘城ブリリアントパーク』第2話「時間がない!」の感想へ
『甘城ブリリアントパーク』の感想目次へ

【関連リンク:これまでの当ブログの京都アニメーション作品感想】

『涼宮ハルヒの憂鬱』最終回の感想はこちら
『けいおん!!』最終回の感想はこちら
『氷果』最終回の感想はこちら
『Free!』(第一期)最終回の感想はこちら

『中二病でも恋がしたい!』(第一期)最終回の感想はこちら
『境界の彼方』最終回の感想はこちら