ネタバレ注意です。
「万策尽きた」という、日常生活ではあんまり使いたくないフレーズを実際に使わざるを得ない状況が描かれる第3話。
「もう何でもいいですからお願いします! 8カットあげたあの頃の木佐さんはどこいったんですか!?」(宮森あおい)
もう取り繕ってる余裕もなくなってるこの台詞の時のあおいさんの表情が良い。
他、あまりの絶望に唐突にひとり言をつぶやきながら洗剤できゅうすを洗いだすという表現であおいさんの切羽詰まったっぷりを表現してるのも凄い。社会人の仕事上あるある的な、本当にもうダメだ、詰んだという状況です。学生時代の輝いたアニメーション同好会? 何? 現実社会、怖い。もう、きゅうすを洗うしかない。
ただ、ミムジーとロロに代弁させてきゅうすを洗っているのはあおいがこの時点では「一人で抱え込んでる」描写でもあるわけで。
席が隣の矢野先輩から始まるここからの逆襲が凄い。
「アニメは一人で作ってるんじゃないんだよ。アニメ制作はチームワークなんだ」(矢野エリカ)
これは、いわゆる「仲間パワー」ということで、夢と希望溢れる日本のアニメーションとしましては要所要所で描かれる定番要素なんですが、ファンタジー世界で強敵に追い詰められてるとかよりも、現実の仕事で詰みかけてもう個人の力ではどうしようもない、という今回の状況は、一般社会人視聴者の現実の経験などを鑑みるに、より迫真性があります。
矢野先輩からしてすでに凄い感じなのですが、ここから興津さんとか超級スペックの先輩たちの助力で逆転していくのが熱い。絵麻(新人原画)視点からの小笠原総作画監督とかもですが、社会人あるあるネタ、何か、魑魅魍魎級の凄い人材って、本当にいるよね。伊達に、体操界における中国というか、アニメーションの世界の地球最高峰の日本で長年アニメの仕事で食ってるわけじゃない。先人が積み重ねた圧倒的なリソースを継いだ上で、努力も才能も人生も投入してるという世界がある。
これ、時代遅れの隠居感を現時点では漂わせてる杉江茂原画とかも、絶対絶命のピンチで助力してくれる展開がありそう。サーバートラブルという現時代的なトラブルの中で、黙々とアナログ原画描いてる杉江さんのカットがワンカット入るのとか、この作品凄い。
ラストは、そうして数多の人々の汗が流れて完成した第4話、白箱の、リテイク版あるぴんの感情演技のシーンでエンディングへ。「存在を作り出す」というのが、かくも大変で劇的なことかというのを切り取っている。第2話、第3話と連続でボロ泣きでありました。
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