ネタバレ注意です。
またしても吉田玲子さん(『けいおん!』『ハナヤマタ』などのシリーズ構成の方)脚本回。これは、バラバラになった仲間の再合流が意識されるエピソードの時は、盤石で吉田さん担当なのやもしれない。
今話も、そういう『けいおん!』とか『ハナヤマタ』みたいな、学生時代の「輝いた」仲間は再合流できるのか? っていう作品これまでもあったよね。そういうの、共同体が壊れがちな最近では時代性もあるよね、という劇外の話も意識される層が一つ。
そして、劇中の、あおい、絵麻、しずか、美沙、みどりの高校時代のアニメーション同好会の仲間が、厳しい大人世界の中で、何らかの形で再合流できるのか? っていうのは、その流れのど真ん中のストーリーだよね、という層が二つ目。
そしてそして、劇中作『えくそだすっ』のラストが、「トレイシー」の三人が、「また三人でステージで歌いたい」を叶えるストーリーに変更されたのも、上の流れから繋がる三層目と、何層も重なって、厳しい現実の中でも仲間と再合流して夢の輝きの続き、何らかの形で決めたいねっていうのが描かれてる良い一話。ついに監督に降臨した『えくそだすっ』ラスト、逃走中に出会った人たちも最後助けに来てくれるっていうのはイイな。厳しい現実だ……と思ってた頃に出会った縁(例えば今話劇中なら美沙のパートにおける立石社長とか?)が、後々助けになってくれること、あるのかもしれない。
また、監督の最終話Bパートのコンテが決まらない流れが、この先の未来を思い描けない美沙に重なって描かれていたエピソードでもありました。美沙の会社の立石社長の、
「何をやるにせよ。この先の自分を具体的に思い描けないと、始まらないだろ」(立石考一)
は、年長者で社長なんかやってる人なりのアドバイスという感じでイイですね。
過去の共有体験のイメージはあるのですよ。五人組における『神仏混淆七福陣』の映像がそれで、未来に自信が持てないしずか、美沙、みどりというメンバーで、過去の共有した大切な映像である『神仏混淆七福陣』が応援に来てくれて、三人はそれを幻視する、というのはとてもイイ。これは、過去の『イデポン』という作品が現在に応援をくれるとか、そういう流れでも描いてきた話。アニメーションにそういう力があるのはとても素晴らしい。
一方で、監督がシナリオの舞茸しめじさんの力も借りながら、ついに『えくそだすっ』最終回Bパートのイメージ(未来のイメージ)が出来上がった時に、いよいよ未来が動き出すのも、上記の立石社長の台詞の通りなわけで。そういう意味で、五人組が、今回特に焦点が当たってるのは美沙だけれど、未来のアニメーション制作のイメージが共有された時に、また物語は動き出すのかな。そして、それはおそらく、五人組だけじゃない、様々な人々が関わる、分断の中を繋いでいくような仕事になると(アニメ作品は五人だけじゃ作れないので)。それこそが、輝いた学生時代共同体の、現実の中の大人時代版なんだと。
しずかのガヤのパートと、ちょっと無機的に見える美沙の仕事環境のパートが、まだ現在のしずかや美沙では「個」は主張し難いというのを描いてる反面、アニメーション制作はこういう名前も出ないような仕事にも支えられてるという側面も描いてる気がして。そういう意味で、五人組が『えくそだすっ』の主役の三人にも重なるし、また大勢の、名もなき応援者たちがいるってことも描いていると、いよいよ『えくそだすっ』最終回の制作物語が本格化するであろう、第1クール終盤、面白くなってきたのでした。
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