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 アニメ『SHIROBAKO(公式サイトニコニコチャンネル)』第20話「がんばりマスタング!」の感想です。仙台にて地方遅れ視聴中。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 劇中作『第三飛行少女隊』内の「飛べなくなったアリア」が、


・みんなそれぞれにアニメを作る理由を抱いている中、自分にはそういうものがない、まだ分からない、芯がない宮森あおい

・かつては飛べたんだけど、今は飛べなくなっている、円さんに「お前本当に何もないよな」と言われてしまい、それが図星だった平岡さん


 の二人に重なるように描かれてるという一話。

 その二人を、ラストのアリアの自分には何もなくとも、これから見つかるかも分からなくとも、何かある人達を援護することはできるという台詞で救ってる。

 と、ここまででももの凄いのですが、今話にはもう一層奥があって、その「何もないアリア」がもう一度飛び立つきっかけとなるキャシーとアリアの会話のシーンの原形を、みどりが書いたという点。今回はおそらくはラストに向けての五人組(あおい、絵麻、しずか、美沙、みどり)まとめ回の、みどり回。

 中盤、みどりが電車内の人々の気持ちを想像して物語を創造する……というシーンがありました。

 つまり、みどりは自分自身は「自分にはやっぱり物語が必要なんだな」と言い切れる芯がある側の人間でありながら、あおいと平岡という二人の「芯がない」「今は失って飛べなくなってる」という劇中のアリアに重なる、自分とは違う二人の気持ちを想像力で補って、それを救済する物語を書いた、ということなのです。全て舞茸さんにリライトされたとしても。

 前半のパートでは、自分だったら絶対に(飛行機から)降りないから、一度降りて飛べなくなったという人間の気持ちは分からないと言っておきながら、平岡とのイベントを通して、そして昔から宮森あおいという人間を見てきた人間として、今エピソードの最後には自分とは違う類の人間の気持ちを想像力で補って、物語で救済するという領域に、みどりは少しだけ足を踏み込めた。その仕事が、芯がない人間であるあおいの魂に響いた、そして平岡さんの反応までは描写されてなかったけれど、何かを平岡さんにももたらしえるという。キャシーの子牛の話はそれこそ舞茸さんが言う所の「メタファー(暗喩)」で、はぐれた人間、今はまだ立てない人間に、ハグの類、紐帯が必要だというような話。そういうものが、自分とは違う、芯のない人間をもう一度飛び立たせ得るかもしれないと、想像力で物語化する。そういうシーンの原形が書ける段階の領域に、みどりが片足だけ入ったのです。

 小説・漫画・脚本、あらゆる「物語」を作る類の人間にとって、表面的に盛り上がるシチェーションが書ける段階、自分という人間の感覚で良い物語が書ける段階を超えて、この自分とは違う他人の内面まで共感と想像力で補って、それを物語に昇華できる、というのは何ステージも上の段階なのです。自分史観だけでなく(それこそ舞茸さんがリテイク出した、自分の体験や自分の視界をそのまま書くといった段階ではなく)、他者の内面を自分のことのように取り込み、かつ主観と客観を行ったり来たりできるというステージまでの、人間的成長も要するので。元から(『ドストエフスキー』の辺りから)みどりは潜在的に才能がある感じに描かれていたと思うのですが、一つ上の領域に、他者(あおいや平岡さん)のために入るという瞬間が描かれていて満足。アニメーションという表現でその一瞬を切り取ってエンターテイメントとしても成立させているこの作品に戦慄。

 この「分断の繋ぎ人」あおいと、あおいのifの平岡さんに、物語を通してあおいが繋いでまわった縁が還ってくるという構成の終盤。あとは、第14話(感想)のそれこそメタファー(暗喩)になってる、オーディションでしずかが語った台詞、


 ありがとね、アリア。私を助けてくれて。あなたが私のために流してくれた見えない涙と血は絶対に忘れない。


 これが効いてきそうです。

 「アリア=宮森あおい」です。この伏線を回収しつつ、五人組まとめ回、しずか編がおそらく作品全体でもクライマックス。

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→前日譚コミックス、大変良かったです。ネタバレ感想はこちら。

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→前回:『SHIROBAKO』第19話「釣れますか?」の感想へ
→次回:『SHIROBAKO』第21話「クオリティを人質にすんな」の感想へ
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