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 アニメ『SHIROBAKO(公式サイトニコニコチャンネル)』第24話(最終回)「遠すぎた納品」の感想です。仙台にて地方遅れ視聴中。

 ネタバレ注意です。
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 第二クールの始まり、第13話(感想)の冒頭では、本田さん、落合さん、矢野さんなどがいなくなってしまって、ガランとした武蔵野アニメーションの部屋が描かれていた本作。それが、この最終回の冒頭のシーンでは『第三飛行少女隊』の制作陣メンバーでいっぱいになってるという演出。高校時代が終わり一旦バラバラになっても、また再合流する……というメイン五人のストーリーラインにも重なるような、アニメーション制作を媒介に「再び集まる」という描写で、大変に粋です。

 興津さんが(おそらく)地元の鉄道にアニメキャラクターがプリントされてることに表情を変化させるシーンと、ラストの写真のシーンが好き。

 興津さんのシーンの方は、あおいが悩み続けた「どうしてアニメを作るのか?」という問いに対して、世界の方がアンサーを返してくれているかのよう。それは世間一般にはオタク的と蔑まれるようなジャンルなのかもしれなくても、一方でローカルのご当地の様々とアニメのコラボレーションなんかは当たり前にもなってきた世界で、先人から続いてきた「アニメを作る」という営みは、何かしら世界に対して意義をもたらしているかのよう。どこかで、「みんな東京に集まってきてしまう」という力学も背後に描いていた作品でした。第7話〜第8話(感想)の、田舎で辛い労働の日々に摩耗したあおいのお姉さんが東京に遊びに来る話しかり。そのエピソードのラストが、「がんばっぺ」という方言で締められているのしかり。それゆえに、最終回で、みんなの力が東京に集積して出来上がったアニメーションの最終回のテープを、四人が地方に届けに行く。その流れを(カーチェイスなど画面が動く方向での)山場に持って来てくれたのは、とことん優しい作品だなと思いましたよ。ここでも、「分断の縫合」を描く。「がんばっぺ」の方言分布などから判断するに、五人組の地元は関東地方北から東北と思われます。あおい、未来においては東北に「東北アニメーション」みたいなの作ってくれ。

 ラストの写真のシーンは、僕は感想でずっと、第4話〜第6話(感想)には脚本で『けいおん!(!!)』のシリーズ構成の吉田玲子さんが参加したりもしているし、『けいおん!(!!)』的な女子五人組の輝いた女子高生時代が終わったとしても、厳しい大人世界で五人は輝きを持続したまま再合流できるのか? というようなストーリーがある、ちょっとした『けいおん!(!!)』アフターな作品なんだろうという視点で書いてきておりました。

 なので、「写真」は『けいおん!(!!)』でも「輝いた今」を切り取る象徴アイテムとして使われていたので、最終回が五人組も含めた沢山の人達の「写真」で締めくくられるというのもイイなと。『けいおん!(!!)』的な学生時代の輝きを、大人の世界でも決めることができた。それは大人世界なりに、部室の中の五人だけじゃなくて、様々な人たちとリンクした集合写真になっていると。五人組がかたまってなくて、それぞれにバラけて、でも色々な人たちとも和になった集合写真という印象でした。

 最終回の焦点は、最終回らしく、あおい個人の内面のドラマの到着点と、「バラバラになる力学が働く世界でも再合流する」というテーマ部分の二つに焦点があたっていた感じです。

 前者は、あおい自身に特定のクリエイター的本懐がなくとも(それこそ『第三飛行少女隊』のアリア本人には積極的に飛ぶ理由がなかったように)、アニメーションを愛する人たちが好きだから、それを援護するような形でこの世界で生きていく、というような感じ。様々なエピソードで積み重ねて描いていましたが、一番はやっぱり前回第23話(感想)のラストシーンですかね。しずかがこの世界を肯定してくれたので、しずかや平岡さんのように和の中から分断されるようなポジションに行ってしまう人を援護するように、この世界で生きていける、生きていきたいと。最終回のしずかのアフレコの台詞も、プレイヤーポジションじゃなくてもそれを支えるポジションの人へのはなむけになっていて、しずか(のような立場の人)とあおいの相補関係のまとめになっていた感じ。

 後者は、ラストシーンはやっぱり五人組の「ドーナツの誓い」、大人世界でも再びのシーンで、使われたのはやっぱり『神仏混淆七福陣』。

 以前こういう記事を書きましたが↓


「人それぞれ」になってしまった脳内映像を「みんな」で共有できる『白箱』という形に封じ込めること〜『SHIROBAKO』第5話まで


 そのままだとみんなバラバラになっていってしまう力学が働く世界で、アニメ―ションという同じ一つの映像を共有した「共有体験」が、人々を繋ぎ続けるリンクになるっていうのを描いていた作品だとも思うのですね。大人世界でバラバラになったけれど、心の中で『神仏混淆七福陣』を共有し続けていたことが、五人組の再合流を可能にした。今思うと、第4話(感想)で一人孤独な時に『神仏混淆七福陣』を観るしずかのシーンはイイですね。あの時の共有体験はホンモノで、だから第23話ラストの、しずかにも泣いてくれるあおいがいた、のシーンに繋がっていきます。

 第6話(感想)のイデポン回もそうですが、分断されていく人々が、昔共有したアニメーション映像という共有体験を媒介にもう一度リンクしていく話は何度も重ねて描かれていた作品でした。

 そして、再合流した「今」作ったアニメーション映像作品が、今度は「未来」の標になる。監督の「これからもアリア(=あおい)は飛び続けるわけで(略)いつか再びどこかの空で会えるとイイな」のスピーチも、未来での再びの再々合流を示唆してる感じで素敵です。そんな五人の過去の共有体験の『神仏混淆七福陣』が、今なりにヴァージョンアップして(CGとかになってる)、でも五人で共有したまま未来へ向かって出航していって終劇。再合流できためでたしめでたしにとどまらず、またバラバラになっても未来においてまた再合流できる確かなものが五人組にはある、という力強さにまで踏み込んだ感じの良いラストシーンでした。

 素晴らしい作品でした。制作陣に万感の感謝を。

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→前日譚コミックス、大変良かったです。ネタバレ感想はこちら。

SHIROBAKO ~上山高校アニメーション同好会~ (1) (電撃コミックスNEXT)
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→前回:『SHIROBAKO』第23話「続・ちゃぶだい返し」の感想へ
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